老人・高齢者が食べやすい食事とは?調理方法や注意点までご紹介
作成日:2018年11月3日
自宅で親の介護をしている方であれば、「最近食事を残すようになった」「栄養不足が心配」など、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、老人が食べやすい食事について解説します。老人の食欲減退の理由・おすすめの食事などを詳しく説明します。
食事が美味しいかどうかで、毎日の元気がでるかが大きく変わります。ちょっとした工夫で、毎日の食事をもっと楽しめるように取り組んでいきましょう。
目次
老人にとって食事の意味とは
老人にとって「食事」を取る意味は、楽しみや生きがいという面でも重要ですが、生活機能の自立のためにもとても重要な位置をしめています。
人間は朝昼夜と三食をきちんと食べることで、体内の消化酵素・ホルモンの分泌が促され、日常の食欲や規則的な便通が保持されます。規則的な生体リズムを形成することで、昼夜の規則的な睡眠と覚醒のリズムも形成されるのです。
老人がきちんと食事を取ることは、介護不要の生活を送ることにつながります。
老人になるとなぜ食欲がなくなるのか?
老人になると、食欲が低下する人が多いです。その原因としては、慢性胃炎、胃潰瘍、風邪・インフルエンザなどの感染症や認知症などの病気によるものもありますが、加齢によることも多いです。人は加齢に伴い、味覚・臭覚・噛む力・飲み込む力が低下し、食事そのものを美味しいと感じられず、食事に対する興味を失いがちです。
運動も不足している人が多く、唾液・消化酵素の分泌量が減り消化が進みにくくなっていることも食欲がなくなる原因の一つです。食欲の低下が続くと低栄養状態となり、認知症の原因ともなりますし、風邪などの感染症にもかかりやすくなります。
においを感じにくくなる
通常70~80代で臭覚能力が低下し始め、次第に進行していきます。かなりの高齢にならない限り、完全に臭覚が失われることはないが、風味を感じる能力が大幅に低下すると食事への興味がなくなり、食事を楽しめなくなります。
参考:第12回 加齢による、嗅覚と味覚の変化│フード&サイエンスこぼれ話│キリン食生活文化研究所│キリン
味を感じにくくなる
味覚には、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の基本味があります。加齢による「甘味」を感じる能力の衰えは見られず、「塩味」「酸味」「苦味」を感じる能力は嗅覚よりはゆっくりと衰えていきます。
加齢に伴い、舌の味覚機能を部分的に失う傾向が高く、医療的支援を必要とする味覚障害が発症する可能性もあります。
また、服用中の薬の影響などで唾液分泌量が得ると、味を感じにくくなります。
参考:第12回 加齢による、嗅覚と味覚の変化│フード&サイエンスこぼれ話│キリン食生活文化研究所│キリン
参考:M&Bスクール[履修科目] – 唾液学科_唾液の役割、唾液に関する病気
噛む力が弱くなる
老人は加齢により、虫歯や歯周病になりやすく、歯を失うことで咀嚼力が低下し、入れ歯使用者の咀嚼力は使用していない人に比べて著しく低下します。
人は、食物を口に入れた後、あご・舌・頬・歯を使って唾液と食物を混ぜ合わせ、まとまりのある柔らかい食塊を作ります。これにより、食物を飲み込みやすくしているので、噛む力が弱まると、食物を飲み込む準備が上手くできなくなります。
飲み込めなくなる
老人は加齢により、唾液の分泌量が減少し、口の中の潤滑さが低下し、嚥下運動がスムーズにできなくなります。これに加え、口腔感覚が鈍くなり、反射機能が低下しているため、のどの奥への食べ物の送りこみが上手くできなくなってしまいます。これを嚥下障害といいます。咀嚼しないで飲み込むと、窒息死のおそれもあります。
食事中、通常は気管につながる部分は閉じられていますが、嚥下障害の人は上手く飲み込めず、食べ物が気管に入ってしまうことがあります。これは誤嚥性肺炎の原因ともなります。
日本では、肺炎は、がん・心疾患についで3番目に多い死因となっています。肺炎で亡くなる方のほとんどは老人で、その7~8割は誤嚥性肺炎によるものだと言われています。
参考:嚥下障害とは?原因と対策を正しく理解して、毎日の食事を楽しく! | 知っておきたい介護の知識
老人の食べやすい食事とは
老人が加齢により食欲がなくなる原因の一つとして、噛む力と飲み込む力の衰えについて説明しました。食欲低下による生活リズムの狂い、低栄養状態をさけるためには、老人が食べやすい食事を用意してあげる必要があります。
老人の食べやすい食事の形態について以下のとおり紹介しましょう。
おかゆ状のもの
お粥、パン粥、煮込みうどんなどは、そのまま飲み込めるか、または、歯がなくても舌・歯ぐきで簡単につぶせる食事形態です。噛む力の衰えた老人にはとても食べやすいです。
プリン状のもの
プリン・ムース・卵豆腐・茶碗蒸しなど、病人食としてもおなじみの食事形態です。口当たりが良く滑らかで、ほとんど噛む必要がなく、とても食べやすいです。卵や牛乳を使用するため、貴重なたんぱく源として栄養価も高いです。
ゼリー状のもの
ゼリー・水ようかん・煮こごりなど、柔らかく口どけが良い食事形態です。ゼラチン質でできているので、体温で溶け、口の中に残らず安全です。
ミンチ状のもの
貴重なたんぱく源であるお肉は、老人にはもっとも噛み切りにくいものです。ハンバーグ・ミートボール・つみれなどはミンチ状に調理されており、柔らかく噛む力が弱くても食べやすいので、老人のための食事としてよく使われます。
その他
マッシュ状(ポテト・かぼちゃなど)、ポタージュ状(スープ・シチューなど)、ネクター状(果物をミキサーにかけたもの)、とろろ、ヨーグルト・アイスクリームなどが食べやすい食事としてあげられます。
老人の食べにくい食事とは
老人にとっての食べやすい食事について説明しました。では食べにくい食事とはどのようなものなのでしょうか。食べにくい食事の形態について説明した後で、どうすれば食べやすくなるかを紹介します。
ぱさぱさしているもの
パン・ゆで卵の黄身・凍り豆腐のように、スポンジ状のぱさぱさした食べ物は、口の中の水分を吸収します。唾液の分泌の衰えた老人にとって、さらに唾液を吸い取ってしまうので、非常に食べにくいものだといえます。
食べやすくする調理のポイント
ゆで卵の黄身はマヨネーズとあえてあげましょう。もしくはゆで卵ではなく、玉子豆腐・茶碗蒸しなどを作ることもおすすめです。パンはフレンチトーストを作るのが面倒な場合は、牛乳やミルクティーなどにつけて食べるとよいでしょう。
凍り豆腐は熱めのたっぷりのお湯で戻し、食べやすい大きさに切り(5mm幅くらいの千切りなど)、卵とじなど、口当たりのよいものと一緒に煮込みましょう。水溶き片栗粉を使いとろみをつけるとなお食べやすくなります。口当たりがよくなるように工夫しあげることをおすすめします。
調理例:食パン・ふわふわフレンチトースト
【材料(1人分)】
・4枚切りの食パン1枚
・卵1個
・砂糖大さじ1
・牛乳100cc
・バニラエッセンス少々
・はちみつ小さじ2
【作り方】
1)食パンの耳を切り落とし、4×4(16個)に切り分ける。
2)卵・砂糖・牛乳・バニラエッセンスを混ぜ合わせる。
3)皿に食パンを並べ、2)の卵液をかけ、しっかりと浸み込んだら、ラップをして電子レンジで1分半(600W)温める。
4)器に盛りつけて、はちみつをかける。
参考:ふわふわフレンチトースト(ソフト食) by NPOはみんぐ南河内 【クックパッド】
ぺらぺらした薄いもの
海苔・わかめ・もなか・ウェハースなどは、薄くぺらぺらとしていて、上あごにはりつくなど、とても食べにくい食材といえます。
食べやすくする調理のポイント
焼き海苔・もなかやウェハースなど、口の中にはりつきやすいものを高齢者にあげるのは避けましょう。海苔がどうしても食べたいという場合には、つくだ煮状のものを食べてもらうことをおすすめします。わかめは細かく刻んでから使いましょう。
調理例:わかめ・わかめとじゃこの白和え
【材料(4人分)】
・わかめ60g
・ちりめんじゃこ20g
・木綿豆腐200g
・白ごま10g
・砂糖大さじ1
【作り方】
1)木綿豆腐はペーパータオルなどでつつみ、水気をきっておく。
2)わかめは戻し、細かく切る。
3)白ごまをすり鉢に入れてすりつぶし、木綿豆腐・砂糖を入れ混ぜ合わせる。
4)ちりめんじゃことわかめを入れ混ぜ合わせる。
参考:わかめとじゃこの白和え・料理レシピ | ささやく食材【食和日記】
ぼろぼろとしてまとまりがないもの
焼き魚・チャーハン・そぼろ・イモ類など、口の中でぼろぼろとして、まとまりにくい食べ物は、かたまりになりにくく、飲み込みにくいものです。
食べやすくする調理のポイント
ぼろぼろとしてまとまりのない食べ物は、あんかけにするなどとろみをつけてあげるとよいでしょう。
調理例:焼き魚:生鮭のホイル焼き
【材料(1人分)】
・生鮭1/2切
・塩少々(0.5g)
・こしょう少々
・レモン汁小さじ1/2
・じゃがいも40g
・生しいたけ1枚
・わかめ1g
・万能ねぎ1本
・酒小さじ?
・バター5g
【作り方】
1)生鮭に塩・こしょうし、レモン汁をふりかける。
2)じゃがいもは3mm厚の薄切り、わかめは水で戻し、生しいたけと共に食べやすい大きさに切る。万能ねぎは5cmの長さにきりそろえる。
3)アルミホイルの上に、じゃがいもを並べ、その上に生鮭をのせる。
4)生鮭の上に、生しいたけ・万能ねぎ・わかめをのせ、酒をふり、バターをのせる。
5)アルミホイルで具を包み、ホイルの両側を重ねてきっちりと折りたたむ。
6)5)をフライパンにのせ(又は170度のオーブンで20~25分で)、25分間蒸し焼きにする。
参考:【高齢者】魚のホイル焼き by 武蔵野市 【クックパッド】
さらさらとした液状のもの
お茶などの飲料・味噌汁・おすましなど、さらさらした液状のものは、口の中でまとまりにくく、のどに流れ込んでしまいやすいので、むせることもあるでしょう。
食べやすくする調理のポイント
液体状のものは、そのままで飲むのは避け、とろみをつけたり、ゼリー状にしてあげましょう。
調理例:とろみ付き豆腐の味噌汁
【材料(2人分)】
・だし汁500ml
・長ねぎ1本
・木綿豆腐1/2丁
・水溶き片栗粉(片栗粉大さじ1、水大さじ2)
・味噌大さじ2
【作り方】
1)長ねぎと木綿豆腐をを食べやすい大きさに切る。
2)だし汁に木綿豆腐を加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。
3)味噌をだし汁でとき、長ねぎを加える。
参考:豆腐の味噌汁 ~高齢者向けレシピ | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」
老人が食事をする際の注意点
毎日の食事は、楽しみであり、生きがいである必要があること、また、生活リズムを形成するためにも大事な習慣であることをお伝えしてきました。毎日の食事が楽しくなるためには、誤嚥事故などが起きないように、食べ物を口に入れるところから、咀嚼しきちんと飲み込むまでをしっかりと見守り指導してあげることが大切です。
老人が食事をする際にきをつけたい注意点を3つ紹介します。
楽しく食べられる工夫をしよう
食事は楽しく食べられることで、また食べたいという思いが生じ、朝昼夜と3食を食べることに繋がります。一人きりの食事は味気ないものです。家族や知人と一緒に食べると、一人きりの時よりも美味しさが増すことでしょう。できる範囲でかまいませんので、家族が集まる機会をもうけ、一緒に食事をしてあげましょう。
正しい姿勢で食べさせよう
誤嚥を避けるためにも正しい姿勢での食事を心がけましょう。自力で椅子に座れる人であれば、できる限り椅子に座りテーブルで食べるようにしましょう。リクライニング・ベッドを利用して座れる人は、無理のない範囲で90度に近い角度まで上体を起こしてあげてから食事を行いましょう。
寝たきりになってしまわれた方でも、30~45度くらいまではベッドの角度をあげ、できる限り身体を起こした状態で食べることをおススメします。
お口の中を清潔にしよう
食事の直前にうがいをしてお口の中を清潔にしておきましょう。お口の中は雑菌がいっぱいです。お口の中が汚れている状態で誤嚥をすると雑菌が気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。
食後には、きちんと歯磨きをしましょう。しっかりとした口腔ケアをしておくことで、唾液の分泌がうながされる、雑菌が減るなどの効果が期待できます。誤嚥性肺炎はもちろんのこと、感染症や認知症の予防にもつながりますので、いつもお口の中は清潔に保つよう指導しましょう。
まとめ
老人にとって食事がどれほど大切かということや、老人にとって食べやすい食事とはどんなものかなどについて説明してまいりました。老人が食べやすい食事の作り方についても紹介していますので、一度作ってみてはいかがでしょうか。
家族と同じ食事ができるうちはよいですが、一人分だけ介護食を作るのはなかなか大変なことだと思います。最近は、介護食を毎日宅配してくれるサービスも増えてきました。
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