介護食の作り方と注意点|食べる能力に沿ったレシピ
作成日:2022年12月13日
最近、親の様子を見ていて、「ご飯を残すようになった」「噛んでいるうちに口からこぼしてしまう」「うまく飲み込めなくなってきた」などと感じる方はいらっしゃいませんか?
高齢になると、食べる能力が弱くなってくるため、普通の食事では食べにくいことがあります。
個人個人の食べる能力(噛む力・飲み込む力)のレベルごとに作る介護食というものがあり、本記事ではその特徴や作り方を解説します。
この記事を参考に、高齢者の食べる能力にあった介護食の作り方を知り、いつまでも自分の力で食べられる食事を用意してあげられるといいですね。
目次
介護食とはどんな食事?
介護食とは、私たちが普段とる食事を、高齢者が食べやすいように工夫した食事のことです。
加齢により、噛む力や飲み込む力は徐々に衰えてきます。噛む力や飲み込む力が衰えてくると、食べる量が減る、食事中によくむせる、飲み込みづらいなどの症状が現れてきます。
そのため、個人個人の噛む力・飲み込む力のレベルにあわせて食事をつくります。
介護食の第一の目的は、高齢者が最後まで自分で食事を楽しめることです。
そのため、家族と同じ食事ができる方には、できるだけ同じものを用意します。
大きいものが食べづらい方には小さく切る、いつもよりもやわらかく調理するなど、高齢者の噛み切る力や飲み込む力にあわせて工夫することが大切です。
高齢者の食べる能力には差がある
高齢者の食べる能力には、個人個人で差があります。
その理由は、その方によって老化のスピード・体の機能の衰え方が異なるからです。
周りの方は、高齢者は食べる機能が低下するものだという事実を理解した上で、機能が低下すると表れる症状に、いち早く気づいてあげることが重要です。
食べる機能が低下する原因
高齢者の食べる機能が低下する原因としては、歯の欠損・病気の後遺症・加齢による筋力の低下などが挙げられます。
食べる機能が低下すると表れる症状
高齢者の食べる機能が低下すると表れる症状について、日常生活と食事中・食後に分けて説明します。
高齢者が以下のような症状を持っているかどうか、気にかけてあげてください。
日常生活に表れる症状
・ろれつが回りにくい
・舌に白いコケ状のもの(舌苔・ぜったい)がある
・歯が噛みあわない
・口を閉じることが難しい
・痩せてきた
食事中や食後に表れる症状
・口の中に食べ物を長くため込んでいる
・声がガラガラする
・よだれを垂らす
・口から食べ物をこぼす
・むせやすい
介護食を能力に合わせて作ろう
高齢者の食べる能力には個人差があるので、能力にあわせて介護食を作りましょう。
以下でそれぞれのレベルに適した介護食について、例を挙げながら解説します。
参考:日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフード
普通に料理を噛める方
固いものや大きいものはやや食べづらいものの、普通に料理を噛み、飲み込める方に適した介護食について説明します。
噛む力・飲み込む力がともに十分ある場合は、食べやすい大きさにカットしてあげるだけでよく、特別な調理の必要はありません。
なぜなら、運動能力と同じで、元気なうちはできるだけ常食(普通食)を食べる方が噛む力や飲み込む力のトレーニングになり、健康につながるからです。
逆に、この段階で介護食を食べ続けると、食べる能力は落ちてしまいます。
一例として「一口サイズのぶり大根」を紹介します。
材料(2人分)
・ぶりの切り身 3切れ(200g)
・大根 1/8本(150g)
・しょうが 15g
・水 180ml
・濃口醤油 大さじ2
・料理酒 大さじ2
作り方
①大根の皮をむき2cm幅にカットし、4等分にする。ぶりは一口大にカットする。しょうがは千切りにする。
②大根に少し水を入れてラップをかけ、電子レンジで5,6分加熱する。
③沸騰させたお湯に少量の料理酒を入れ、その中にぶりを入れて湯通しする。
④大根・ぶりと調味料・水を鍋に入れ、中火で加熱する。
⑤沸騰したら落としぶたをして10分煮る。お皿に盛りつけ千切りのしょうがをのせたら完成。
参考:一口サイズのブリ大根 | 介護にプラス ライブ プラス ドゥ
歯ぐきで料理をつぶせる方
歯ぐきで料理をつぶせるが、固いものや大きいものが食べづらく、飲み込みづらい方を対象とした介護食について説明します。
このような方には、目安として、歯ぐきでつぶせる程度までやわらかく調理してあげましょう。圧力鍋を使用したり、煮込み時間を調整したりするとよいです。
一例として「鮭のカレー焼き(ソフト食)」を紹介します。
材料(2人分)
◎骨と皮なしの鮭 80g
◎乾燥マッシュポテト 6g
◎お湯 30ml
◎水切り豆腐 30g
◎上新粉 2g
◎ラード 8g
◎塩 0.6g
●カレー粉 少々
●マヨネーズ 大さじ2
●小ねぎ 小さじ2
・レモン 適量
・パセリ 適量
作り方
①マッシュポテトとお湯を混ぜる。
②フードプロセッサーに◎を入れ、なめらかになるまで混ぜる。
③②をクッキングシートの上に、魚の形になるように並べ、蒸し器で10分蒸す。
④●をボウルで混ぜて3)に塗り、200℃に予熱したオーブンで5分焼く。
⑤お皿に盛り、レモンとパセリをお好みでのせて完成。
参考:鮭のカレー焼き〈ソフト食〉|阿知須共立病院 栄養科
舌を使って料理をつぶせる方
舌を使って料理をつぶせるなど、細かくてやわらかい食べ物であれば食べられる方を対象とした介護食について説明します。
このような方には、材料は小さくカットし、とろみを付け、舌だけでつぶせるくらいのやわらかさまで調理してあげましょう。
かたさの目安は全がゆやスクランブルエッグくらいのかたさです。
一例として「ほうれん草のおひたし(とろみ食)」を紹介します。
材料(2人分)
・ほうれん草 100g
◎しょうゆ 小さじ1
◎顆粒だし 小さじ1/4(1g)
◎水 大さじ2
◎トロミアップエース(とろみ剤であれば可) 小さじ1弱
作り方
①ほうれん草をよく洗い、たっぷりの熱湯に少量の塩を加え、いつもより1,2分長くゆでる。
②冷水にとって水気を切り、2cm幅に切る。
③◎を混ぜあわせてタレにする。
④ほうれん草を盛りつけ、3)のタレをかけて完成。
参考:日清オイリオの介護食・健康食|日清オイリオ
水やお茶が飲みづらい方
水やお茶が飲みづらい方の食事は、ミキサーなどを利用し、ペースト状にした上でとろみ剤などでゆるやかに固めてあげるとよいでしょう。
水やお茶などの飲み物にもとろみ剤で適度にとろみをつけると飲み込みやすくなります。
一例として「かぼちゃの煮物(ミキサー食)」を紹介します。
材料(2人分)
・かぼちゃ 200g
◎しょうゆ 小さじ1/2
◎砂糖 大さじ1
◎水 200ml
・トロミアップエース(とろみ剤であれば可) 小さじ1弱
作り方
①かぼちゃの種と皮を取り、一口大に切る。
②鍋に切ったかぼちゃを並べて、◎を入れる。
③②を火にかけ、煮立ったら弱火にする。落としぶたをして柔らかくなるまで煮る。
④ミキサーに③のかぼちゃと煮汁大さじ4、トロミアップエースを入れ、なめらかになるまで混ぜる。お皿に盛りつけて完成。
参考:日清オイリオの介護食・健康食|日清オイリオ
介護食を作るときの注意点
介護食を作るときに気をつけるべき注意点が2点ほどあります。
以下のポイントに気を配りながら、介護食を作りましょう。
食べにくい食材には適切な対処法を
高齢者が食べにくい食材は、適切な対処をした上で食卓に出す必要があります。
以下で、高齢者の食べにくい食材とその対処法を解説します。
肉、魚、生野菜など繊維が残るもの
肉や魚などは、繊維が残るため噛み切りにくいです。
包丁で切り込みを入れたり、水分や熱を加えたりすると食べやすくなります。
また、食べやすい薄切り肉やひき肉などを活用するのもおすすめです。
魚介類は、えびやいか→青背魚やまぐろ→白身魚の順に食べやすくなるので、食べる力に合わせて選んでみてください。つみれにしたり、小さめに切ると食べやすくなります。
野菜は食物繊維が多いごぼうやれんこん、にんじんなどが食べにくくなります。かたい野菜はいつもよりもやわらかくゆでて食べやすく調理しましょう。
炒め物にする場合も一度ゆでてから炒めると食べやすくなります。キャベツや白菜などは繊維を断ち切るようにすると噛みやすくなりますよ。
なすや大根などには隠し包丁を入れるのがおすすめです。
みそ汁、お茶、ジュースなどさらさらとした液体
さらさらとした液体であるお茶などは、誤嚥(ごえん)を起こしやすいです。
とろみ剤でとろみをつけると、まとまりがよくなります。
ただし、とろみをつけすぎると口や喉に張り付いてしまい、喉に詰まったりむせる原因になるので気をつけましょう。
どの程度のとろみ加減が適切かはその方の食べる力によっても変わります。
自己判断はせず医師や管理栄養士、薬剤師などに相談するのがおすすめです。
また、とろみ剤によっても使用方法が異なりますので使用方法をよく確認してから使いましょう。
パン、ビスケット、クッキーなど水分が少ないもの
噛む力や飲み込む力が衰えてくると、パサパサした食材やサクサクした食材が飲み込みにくくなります。
口の中でパサついてしまうパンなどは、牛乳にひたすなど水分と一緒に摂取するとよいでしょう。
また、フレンチトーストにするなど水分を加えた調理法にするのもおすすめです。
酸味が強いもの
酸味の強い酢の物や柑橘類などはむせやすく、高齢になると食べにくくなる料理のひとつです。
酢の物は酢の分量を少なめにしたり、加熱する、だし汁を加えると酸味がやわらぎ食べやすくなります。
栄養バランスを考える
介護食は食べやすさも大事ですが、栄養バランスも考えなくてはなりません。
高齢者の食事で特に不足しがちな栄養素とそれらを補う食材を以下の表にまとめたので、介護食を作る際に参考にしてください。
タンパク質 | 肉や魚、卵など |
ビタミン | しじみ、緑黄色野菜、レバーなど |
ミネラル | 乳製品、レバー、牛肉、魚など |
食物繊維 | ごぼう、海藻類など |
噛む力が弱くなってくると噛みにくい肉を控える方も多くなりますが、肉や魚に含まれているたんぱく質と大豆製品などに含まれているたんぱく質では、たんぱく質に含まれているアミノ酸のバランスが異なります。肉や魚はアミノ酸のバランスが優れているので、食べやすいひき肉や白身魚なども活用しましょう。
たんぱく質は、肉、魚、卵、乳製品などからバランスよく摂取することがポイントです。
ビタミンはエネルギー源にはなりませんが、糖質や脂質、たんぱく質の代謝を助ける働きや分解した成分を組み合わせて体に必要な物質を作り出す働きをしている体に欠かせない栄養素です。
ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性の栄養素は調理によって水に流れ出てしまうので、生食にしたり栄養が溶け出た煮汁も一緒に食べるようにすると効率的に摂取できます。
また、ビタミンAやビタミンEなどの脂溶性の栄養素は油と一緒に食べることで体内への吸収率が高まります。
高齢者は、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルが不足気味と言われています。カルシウムは骨粗鬆症予防にも欠かせない栄養素です。
カルシウムが豊富な小魚や乳製品などを積極的に取り入れましょう。
食物繊維が豊富なごぼうやれんこんなどの野菜は噛む力や飲み込む力が弱くなると食べにくくなってしまう食材ですが、不足すると便秘の原因にもなります。
消化器官の働きや筋力がだんだんと衰えてくる高齢者は便秘になりやすい傾向があるため、適度に食物繊維を摂取することが大切です。
食物繊維は、いも類やきのこ類、根菜類、豆類に多く含まれています。
食べやすい食材を選んでみたり、小さく切る、いつもよりもやわらかく調理するなど工夫して、摂取量を増やしてみてはいかがでしょうか。
あると便利な調理器具
介護食を作る際に、あると便利な調理器具を5つほど紹介します。
介護食を作ろうとお考えの方はぜひ利用してください。
フードプロセッサー
食材を細かく切り刻んで混ぜる器具です。
野菜のみじん切りや魚のすり身を作るときに便利です。
ソフト食を作るときに役立ちます。
ミキサー
食材を刻む・泡立てる・混ぜるなどの多機能を1台でこなします。
ミキサー食を作るときに役立ちます。
ゴムベラ
介護食はやわらかかったり、少量のためすくいにくかったりするので、ゴムベラがあると便利です。
すり鉢・すりこぎ
少量の食材を潰すときに使います。フードプロセッサーでうまく潰せないときは、すり鉢とすりこぎで潰します。
ソフト食を作るときに役立ちます。
こし器
野菜や果物を蒸したものや液体状のものをこすときにあると便利です。舌触りの良いなめらかな食感を実現します。
ミキサー食を作るときに便利です。
介護食についてのまとめ
介護食とは、普通の食事を高齢者が食べやすいようにアレンジしたものです。
高齢者の食べる能力には個人差があるため、その方にあった介護食を作ることが大切です。
食事をおいしく食べられることは高齢者の方にとっての楽しみでもありますし、健康に長生きするためにも欠かせないものです。
しかし、栄養バランスのとれた食事でも食べてもらえなければ意味がありません。
高齢者は内臓機能が衰えてくることや運動量の減少などで自然と食事量が少なくなってきます。
食欲をアップするためには、料理の彩りや盛り付け、食事をする空間作りなどにも少しこだわってみるのがおすすめです。
一人で食べるよりも家族と楽しく話をしながら食事をする方が食も進みます。
また、無理のない範囲で適度に体を動かすことでお腹が空き、おいしく食事を食べることができますよ。
バランスのいい食事を心がけて健康維持に役立てましょう。
高齢者を介護をしている方は、食べやすい食事を用意する必要があります。
しかし、毎日、朝・昼・晩すべて家族とは違う食事を用意するのは大変です。
そんな時には、作り置きができる料理を多めに作ってみたり、市販品の介護食を活用してみるのもおすすめです。
最近は、高齢者向けのお弁当を宅配してくれるサービスがあります。
まごころ弁当のお弁当は高齢者の方向けに栄養バランスや食べやすさにこだわって作られたお弁当です。
管理栄養士が献立を考えているので栄養バランスもよく、健康状態に合わせて選べるメニューがあります。
前日までに注文すれば自宅に届けてくれるので、予定に合わせて注文が可能ですよ。
お弁当の内容は日替わりなので、続けて注文しても飽きずに続けられます。
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