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高齢者介護の問題とは。具体例と併せてわかりやすく解説。

作成日:2022年8月31日

高齢者介護の問題とは。具体例と併せてわかりやすく解説。

日本は世界的に見ても最も高い水準の高齢化率であり、2010年に高齢化率が23%を超え、「超高齢社会」を迎えています。

そんな中、「介護が必要になったが、施設に入所したくても入れない」「介護者も高齢で身体的・精神的負担が大きい」など、介護問題は日本社会が抱える大きな課題の1つとなっています。

この記事では、高齢者の介護問題についてデータを引用しながらわかりやすく解説します。

介護の高齢社会における問題とは

「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の高齢化率は28.4%に達しており、昭和25年には65歳以上の者1人に対して12.1人の現役世代がいたのに対して、平成27年には65歳以上の者1人に対して現役世代は2.3人となっています。

今後も、高齢化率は上昇する一方で、現役世代の割合は低下し続け、令和47年には 65歳以上の者1人に対して1.3人の現役世代という比率になることが推計されています。

そのため、これからの日本はますます介護需要が高まっていくものの、必要な時に必要なサービスが受けられない、などといった問題が生じてきます。

介護が必要となった時に慌てるのではなく、先手を打つためにも介護問題を把握しておきましょう。

要介護者の増加

高齢社会における介護問題の1つ目は、「要介護者の増加」です。

介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は、平成29年度末で628.2万人となっており、平成20年度末の452.4万人から175.9万人増加しています。

また、65~74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合は、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.3%、要介護の認定を受けた人が2.9%であるのに対して、75歳以上では要支援の認定を受けた人は8.6%、要介護の認定を受けた人は23.3%と、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇しています。

介護者の高齢化

2019年の平均寿命は男性が81.41年、女性が87.45年で、健康寿命との差は男性が8.7年、女性が12.07年となっています。

平均寿命が延びているため、在宅介護では要介護者を介護する家族の年齢も上昇傾向です。

また、60歳以上の介護労働者の推移も年々増加傾向にあり、介護労働者の高齢化も進んでいることが、介護業界の今後の課題となっています。

「令和2年度介護労働実態調査結果」によると、全従業員数(無期雇用職員と有期雇用職員の合計)に占める 65 歳以上の労働者の割合は 12.3%で、職種別では訪問介護員が最も割合が高く、4 人に1人が 65 歳以上となっています。

介護に従事する人の平均年齢も年々上昇しており、49.4歳(48.8歳)で昨年度より、0.6歳上昇しています。

社会保障費の増大

社会保障は、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める最大の支出項目です。

社会保障制度の基本は保険料による支え合いですが、保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借金も充てています。

このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況です。

社会保障費のうち、高齢者関係給付費について見ると、平成 29年度は79兆 7,396億円となっており、前年度の78兆 6,877億円から1兆 519億円増加しています。

一人あたりの国庫負担金は、65~74歳と75歳以上とでは、医療が8万円から32.4万円と約4倍に、介護が1.3万円から12.7万円と約10倍にも増大します。

2022年にはいわゆる「団塊の世代」が75歳を迎え、今後さらに75歳以上の人口が増加していくことで1人当たりの医療費や介護費用が増加し、2040年にはおよそ190兆円にも達すると見込まれています。

介護業界の人手

「令和2年度介護労働実態調査結果」によると、「従業員の不足」を感じている事業所は全体で60.8%と、依然として高まっており、介護職の有効求人倍率は全職業に比べ高い水準にあります。

介護職員が不足している理由では、「採用が困難である」が86.6%と最も多く、更にその理由としては「他産業に比べて、労働条件等が良くない」が53.7%、「同業他社との人材獲得競争が厳しい」が53.1%と高い割合になっています。

また、令和元年 10 月1 日から令和2年9月30日までの1年間において、介護職員の離職率は 14.9%で、平成 17 年度以降最低の離職率となっています。

介護難民の増加

65歳以上の高齢者数は、2025年には3,677万人となり、2042年にはピーク(3,935万人)を迎えると予測されています。

また、75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には、25%を超える見込みとなっています。

「第7期介護保険事業計画」では2025年度に向け、介護サービス量は全国では24.9%増加し、首都圏では33.3%増加すると見込まれています。

それに基づき、都道府県が推計した介護人材の需要を見ると、2025年度末には約253万人が必要となると推測されていますが、現状推移シナリオによる介護人材の供給見込みは215.2万人となっており、37.7万人もの需要のギャップがあります。

「高齢者の増加」と「介護人材の不足」により、介護を受けたくても受けられない「介護難民」が今後増加していくことが問題となっています。

国においては、①介護職員の処遇改善、②多様な人材の確保・育成、③離職防止・定着促進・生産性向上、④介護職の魅力向上、⑤外国人材の受入環境整備など総合的な介護人材確保対策に取り組むことが求められています。

高齢者の貧困

「令和4年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯の所得階層別分布は、150~200万円未満が最も多くなっており、高齢者世帯の所得は、その他の世帯平均と比べて低いことが分かります。

高齢者世帯の所得は、公的年金が家計収入の全てとなっている世帯が半数以上です。

しかし、年金だけでは最低限の生活を送ることがままならず、特に高齢女性の4人に1人が貧困に陥っている状況となっています。

また、生活保護受給者の推移を見ると、平成29 年における被保護人員数の総数は前年から横ばいとなる中で、65歳以上の生活保護受給者は103万人で、前年度の100万人よりも増加しています。

また、65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合は2.93%となり、前年度の2.89%より高くなっています。

高齢者介護で起こる具体的な問題

高齢化の進展に伴う要介護者の増加や、介護業界の人手不足など、介護業界は都心部程需要と供給のバランスが崩れ、介護サービスを受けたくても受けられない介護難民が増加していることが問題となっています。

そんな中、厚生労働省はできる限り住み慣れた地域で必要な医療や介護サービスを受けることができる「在宅介護」を推進しており、施設から在宅へと介護政策は転換している現状です。

厚生労働省の「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」令和3年12月分(10月サービス分)では、在宅で介護または要支援者向けの介護予防サービスを受けた人は約409万人、施設に入所してサービスを受けた人は約96万人となっており、在宅介護と施設入所の割合は約4:1となっています。

年々在宅介護を受ける者の割合は増加傾向ですが、在宅介護においても様々な介護問題があることを押さえておく必要があります。

老老介護

「令和元年度国民生活基礎調査」によると、主な介護者は要介護者等と「同居」が 54.4%で最も多くなっています。

同居の主な介護者と要介護者等の組合せを年齢階級別にみると、「70~79歳」の要介護者等では、「70~79歳」の者が介護している割合が56.0%、「80~89歳」の要介護者等では、「50 ~59歳」の者が介護している割合が31.6%となっています。

年次推移をみると、65 歳以上同士、75 歳以上同士の組合せは、どちらも上昇傾向であり、今後も老老介護の割合は増加していくと考えられます。

「老老介護」の割合が増加した背景には「平均寿命の延長」や「核家族の増加」などがあげられます。

老老介護の対策は、そもそも介護が必要な状態にならないよう認知機能や運動機能を保つトレーニングを継続して行うことや、病気が悪化し介護負担が大きくなってしまう前に受診をすることなどがあげられます。

また、すでに介護が必要となっている場合は、「地域包括支援センター」という機関に相談してみましょう。

地域包括支援センターでは、誰もが介護の専門家に直接相談することができ、利用できる制度や介護サービスについて情報提供をしてもらえたり、関係機関との調整をしてもらったりすることができます。

認認介護

介護が必要となった主な原因を現在の要介護度別にみると、要介護者では「認知症」が 24.3 %で最も多く、介護する人と介護される人が両方とも認知症である「認認介護」が社会問題となっています。

しかし、どれだけの世帯が認認介護になるのか正確なデータは出ていません。

認知症患者の中には要支援・要介護認定を受けていない人も多く、正確な実態を把握するのは難しいと考えられています。

認認介護では、火の不始末や、介護の放棄などが起きやすく、重大な事件事故に繋がる恐れがあります。

認知症患者は2025年には700万人を突破すると推計されており、65歳以上の5人に1人は認知症になると見込まれています。

高齢化の進展に伴い、今後も認認介護の世帯も増加傾向になることから、介護者を孤立させず、適切な介護サービスや行政支援へ繋げていくことが大切となります。

介護する家族の離職

平成28(2016)年の同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間は、 「必要な時に手をかす程度」が44.5%と最も多い一方で、「ほとんど終日」も22.1%となっています。

要介護度別に見ると、要支援1から要介護2までは「必要な時に手をかす程度」が最も多くなっていますが、要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなり、要介護4では45.3%、 要介護5では54.6%が「ほとんど終日」介護を要しています。

このように、介護度が高くなるほど介護時間も増加する傾向にあることから、介護する家族は離職する選択を迫られることも高齢者の介護を取り巻く問題の一つとなっています。

平成28年10月から平成29年9 月までの1年間の調査の結果、家族の介護や看護を理由とした離職者数は99,100人であったということが分かっています。

離職して介護に専念することで、収入源が無くなってしまい、経済的に困窮してしまう恐れや、社会との繋がりが無くなってしまうことで介護者が孤立してしまう恐れもあります。

介護離職を防ぐための対策には、介護休暇制度や介護休暇制度の促進があります。

高齢者への虐待

『「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく、令和2年度の対応状況等に関する調査結果』によると、養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数は、2,097件(前年度2,267件)、虐待判断件数は595件(前年度644件)と公表されています。

養護介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数はどちらも前年度より7.5%程度減少していますが、在宅における養護者(家族、親族、同居人等)による高齢者虐待の相談・通報件数は35,774件(前年度34,057件)、虐待判断件数は17,281件(前年度16,928件)と前年度よりも増加しています。

この要因には、高齢者人口の増加の影響の他に、新型コロナウイルス流行による養護者の在宅時間の増加なども関係する可能性があることが指摘されています。

被虐待者からみた虐待者の続柄は、息子が 39.9%で最も多く、次いで夫(22.4%)、娘(17.8%)の順となっています。

虐待の類型では「身体的虐待」が 68.2%で最も多く、次いで「心理的虐待」が 41.4%、「放棄放任」(ネグレクト)が 18.7%、「経済的虐待」が 14.6%、「性的虐待」が 0.5%という結果でした。

発生要因の上位には虐待者の「性格や人格(に基づく言動)」(56.2%)、被虐待者の「認知症の症状」(51.4%)、虐待者の「介護疲れ・介護ストレス」(48.6%)、「被虐待者との虐待発生までの人間関係」(45.2%)などが挙げられています。

介護は肉体的にも精神的にも負担が大きく、特に介護が長期化して先が見えない状況が続いた状況では、介護疲れによる虐待が多く起こってしまっています。

厚生労働省はこの問題に対し、「都道府県および市町村が速やかに実態を把握できる取り組みを強化すること」「介護に携わる関係者に対する研修等で対応を強化すること」「高齢者権利擁護等推進事業の活用」を虐待防止の三本柱として掲げ、高齢者の虐待予防対策を講じています。

高齢者の一人暮らし

核家族化により、高齢者の単独世帯も増えています。65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向にあります。

昭和55年には男性約19万人、女性約69万人、65歳以上人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、平成27年には男性約192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%となっています。

高齢者の一人暮らしは今後も増加の見込みであり、これにより問題となるのが「孤独死」と「認知症」です。

東京都福祉保健局観察医務院の統計によると、令和元年度の東京都23区内における65歳以上の者の孤独死は6,089件(前年度5,953件)であり、年齢別に見ると70~74歳の男性が特に多くなっています。

また、一人暮らしで認知症を患うと、近隣住民とのトラブルや犯罪、事故などに巻き込まれる可能性もあります。

これらの問題を防ぐためには、高齢者が社会との接点を持つように働きかけていくことが大切です。

成年後見人トラブル

成年後見制度とは、認知症、知的障害その他の精神上の障害があり判断能力が不十分である人が生活上不利益を被らないよう、「成年後見人」が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うことができる制度のことです。

法的な行為を代行することから、成年後見人は基本的に、家庭裁判所での審判により選任される必要があります。

この制度が浸透するにつれ、あるいは認知症高齢者など成年後見人を必要とする人たちが増え、この制度を利用する人も増加しています。

しかし、その一方で成年後見人の役割を悪用してしまうようなトラブルも起こっています。

成年後見人に関するトラブルで最も多いのは、「財産などの不正流用」です。超高齢社会である日本では、今後も成年後見人を必要とする人や成年後見人に選定される人が、増加していくことが見込まれています。

そうした中で、トラブルを未然に防ぐには、後見人となる人への研修や支援体制の強化が必要となります。

高齢者の介護問題のまとめ

少子高齢化が進展する中、要介護者が増え続けるものの、介護従事者の人材不足や核家族化などの影響から支え手となる介護者が減り、介護難民や在宅で老老介護をせざるを得ない状況となることもあります。

介護問題は誰もが直面する可能性がある問題です。

介護問題は地域によっても差があるため、居住している地域はどういった状況なのか、また介護が必要となった時に介護をする人、される人が共にベストな選択ができるよう事前に確認し、対策を練っておきましょう。

<参考>
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/04pdf_index.html
『令和4年版高齢社会白書』,内閣府
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000489026.pdf
『介護分野の現状等について 平成31年3月18日』,厚生労働省
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2021r01_chousa_kekka_gaiyou_0823.pdf
『令和2年度 介護労働実態調査結果について』,公益財団法人 介護労働安定センター
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
『令和元年国民生活基礎調査』,厚生労働省
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/kodokushitoukei/kodokushitoukei-1.html
『東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)』,東京都福祉保健局 東京都監察医務院

この記事の作成者:A.N(看護師)
この記事の提供元:シルバーライフ

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