介護保険料の支払いはいつから?納め方・計算方法も解説
作成日:2022年12月10日
40歳になると、介護保険を納付する義務が生じます。健康保険に加えてさらに支払いが増えるとなると、不安になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、介護保険制度の仕組みや支払い方法、および保険料の計算や年末調整についてなどを紹介します。
介護保険料は一律でなく、さまざまな条件によって異なります。場合によっては支払い義務が免除されるケースもありますので、介護保険料について詳しく知りたい方はぜひ記事をご覧ください。
目次
介護保険制度とは?
介護保険は介護を社会で支えあい、老後の不安を解消することを目的とした制度です。
保険料は必要時に、保険加入者自身が支払った保険料と国や自治体からの公費から支払われます。
これにより介護が必要となったときには、原則として1割程の自己負担でさまざまな介護サービスが受けられます。
介護保険の加入者(被保険者)は、次の2種類があります。
・65歳以上
・40歳から65歳未満の医療保険加入者
65歳以上は「第1号被保険者」と呼ばれます。
一方、40歳から65歳未満は「第2号被保険者」と呼ばれます。
介護保険料の支払いはいつから?
介護保険料はいつから支払い義務が生じるのでしょうか?支払いが開始するタイミングと支払い方法について、以下で説明します。
いつからいつまで支払う?
介護保険の被保険者は40歳以上のすべての人で、介護保険には40歳から強制的に加入することになります。
介護保険料は40歳から健康保険料の一部として毎月支払うことになり、40歳になる誕生日の月から始まります。
より細かい規定では「40歳の誕生日の前日」の月から支払い義務が生じるため、例えば、4月2日が誕生日の方は40歳時点の4月から、4月1日が誕生日の方は39歳時点の3月から支払いが始まります。
65歳からは健康保険とは切り離され、介護保険料という名目での支払いとなります。
介護保険の支払いは義務であり、滞納していると、いざ介護サービスを受けるときに自己負担が増えたり、延滞金が請求されたりすることがあります。
実質の負担額が多くなる可能性があるため、保険料は滞納しないようにしましょう。
支払いが終了するのは本人が亡くなったときなので、生きている間は介護保険料をずっと支払い続けることになります。
介護保険料の納め方
介護保険料の支払い方法は、40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」の場合、加入している医療保険料と一緒に徴収されますが、支払い方法は就業形態により異なります。
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で会社員、公務員の場合
勤務先が加入している健康保険を通して給料から天引きされます。この場合は、介護保険料は事業主と折半となる仕組みになっており、本人負担は半分です。
第2号被保険者(40歳以上65歳未満)で自営業の場合
自営業者で国民健康保険に加入している場合は、世帯分の保険料を世帯主がまとめて納めることになっており、介護保険料もそれに含まれます。
支払いは普通徴収で、専用の納付書で銀行やコンビニエンスストアなどでできますが、口座振替の手続きをすれば、指定口座からの引き落としも可能です。
国民健康保険の支払いを滞納すると、介護保険の滞納にも直結する可能性があるため注意が必要です。
第2号被保険者で配偶者の扶養に入っている場合
夫(妻)の扶養に入っている専業主婦(専業主夫)は、被保険者の介護保険料に被扶養者の介護保険料に相当する分が含まれているので、納付の必要はありません。
第2号被保険者で年金を受給している場合
第2号被保険者で複数の年金を受給している場合は、老齢基礎年金→老齢・通算年金→退職年金→障害年金・遺族年金の順で、天引きされる年金が決まります。
また年間で18万円以上の年金受給がある場合には、原則として特別徴収であり普通徴収への切り替えはできません。
しかし自治体によっては変更できることもあるので、普通徴収を希望する場合には自治体の担当窓口に確認してみましょう。
第1号被保険者(65歳以上)の場合
第1号被保険者(65歳以上)の場合は、年金から直接介護保険料が差し引かれる特別徴収になります。
年間18万円以上の年金受給者は2か月ごとに年金から天引きされます。
年間18万円以下の年金受給者、または年金の受給を繰り下げた場合には普通徴収で、専用の納付書で銀行やコンビニエンスストアなどで支払います。
介護保険料はいくら支払う?
それでは、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の介護保険料の金額はいくらなのでしょうか。介護保険料の金額は、所得や居住地、加入している健康保険の種類などにより異なります。
国民保険加入者の場合
自営業者など、国民健康保険加入の第2号被保険者の場合、前年の所得と世帯の被保険者の人数によって決まりますが、介護保険料は居住している自治体によって計算方法が異なるため金額は一定ではなく、居住地によって変わります。
保険料金額は以下の計算式で計算されます。
介護保険料=所得割+均等割+平等割+資産割
・所得割:前年の世帯所得から基礎控除額を控除した金額に税率を乗じたものです。
・均等割:世帯の中の介護保険加入者の人数に対して計算するもので、所得が0円でもかかる最低限負担する保険料です。
・平等割:1世帯を1つの課税対象として課される均等割りです。
・資産割:固定資産税の金額に税率を乗じたものです。
第2号被保険者の介護保険料の計算は、居住している自治体ごとに決まっており一律ではなく、上記の4項目を組み合わせて市区町村独自の計算基準で計算されています。
平等割や資産割を使わない自治体もあるので、具体的な計算方法については、居住地自治体の担当窓口に確認しましょう。
国民健康保険以外の医療保険に加入者の場合
会社員の多くは、勤務先が決めた公的な健康保険に加入しています。こうした国民健康保険以外の保険加入者の介護保険料について説明します。
介護保険料は給料によって決まる「標準報酬月額」をもとに算出されます。
標準報酬月額とは、毎年4~6月に支払った給与の平均額を報酬月額(通勤代や残業代などを含み、税金を引かれる前の給与額)として、「標準報酬月額表」に当てはめたものです。
介護保険料=(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率
会社員が加入する健康保険では、介護保険料は事業主が半分負担することになっています。よって、本人負担は介護保険料の半分の金額です。
以下に、東京都の介護保険料の金額を段階別に紹介します。(令和4年3月分から)介護保険の保険料率は16.4%で、会社と本人が折半(8.20%ずつ)で負担します。
標準報酬月額 | 健康保険料 | 介護保険料 | 健康保険+介護保険 |
200,000円 | 9,810円 | 1,640円 | 11,450円 |
300,000円 | 14,715円 | 2,460円 | 17,175円 |
410,000円 | 20,110円 | 3,362円 | 23,472円 |
500,000円 | 24,525円 | 4,100円 | 28,625円 |
実際の標準報酬月額の区分はこれよりも細かく分けられているので、あくまでも月々の介護保険料の目安としてご覧ください。
実際の保険料が知りたい場合は、勤務先や勤務先の健康保険組合、全国健康保険協会(=協会けんぽ)、共済組合などに問い合わせてみましょう。
第1号被保険者(65歳以上)の場合は算出方法が異なり、各自治体の介護にかかる年間予算のうち、23%を第1号被保険者の総数で割った額となります。
各自治体は3年ごとに介護サービスに必要な給付額の見込みを立て、予算を組みます。その財源構成は、予算のうち国が25%、都道府県と市区町村が12.5%ずつ、27%が第2号被保険者の保険料、残りの23%が第1号被保険者の保険料です。
第1号被保険者の介護保険料は所得によっていくつかの段階が設けられており、その所得段階によって納付額が決まりますが、所得段階は市区町村によって異なります。
介護保険料は減免できるのか?
やむを得ない理由により介護保険料を払えない場合には、介護保険料の免除や減額が可能なことがあります。
介護保険料が不要の場合
介護保険は日本国内で受けられるサービスのため、条件により介護保険料が不要になるケースがあります。介護保険料が免除される「適用除外」の条件は以下のケースです。
1.海外に居住している場合
40~65歳未満で日本国内に住所を持っていない海外居住者は適用外となります。
40歳以上の被保険者で海外へ移住する場合には、「介護保険適用除外等該当届」を提出すると納付が停止されます。
2.第2号被保険者で介護保険適用除外施設に入居している場合
40~65歳未満で体に重度の障害や難病を抱え、特定の施設に入所している場合は適用除外となります。
3.在留期間が3か月未満の短期滞在の外国人
適切な手続きを踏んで、日本に在住する40歳以上の外国人も短期的な滞在の場合は介護保険料の適用除外です。
以前は1年未満の滞在が条件でしたが、現在は3か月未満に変更となっています。
3か月以上滞在する外国人は、介護保険の被保険者に該当するため、滞在資格の延長を確認できる書類と届け出書類などを提出して介護保険料を支払うことで、日本に居住中は日本の介護サービスを利用することができます。
介護保険料の減免や減額、徴収猶予などの措置が受けられる場合
第2号被保険者で所得が一定より少ない場合は、申請によって介護保険料の減免・減額措置や徴収の猶予措置が受けられる場合があります。
減免・減額、猶予措置の細かい内容や条件は居住の市区町村によって異なります。
たとえば東京都千代田区では、介護保険料の減免・減額、猶予措置について、次のような基準を設けています。
1.減免
1)本人またはその世帯の生計を維持する方が、災害により、住宅や家財などに著しい損害を受けたとき。
2)本人またはその世帯の生計を維持する方が、
・死亡、心身の重大な障害、長期間の入院により、収入が著しく減少したとき。
・事業などの休廃業、損失、失業などにより、収入が著しく減少したとき。
・農作物の不作、不漁、その他これに類する理由により収入が著しく減少したとき。
2.減額
生計困難で保険料の負担が難しいとき。
3.徴収猶予(保険料を納める期限を延長)
1)本人またはその世帯の生計を維持する方が、災害により住宅、家財などに損害を受けたとき
2)本人またはその世帯の生計を維持する方が、
・死亡、心身の重大な障害、長期間入院により、収入が著しく減少したとき。
・事業などの休廃止、損失、失業などにより、収入が著しく減少したとき。
・農作物の不作、不漁、その他これに類する理由により著しく減少したとき。
介護保険料は確定申告で控除できる?
介護保険は社会保険料の一種なので、確定申告をする人自身が介護保険料を支払ったときや、生計を同じくする家族の分を支払ったときには、「社会保険料控除」の額に含めて所得額から控除できます。
・給与所得者が支払った介護保険料
介護保険料を普通徴収などで申告者自身が支払った場合には、1月1日から12月31日までの1年間に支払った全額を社会保険料控除に含めることができます。
ただし、「自分が支払った」という点に注意が必要で、同居の家族が個人で支払った介護保険料は、世帯主の控除額に含むことはできません。
介護保険料を社会保険料控除として申告するときには、介護保険料の額を証明する書類が必要です。
証明に使用できる書類は、領収書や介護保険料納付済額通知書(普通徴収の場合)、公的年金などの源泉徴収票(公的年金受給者で特別徴収の場合)などで、確定申告時に添付または提示が必要です。
また、民間の保険会社に支払っている介護保険料は生命保険料控除の「介護医療保険料控除」に該当し、年末調整の際に申告することで控除の対象になります。
・65歳以上の人が支払った介護保険料
65歳以上の人が支払った介護保険料は、確定申告や年末調整の際に所得控除の対象となります。
普通徴収分の介護保険料は、実際に支払った、生計を同じくする人の社会保険料控除に含めることができますが、特別徴収分(年金から天引きされている分)は本人以外の控除に含めることはできません。
・医療費控除に含めることができる介護サービス利用料
医療系の居宅サービスや施設サービスは、自己負担額の全額を医療費控除の計算に含めることができます。
介護老人福祉施設の施設サービス料は、自己負担額の1/2相当額を計算に含めることができます。
控除対象になるサービスは生活援助が中心ではない訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、医師の指示による居宅療養管理指導など、医療との関連が高いサービスです。
控除の対象になるかどうかは国税庁のホームページで確認することができます。控除の申告には確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付する必要があります。
医療費控除の明細書は、領収書などをもとに申告者自身が作成します。
領収書の添付は不要ですが、まれに税務署から提出を求められることもあるため、5年間は保管しておくとよいでしょう。
まとめ
介護保険料はさまざまな条件によって異なるため、具体的な保険料をシュミレーションすることは簡単ではありませんが、多くの社会保険料が引き上げられる中で、介護保険料の負担も決して軽いものではありません。
しかし介護保険制度は介護が必要な人を国全体でサポートし、当事者の負担を軽くする制度であり、介護保険料の支払いが難しい世帯に対しては、負担軽減のための減額や減免の措置もあります。
介護保険料の滞納や未納があると、実際に介護サービスを受けるときに負担が増える可能性があるため注意しましょう。
負担が大きく苦しいときには、外部にサポートを求めることも大事です。
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