特別養護老人ホームの費用はどのくらい?払えない人のための減免制度も解説
作成日:2022年12月10日
ご家族が高齢になり介護が必要になってくると、特別養護老人ホームへの入所を考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし特別養護老人ホームの費用について、いくらかかるのか具体的に知っている方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、「特別養護老人ホームの費用相場」から「費用の軽減方法」まで解説するので、ぜひ参考にしてください。
特別養護老人ホームの費用相場
特別養護老人ホームは介護保険施設のひとつで「特養」とも呼ばれています。
基本的には年齢65歳以上で、要介護3以上の認定を受けた方が入居できる公的施設で、初期費用や入居一時金がかかりません。
毎月かかる費用は、居室のタイプや要介護度で金額が異なる「施設介護サービス費」と「居住費」、「食費」、「日常生活費」を合計したものとなります。
以下で居室のタイプ別に月々にかかる費用を表にしました。
要介護度に応じた介護保険の自己負担金額は、所得や居住地によっても異なりますので、料金表はあくまでも目安として参考にしてください。
従来型個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室多床室 | |
要介護1 | 95,670円 | 86,190円 | 123,090円 | 112,950円 |
要介護2 | 97,710円 | 88,2300円 | 125,130円 | 114,990円 |
要介護3 | 99,840円 | 90,360円 | 125,730円 | 117,180円 |
要介護4 | 101,880円 | 92,400円 | 127,320円 | 119,250円 |
要介護5 | 103,890円 | 94,410円 | 131,400円 | 121,260円 |
https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1176442745716/index.html
「介護保険負担限度額の認定について(出雲市)」
「従来型個室」は1室1名の完全個室であり、プライバシーの確保が可能です。「多床室」は1室に2~4名のベッドが設置されおり、古くからあるタイプです。
「ユニット型個室」は1名で利用できる個室と、ダイニングなど数名で共同利用するスペースもあります。
「ユニット型個室多床室」は大部屋に仕切りを作った準個室扱いで、同じ部屋に複数人がいるためプライバシーの完全な確保は難しくなりますが、個室による孤独感は軽減されるといえます。
他施設の費用との比較
高齢者施設には社会福祉法人などが運営する公的施設と、民間企業が運営する民間施設があります。
料金の形態も異なり、民間施設は介護保険対象外のサービス費や上乗せで介護費がかかる場合があり、公的施設よりも金額が高くなってしまいます。
表では「特別養護老人ホーム」と「ケアハウス」が公的施設で、その他は民間施設となります。
特別養護老人ホーム | ケアハウス | グループホーム | サービス付き高齢者向け住宅 | 住宅型有料老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム | |
入居時費用 | 0円 | 数十万〜数百円 | 0〜数百万円 | 0〜数十万円 | 0〜数千万円 | 0〜数億円 |
月額利用料 | 6万〜15万円 | 15万〜30万円 | 15万〜30万円 | 10万〜30万円 | 15万〜35万円 | 15万〜35万円 |
参考:老人ホームはいくらかかる?料金を種類ごとに比較|LIFULL介護
特別養護老人ホームの費用内訳
特別養護老人ホームでは「施設介護サービス費」、「居住費」、「食費」、「日常生活費」がかかり、その合計を月額で支払います。
施設介護サービス費は部屋のタイプや要介護度によって金額が決まります。介護サービス費が加算される場合もあります。
次の章で詳しく解説しますので参考にしてください。
施設介護サービス費
施設介護サービス費は、要介護者が施設サービスを受けたときに、市町村が要介護者に変わって施設に払う介護報酬のことで、利用した介護サービス料の9割が支払われるので、要介護者は1割を負担することになります。
入居する方の要介護度で金額が異なり、要介護度が高くなるにつれて金額も上がります。
また部屋のタイプでも金額がそれぞれ異なるので、家族の要介護度と部屋のタイプについても事前に話し合っておくことをおすすめします。
特別養護老人ホームは原則として要介護3から入居できますが、要介護1・2でも「日常生活に支障が出るほどの認知症や精神障害などを持っている場合」などは特例で入居できることがあります。
居住費
居住費は特別養護老人ホームの「家賃」にあたる費用です。居住費は介護保険の給付の対象外であるため、利用者の負担となります。
居住費の金額は国から「基準費用額」に基づいて定められていますが、部屋のタイプによって金額が異なるので注意が必要です。
有料老人ホームでは自分でベッドなどを用意しなくてはなりませんが、特別養護老人ホームではベッドや家具類は部屋に準備されています。
自分で用意する手間がいらないので入所するのにも身の回り品を準備するだけで済みます。
施設介護サービス費にしても居住費にしてもいろいろな条件によって金額が変わるので、入所を検討している家族の要介護度と希望の部屋のタイプを想定し、月々にかかる金額を事前に計算しておくとスムーズです。
食費
食費も居住費と同じく介護保険の給付の対象外であり、国から「基準費用額」が決められています。
食事は1日3食提供されますが、外出や外泊をして食事を食べなかった場合でも支払う金額は変わらないので注意が必要です。
ただ、外泊が数日に渡る場合は食事を止めることもでき、その場合は料金の支払いは必要ありません。
旅行や家に数日戻る場合は事前に連絡を入れ、手続きしておくとよいでしょう。
アレルギーや持病などによって食べられないものがある場合や、摂食嚥下機能の低下によって食事形態の調整が必要な場合なども可能な範囲で対応してもらえることもあるので、入所する際は事前に施設に相談しておくと、スムーズに適した食事が提供されます。
施設によっては月間や週間の献立を見せてくれる場合があるので、心配な方は施設に問い合わせて献立を見せてもらうと、具体的な食事のイメージがわかるでしょう。
日常生活費
日常生活費には、医療費やレクリエーションの際にかかった金額などが含まれます。
髪を整えるための理美容代や通院や遠方への外出時の交通費、お菓子などの嗜好品も日常生活費として実費での負担です。
ただし、クリーニングを必要としない私服の洗濯や、おむつ・尿とりパッド代などは施設側が負担してくれます。
レクリエーションは認知症にも効果があるとされ、「トレーニング」と感じることなく楽しく体や頭を使うことができるように工夫されています。
レクリエーションの内容は、カラオケで歌を歌ったり、簡単なおやつを作って食べる調理レク、手芸や工芸で作品を作ったり、手足を使った簡単な体操などいろいろあります。
介護サービス加算
介護サービス加算は、設備や職員配置など、それぞれの加算に定められた算定要件を満たすことで基本報酬に加えて算定できる介護報酬です。
一般的には、加算が多ければそれだけ手厚いサービスを行なっていると考えられます。
個別機能訓練加算 | 理学療法士や言語聴覚士、作業療法士などを1名以上配置し、それぞれの入居者に合った個別機能訓練計画に基づいたリハビリを行う施設に対して算定されます。 |
夜勤職員配置加算 | 喀痰の吸引などができる認定特定行為業務従事者の介護職員を配置している施設に対して算定されます。夜間のオンコール対応や緊急時にも対応しています。 |
看取り介護加算 | 回復の見込みがないと医師に診断された場合、介護計画を作成し利用者やその家族の同意を得たうえで、看取り介護を行なうことで算定されます。看取り介護では身体的・精神的苦痛を緩和しながら生活支援を行うことが目的の加算です。 |
サービス提供体制強化加算 | 介護福祉士の有資格者の人数や勤続年数によって、質の高いサービスを提供する体制が整っている場合に算定されます。 |
看護体制加算 | 看護師の人数によって算定されます。看護職員を手厚く配置することで医療ニーズや看取り介護に対応し、「終の棲家」としての役割を担うことが目的の加算です。 |
排泄支援加算 | 排泄に介護を要する入所者に対して多職種が協力して支援計画を作成し、その計画に基づいて排泄支援を行うことで算定されます。 |
栄養マネジメント強化加算 | 管理栄養士による栄養マネジメントや低栄養改善のための取り組みを実施することで算定されます。入所者の栄養状態の改善や維持に努め、栄養ケアを包括的に評価することが目的の加算です。 |
経口維持加算 | 認知機能や摂食嚥下機能の低下によって経口での食事に困難が生じた場合にも、最後まで口から安全に食事が摂れるように、多職種で食事支援を行う場合に算定されます。 |
口腔衛生管理加算 | 歯科医師や歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が入所者に対して口腔ケアを実施したり、介護職員に技術的助言や情報提供を行ったりするなど、歯科の協力体制が整っている場合に算定されます。 |
褥瘡マネジメント加算 | 入所者の褥瘡(床ずれ)を予防する取り組みを評価する加算です。褥瘡ケア計画に基づき、医師、看護師、介護職員など多職種が共同して褥瘡管理を行う場合に算定されます。 |
特別養護老人ホームの費用は年金だけでまかなえる?
特別養護老人ホームでは入居一時金がかからず、月々に発生する費用は民間施設よりも安いため、年金収入だけで施設を利用することも可能です。
さまざまな条件によって実際にかかる費用は異なりますが、一般的には毎月10万円前後かかると考えられるので、まずは年金の給付額がいくらあるのか把握しましょう。
年金の給付額は納めた保険料によって異なるため、すでに年金を受け取っている場合は、年金が振り込まれている銀行口座の明細などで確認できます。
年金は2か月に1度給付されるため、入金額の1/2がひと月分の給付額となります。
まだ年金を受給していない場合は、日本年金機構のホームページで給付額をシミュレーションすることができます。
厚生労働省の発表によると、令和3年度5月末の年金の受給平均は、厚生年金は約145,863円、国民年金は約56,332円になります。
国民年金だけで特別養護老人ホームを支払うのは難しいですが、厚生年金の受給者ならば特別養護老人ホームの金額を十分まかなえます。
ただし、月額費用には施設の利用料金に加えて医療費や介護保険の自己負担分、日用品費などが別途必要な場合もあります。
もし年金だけでまかなえない場合は、生活保護を受けることで特別養護老人ホームに入居できる場合もあります。
生活保護が難しくても、特別養護老人ホームでは所得や資産が少ない方は、月々の金額も優遇してもらえます。
特別養護老人ホームの費用を軽減する制度
特別養護老人ホームでは、利用者が月々に支払う負担額を減らすために「社会福祉法人などによる利用者負担の軽減制度」や、利用者の収入や資産によって負担額が減らせる「特定入所者介護サービス費」があります。
ほかにも、「高額介護サービス費」という補助金が自治体から出る場合があります。次の章で詳しく解説しますので参考にしてください。
社会福祉法人などによる利用者負担の軽減制度
特別養護老人ホームや訪問介護などを利用する場合、一定の低所得者の利用負担額が軽減される制度です制度を利用するにはいくつかの条件があり、市区町村に申請が必要です。
・対象者:市町村民税非課税の方で、以下の条件の全てを満たし、申請に基づいて市町村から認定された方。
1.年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
2.預貯金などの額が単身世帯で350万円、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
3.日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
4.負担能力のある親族などに扶養されていないこと。
5.介護保険料を滞納していないこと。
申請の方法は、
・社会福祉法人等利用者負担額軽減対象確認申請書
・介護保険被保険者証
・収入申告書
・世帯全員の収入や資産、扶養状況が確認できる書類
などを自治体に提出して申請します。
申請後は「社会福祉法人等利用者負担軽減対象決定通知書」が届き、「社会福祉法人利用者負担軽減確認証」が交付されます。
介護サービスを受ける際にこの確認証を提示すれば負担額が減らせるので、対象者はぜひ利用してください。
ただし、「社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度」は実施していない法人もあるので、事前に確認しておきましょう。
特定入所者介護サービス費
特別養護老人ホームの利用者は年金の受給額などに応じて「利用者負担段階」が決まります。
この段階によって負担限度額が決まり、これを越えると介護保険から超過分が支給されます。負担限度額を表でまとめましたので参考にしてください。
第1段階は、生活保護受給者または老齢福祉年金受給者で世帯全体が市区町村民税非課税の方です。
第2段階は、世帯全体が市区町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円以下の方が対象です。
第3段階は、世帯全体が市区町村民税非課税で、本人の公的年金収入額と合計所得金額が80万円を超える方、第4段階は市区町村民税課税世帯の方になります。
申請には以下の書類が必要です。
・介護保険負担限度額認定申請書
・同意書
・預貯金などの証明のための添付書類
預貯金などの添付書類には細かく内容が指定されています。
・預貯金(普通・定期)の通帳の写し(申請日の直近からのもの)
・有価証券(証券会社や銀行の口座座高がわかるもの)
・金・銀などの貴金属(積み立て購入を含む)の購入先銀行などの口座残高がわかるもの
・投資信託(銀行、信託銀行、証券会社などの口座残高がわかるもの)
・その他、現金、負債(借入金や住宅ローンなど)、生命保険、自動車、貴金属ほか、高価な価値のあるものなど
申請方法は、介護保険負担限度額認定申請書、同意書、その他の書類を、市区町村の介護保険担当の窓口に提出します。
提出書類に不備がなければ、申請後1週間程度で結果が通知されます。申請方法の詳細については、市区町村に問い合わせてみましょう。
多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室 | 食費 | |
第1段階 | 0 | 9,600円 | 24,600円 | 9,000円 |
第2段階 | 11,100円 | 12,600円 | 24,600円 | 11,700円 |
第3段階 | 11,100円 | 24,600円 | 39,300円 | 19,500円 |
第4段階 | 25,650円 | 35,130円 | 60,180円 | 41,400円 |
高額介護サービス費
介護保険の対象となるサービスの中で自己負担額が1ヵ月で定められた限度額を超えた場合に、超過分が支給される制度です。
2021年8月高額介護サービス費の基準が改定されました。
サービス利用者や家族の所得によって上限額が変わる点において、負担能力に応じた負担をはかる観点から、医療保険制度の高額養育費制度と合わせて、一定年収以上の高所得者負担限度額が最大で月額14万100円まで引き上げられました。
申請の方法は、利用月の3ヵ月後に通知書が自治体の判断で送付されるので、それを記入し、
・高額介護サービス費支給申請書
・介護保険被保険者証の写し
・介護保険サービスの領収書
を市区町村の担当窓口に提出します。
要件を満たした方に通知書と申請書が届きます。
申請時に介護保険サービスの領収書が必要になりますので、利用する場合、約3ヵ月分の領収書は保管しておいた方がよいでしょう。
まとめ
特別養護老人ホームの費用の内訳や、費用を軽減する制度などを紹介してきました。
厚生年金の受給者なら年金だけで特別養護老人ホームの費用をまかなうこともできますが、やはり月々10万円前後の出費となります。
在宅介護でもさまざまな介護サービスが受けられるため、要介護度の低い方や、費用の負担が難しい方は検討されてみてはいかがでしょうか。
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