ペットボトル症候群とは? 症状や治療法、予防するための飲み物の選び方など詳しく解説!
作成日:2022年12月6日
ペットボトル症候群は、水分補給のために糖質を含む清涼飲料水を大量に飲み続けることで発症します。
肥満体型の若い人に多い症状ですが、高齢者の場合も血糖値が下がりにくくなっているため、糖分が多い飲み物をよく摂取している人は注意が必要です。
ここでは、ペットボトル症候群の原因や治療法、身体にいい飲み物の選び方などについて解説します。
目次
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群とは、糖分を含む清涼飲料水を多飲することで血糖値が上昇し、さらに喉が渇いてしまう悪循環に陥る病態のことです。
清涼飲料水には500mlあたり30~50gもの糖分が大量に含まれているものもあり、糖分を一気に摂取することにより糖尿病の急激な発症、悪化をきたします。
血糖値が高くなると、濃くなった血液を薄めるために身体は水分を必要とし、尿として排出されますが、その結果身体は脱水状態となり、さらに水分を欲するためより喉が渇くようになるのです。
インスリンは身体を動かすエネルギーを作るために血液中の糖分を細胞に運ぶことで血糖値を下げるホルモンですが、高血糖の状態が続くと、膵臓からインスリンが分泌されにくい状態になったり、分泌されたインスリンに対して血糖値が下がりにくくなる状態になったりします。
インスリンの分泌量が低下してインスリンの作用が不足してしまうと、細胞に糖分を届けられずエネルギーを作り出すことができなくなってしまいます。
そのため、不足したエネルギーを補うために肝臓で脂肪を分解してエネルギーを作ります。脂肪を分解する過程でケトン体という物質が生み出されます。
通常ケトン体は腎臓で再吸収されますが、ケトン体が増えすぎて蓄積してしまうと血液は酸性に傾き、「アシドーシス」と呼ばれる状態になります。
また、血糖値が高い状態であるにも関わらず、糖をエネルギーとして使うことができないため、身体は糖が不足している、と誤解して血糖値を上げる作用のあるホルモンを分泌させてしまいます。
これにより血糖値はさらに上昇し、多飲多尿などの高血糖症状が進行したり、吐き気や嘔吐などの消化器症状を発症したりすることがあります。
最悪の場合には昏睡状態に陥ることもあります。
ペットボトル症候群は、清涼飲料水の摂取が多い子供や、20~30代の若年者に多く、水分の摂取量が増える夏場に多くみられる傾向があります。
インスリンの分泌がほとんど無くなる1型糖尿病に多いと言われていますが、すべての糖尿病患者で起こる可能性があります。
また、肥満傾向の型や、健康診断で高血糖を指摘されていても治療をせずそのままにしている人に起こりやすいです。
高齢者の場合であっても、加齢により血糖値が下がりにくく気がつかないうちに糖尿病または糖尿病予備軍となっている可能性があり、水分補給のために清涼飲料水を多飲していると血糖値が急激に上昇し、ペットボトル症候群を発症してしまうことがあります。
〇 ペットボトル症候群の症状
ペットボトル症候群では高血糖の症状に加え、アシドーシスによる症状を呈します。
高血糖の症状には、
・著しい喉の渇き
・頻尿、多尿
・吐き気、嘔吐
・身体のだるさや脱力感
などがみられることがあります。また、ケトン体の一種であるアセトンによって吐く息が果物のような臭いがすることがあります。
さらにケトン体が蓄積され、身体のpHが酸性になると高度の脱水状態となり、
・血圧低下
・頻脈
・意識障害
・昏睡
などの症状がみられることがあります。
〇 ペットボトル症候群の治療法
ペットボトル症候群は高血糖と高度の脱水状態に陥る病態であり、放っておくと昏睡状態となることもあるため、速やかに医療機関を受診し治療を受ける必要があります。
脱水状態に対しては点滴治療が行われ、失った水分を補充します。高血糖に対してはインスリンの点滴が行われます。
脱水状態ではインスリンの吸収が不安定になるため、静脈内への持続投与が必要となります。
十分量のインスリンが投与されると、ケトン体は数時間以内に消失し、アシドーシスも改善します。
ペットボトル症候群は糖尿病の急激な発症により症状をきたした状態であるため、これらの治療により一時的に血糖値が落ち着いても、食生活が乱れたり、多量の清涼飲料を飲む生活を継続したりすると必ず悪化します。
糖尿病の悪化を防ぐためには、飲み薬や食事療法、運動療法などに継続的に取り組む必要があります。
〇 ペットボトル症候群を予防する飲み物の選び方
市販の清涼飲料水には糖分が多く含まれていますが、温度が冷たかったり、炭酸が含まれていたりすると舌は甘さを感じにくくなります。
また、甘味は苦みや酸味と合わさると味が弱く感じる味の抑制効果が起こりやすいといった特徴があります。
したがって、甘さが控えめと感じる炭酸飲料やコーヒー飲料にも多量の糖分が含まれているのです。
効率的に水分補給ができると謳われるスポーツドリンクにも、500mlのペットボトルあたり約31gもの砂糖が含まれています。
血糖値の急激な上昇を抑えるには水やお茶などの糖分が含まれていない飲み物を選びましょう。
嗜好品として清涼飲料水を飲む時は、それだけで水分補給はせずに、適量を守るようにしましょう。
<飲み物に含まれる糖分(500mlあたり)>
種類 | 砂糖の量 |
コーラ | 56.5g |
サイダー | 52.5g |
コーヒー飲料 | 44.8g |
100%オレンジジュース | 55g |
エナジードリンク | 53.5g |
乳酸菌飲料 | 56g |
野菜ジュース | 40.5g |
砂糖の一日あたりの摂取許容量は?
世界保健機関(WHO)は、砂糖の摂取上限を1日に摂取するカロリーの5%未満(平均的な成人では25g程度)とするべきだ、という指針を発表しています。
しかし、500mlのジュースには30~50gもの砂糖が大量に含まれており、ジュース1本で容易に1日の摂取上限を超えてしまう可能性があります。
そのため、砂糖の上限量を超えてしまわないよう飲む量や回数を減らしたり、砂糖が含まれていない低カロリーのものを選んだりする必要があります。
砂糖の摂取許容量(一日あたり) | |
成人 | 摂取カロリーの5%以下 約25g程度(角砂糖約7個分) |
4歳から6歳 | 19g(角砂糖約5個分)以下 |
7歳から10歳 | 24g(角砂糖約6個分)以下 |
※糖尿病の場合、またそのリスクがある場合は除きます。必ず医師に相談して許容量以上摂取しないようにしましょう。
人工甘味料が含まれている飲料は身体にいいの?
低カロリーの甘味料、いわゆる人工甘味料は、ダイエットや血糖コントロールに有効である反面、人工甘味料の常用や多量摂取が健康被害を招くおそれが指摘されています。
また、人工甘味料が糖尿病の治療に有用であると提言されている一方で、過剰摂取は糖尿病を発症しやすくなる、とも言われています。
ある研究では、「ダイエット清涼飲料水を週に1カップ(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人と比べて糖尿病発症の危険が1.7倍高かった」ということが明らかとなりました。
通常、砂糖を摂取すると血糖値が上昇するため、インスリンという血糖を下げるホルモンが分泌されますが、人工甘味料は血糖値を上げないため、インスリンは分泌されません。
しかし、習慣的に人工甘味料を摂取することでこのインスリンの働きが鈍くなり、血糖値をコントロールする力が弱まる、と考えられています。
さらに、人工甘味料を摂取すると、甘いものを食べているのに血糖値が上がらないため脳が異常に反応してしまい、より甘いものを欲して食べ過ぎてしまい、むしろ太りやすくなるとも言われています。
人工甘味料は登場してからまだ歴史が浅く、人体に与える影響について十分なデータが集まっていないため、今後の研究の経過を見守る必要があります。
人工甘味料に限らず、どんなものであっても過剰に摂取することは身体にとって毒になるため、適量を守るようにしましょう。
人工甘味料の1日の摂取許容量は?
厚生労働省では人工甘味料の安全性を調べ、有害が認められなかった最大投与量(無毒性量)を公開しています。
さらに、最大投与量の100分の1の量を一日の摂取許容量としています。また各食品に使える使用基準もそれぞれ定めています。
<人工甘味料の一日摂取許容量(ADI)>
人工甘味料の種類 | 一日摂取許容量 (mg/kg体重/日) |
サッカリン | 1.5 |
アスパルテーム | 40 |
アセスルファムK | 1.5 |
スクラロース | 15 |
ネオテーム | 1 |
アドバンテーム | 5 |
参考:国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第三室 食品添加物ADI関連情報
http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/food_add/
血糖値が高いままだとどうなるの?
糖尿病と気づかずに糖分が多い清涼飲料水を飲み続けたり、糖尿病と知っていても適切な治療を行っていなかったりすると、血糖値が高い状態が続いて身体中の血管が傷つけられてしまうため、様々な合併症の原因となります。
また、日本人の死因の中でも多い心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化を発症しやすくなります。
糖尿病は自覚症状が無い状態であっても、見えないところで合併症が進行していくため、気づいた時には日常生活に支障があらわれてしまう恐ろしい病気なのです。
〇 糖尿病の3大合併症
・糖尿病性腎症
腎臓にある糸球体には毛細血管が密集しており、高血糖状態が続くことで毛細血管が硬くなります。
毛細血管が硬くなると、糸球体で血液をろ過して原尿を作ることができずに腎臓の機能が低下していきます。
最終的には老廃物を尿として排泄できなくなるため、人工透析か腎移植が必要となります。
初期ではほとんど症状がありませんが、進行すると通常ではろ過されるタンパク質が尿に排出されるようになり、タンパク尿が高度になると全身にむくみを生じます。
さらに腎症が進行すると老廃物が排出できず身体に溜まることにより尿毒症の症状がみられます。
・糖尿病性神経障害
高血糖状態が続くことで神経に栄養を供給するための血管が傷つけられてしまうことで神経の働きが障害されます。
神経には皮膚の感覚などに関わる感覚神経、身体の運動に関わる運動神経、食べ物の消化や汗の分泌、膀胱や生殖器の働きや血圧の調節に関わる自律神経などがあり、様々な働きをしているため障害される部位によってみられる症状は異なります。
感覚神経が障害されて皮膚の感覚異常が生じると火傷やケガをしても痛みを感じず気づかなくなることや、足先や指先などにしびれや痛みなどが起こります。
運動神経が障害されると、筋肉の萎縮や足の変形、筋力の低下などが起こります。
自律神経が障害されると、立ち上がった時に血圧が下がる便秘や下痢、消化不良を起こしやすくなったり、汗をかきにくくなったり、膀胱の機能障害が起こったり、起立性低血圧が起こりやすくなったりします。
・糖尿病性網膜症
目の中にある網膜は、レンズの役割を果たす水晶体を通して入ってきた光の情報を電気信号に変えて脳へ送る働きをします。
網膜には毛細血管が張り巡らされており、高血糖状態が続くと毛細血管が詰まり網膜への酸素や栄養が行き届かなくなります。
初期には自覚症状がみられませんが、進行すると視力が低下することや、網膜剥離や眼底出血、硝子体出血などを起こすことがあり、最終的には失明に至る場合もあります。
高血糖のまま治療しないでいると、5年で10%、10年で30%、15年で50%、20年で70%が網膜症を発症すると言われています。
糖尿病を予防する食事療法とは?
・食事は決まった時間に、ゆっくり食べる。
欠食すると食事と食事の間隔が空いて血糖値が下がりすぎた状態になり、食事を摂った時に血糖値が急激に上がってしまいます。
また、欠食は一回の食事量も多くなりやすいため、3食規則正しく食べるようにしましょう。
食事量は、朝3:昼4:夜3の比率にすると血糖値が上がりにくいとされています。
・ゆっくりよく噛んで食べる
満腹中枢が刺激されるのは食事を始めて15分後と言われています。そのため早食いは食べすぎの原因になります。
食事量が抑えられればその分血糖値も上がりにくくなるため、できれば食事はゆっくりとよく噛んで30分以上かけるようにしましょう。
・野菜を多く摂取する。
野菜に多く含まれる食物繊維には小腸でのコレステロールの吸収や食後の血糖値の急上昇を抑える効果があります。
主食や主菜の前に野菜や海藻など食物繊維が多い食品から食べる「ベジファースト」を実践すると、余分な糖質や脂質の吸収をコントロールする効果が期待できます。
厚生労働省が推進する健康作り運動「健康日本21」では野菜は1日に350g以上摂取することが推奨されています。
・糖分、脂質を摂り過ぎないようにする。
糖分、脂質の摂取過多は肥満の原因となります。自分の適正なエネルギー量を知り、様々な食材からバランス良く栄養素とエネルギーを摂取するようにしましょう。
・味付けは減塩を意識する。
塩分の摂取過多は高血圧を招き、糖尿病や合併症を悪化させる要因となります。料理の味付けは薄味にし、酢や香辛料を活用して味にアクセントをつけましょう。
・寝る3時間前までに夕食を食べる
→就寝中はインスリンの働きが鈍くなってしまうため、寝る3時間前までに飲食は済ませるようにしましょう。
ペットボトル症候群のまとめ
ペットボトル症候群は若い人が発症しやすい病気と言われています。しかし、若年層だけが発症するわけではないため、中高年の方も注意しなくてはいけません。
特に、初期の糖尿病の症状はペットボトル症候群に似ていることがあります。
初期の糖尿病は無症状で進行するため自分では気づきにくく、高齢者の中にも”隠れ糖尿病“の人は多くいらっしゃいます。
糖分を含む清涼飲料水を普段から飲む習慣がある人は、お茶や水など糖分を含まない飲料を選ぶようにしましょう。
健康な身体作りには、飲み物の選び方だけでなく、栄養バランスの良い食事が大切です。
「まごころ弁当」では前日までのご注文で、自宅に栄養士が献立を考えたお弁当を届けます。
一般の高齢者に向けたお弁当だけではなくカロリーや塩分、タンパク質などの制限が必要な方への対応や、摂食機能によって食事の形態を変更するなど、一人ひとりに合わせて届けてもらうことも可能です。
今なら、2食まで無料で試すことができます。この機会に是非無料試食サービスをお試しください。
参考:MSDマニュアル プロフェッショナル版 糖尿病性ケトアシドーシス
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/10-内分泌疾患と代謝性疾患/糖尿病と糖代謝異常症/糖尿病性ケトアシドーシス(dka)