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高齢者が利用したい食事のサービスについて

作成日:2020年4月22日

高齢者が利用したい食事のサービスについて

2025年には日本の人口の1/4が後期高齢者となります。高齢者夫婦のみの世帯や、高齢者の単身世帯も増加が予想され、食事のサービスはますますニーズが増大すると予想されています。高齢者が利用したい食事のサービスについて紹介します。

高齢者の食事と健康の特徴

2017年(平成29年)の国民健康・栄養調査の結果から、高齢者の食事と健康についての特徴がわかります。

高齢者の栄養状態

エネルギーとたんぱく質の摂取量は、20歳以上の成人全ての年齢層の中でも、男女ともに60歳代が最も高くなっています。このことから、60歳代では十分な食事量が確保され、栄養摂取がされていると考えられます。しかし65歳以上になると、低栄養傾向の人(BMI≦20㎏/㎡)の割合は16.4%になります。

男女別では男性12.5%、女性19.6%で女性の方が多く、この割合は10年間ほぼ変化していません。80歳以上では男女ともに、約20%が低栄養の傾向にあるといえます。

四肢の筋肉量

60歳以上の骨格筋指数の平均値は、男女ともに年齢が高くなるほど減少しています。また骨格筋指数の平均値は男女ともにたんぱく質の摂取量が多い人ほど高く、肉体労働をしている時間が長い人ほど有意に高くなっています。つまり、たんぱく質を十分に摂取し、運動時間が長い人ほど骨格筋量が維持されているということになります。

歯・口腔の健康

「なんでも噛んで食べることができる」人の割合と、自分の歯が20本以上ある人の割合は、ともに60歳代から大きく減少しています。65歳以上の高齢者では男女ともに「なんでも噛んで食べることができる」人とそうでない人では、「なんでも噛んで食べることができる」人の方が低栄養傾向の人の割合は有意に低く、これは年代別にみても同様です。つまり、残っている自分の歯の数と噛む機能には相関があり、さらに噛む機能は低栄養に大きく影響していると考えられます。

食事のサービス利用の実態

2013年(平成25年)に農林水産省によって高齢者向け食品や食事提供サービスについてのアンケートが実施されました。その結果の分析によって、食事サービスの利用には次のような傾向があることがわかりました。

食事のサービス利用

高齢者向けの食品や食事にかかわるサービスは「介護・介助が必要な状態となって」から、買い物や調理などの「食事に関係する行為にかかる手間や負担の軽減のため」に利用されているのが現状です。食事にかかわる事柄に何らかの困難を感じてから利用を検討する、「事後的なサービスの利用」が主となっています。特に健康高齢者ではサービスを利用していないだけではなく、むしろ高齢者向けの食品や食事提供サービスに対して抵抗感を持っているケースもあるようです。

健康状態によるニーズの違い

食事提供サービスに対して要支援・要介護高齢者では、「本人や介護者の手間や負担軽減」「栄養バランスの良い食事」を求めるケースが多く、一方で健康高齢者は、「安全でおいしい食事」や「地域の特色ある食材」「味やメニューのバリエーション」などを重要視しているようです。しかし現在は高齢者向けの食事サービスに必要性を感じていない健康高齢者であっても、気づかないうちに低栄養や生活機能の低下を招くような、高リスクな食生活を送っている可能性もあります。

特に男性の単身世帯や過疎地域の居住者、社会活動に消極的な人は、将来的に食事サービスの必要性が高まる可能性があると考えられます。

地域包括ケアシステムと食事

地域包括ケアシステムとは、「高齢者が、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービスを提供する体制」のことをいい、団塊の世代と呼ばれる人たちが後期高齢者となる2025年までの実現を目指しています。

この地域包括ケアシステムでは、高齢者が要介護の状態に至らないようにするための介護予防の充実を目指しています。高齢者が要介護に至る大きな理由には身体機能の低下がありますが、身体機能と食生活には深い関係があります。

地域包括ケアシステムの4つの助

4つの助とは、自助・互助・共助・公助を指します。

「自助」は自分のことを自分ですることです。本人や家族が必要と考える市場サービスを購入して利用し、自分の健康管理や介護予防に取り組むことや、介護保険や医療保険の自己負担分などを含みます。

「互助」は地域の人同士で自発的に支えあうことです。ボランティア活動や地域住民のコミュニティなど、費用の負担が制度的に強制されない、助け合いの仕組みです。

「共助」は制度化されている、助け合いの仕組みです。医療保険や介護保険、年金制度などがこれに当たります。

「公助」は国による社会福祉制度のことです。主に税金によって成り立っている仕組みです。医療保険や介護保険の公費部分や生活保護などが、これに当たります。

高齢者への食品や食事を提供するサービスは、行政によって実施されている「公的サービス」、社会福祉協議会やNPO法人などによる、非営利の「社会的サービス」、株式会社などによる営利を目的とした「民間サービス」の3つに大きく分けられます。

「公的サービス」は、行政による直営事業や事業者への委託などによって、日常の食事に対する課題や困難のある高齢者や障がい者を中心に安価な価格での食事提供を行っており、行政による財政負担や被保険者からの保険料によって支えられています。地域包括システムにおける公助や共助の領域で、必要性は高くても、今後の財政状況や境負担の増加などを考慮すると、積極的な拡充が困難と考えられます。

「社会的サービス」は主に地域が主体となって展開され、食事以外の見守りや居場所の提供などを含む、地域の高齢者の生活支援全般に対応できる可能性があります。サービスの主体は社会福祉協議会や地域のボランティアの場合と、NPO法人などによる場合があります。特にNPO法人によるサービス提供は食事提供だけに留まらず、地域づくりの機能も含めた充実したサービス展開の可能性が期待されます。

「民間サービス」は、高齢者数の増加に伴う需要の増大やニーズの多様化によって市場が拡大し、サービスの種類や内容にも拡充・拡大が期待されます。地域包括システムの自助の領域ですが、サービスを利用するかどうかは本人や家族の意思だけではなく、経済的な状況によっても影響を受ける可能性があります。

栄養ケアステーション

栄養ケアステーションは、全国の管理栄養士、栄養士が地域や医療機関に対して栄養支援を行う地域密着型の拠点のことです。地域に顔の見える管理栄養士、栄養士を増やすために、平成20年4月から各都道府県栄養士会に設置しました。地域に暮らす人たちの食の課題に、栄養士・管理栄養士が対応します。主な業務は次の通りです。

・栄養管理

①栄養相談
②特定保健指導
③医療保険や介護保険にかかわる栄養管理、食事管理および栄養食事指導の実施
④栄養改善・食生活改善にかかわる地域貢献活動

・食事管理

①献立調整、栄養価計算
②調理指導
③栄養改善・食生活改善に関する地域貢献活動

現在は都道府県栄養士会だけではなく、医療機関やドラッグストア内に併設されていたり、NPO法人などによる認定栄養ケアステーションも開設が進んでいます。上記の業務内容以外にも、食事にかかわる困りごとや、地域での食にかかわる活動についての相談などがある場合には気軽に問い合わせてみましょう。内容により予約や費用が発生しますので、事前に電話やメールで確認してください。

全国の認定栄養ケアステーションの一覧です。ご参考ください。

https://www.dietitian.or.jp/about/concept/pdf/care_list.pdf

食事サービスの種類

高齢者が利用したい食事のサービスにはさまざまな種類があり、それぞれに公的サービスや民間サービスがあります。

会食サービス

会食サービスとは、地域の中に拠点を設けて、同じ場所に集まって一緒に食事や会話を楽しむ形式の食事サービスです。会食の目的や効果は、大きく3つあげられます。

・食事の機能性

栄養バランスの良い食事が摂れることや、満足感を得ること。食生活に対する意識の向上など。

・新たな刺激

出かける場所の提供により、家の中に閉じこもることを予防します。また食事や栄養、健康や運動についての情報を得ることができます。

・地域住民との交流や社会参加

近隣に住む人同士の交流の場となります。単身世帯や高齢者世帯の人が参加することで地域での新たな出会いが生まれます。また、多世代が集まることで地域の絆が強まり、防犯や防災にも役立ちます。

配食サービス

配食サービスとは食事を自宅まで配達し、食事にかかわる家事の負担軽減や、栄養バランスの改善を目的としています。また配達による自宅の訪問を通じた会話や、安否の確認も重要な目的のひとつとなっています。

配食サービスを検討するときのポイント

配食サービスの利用を検討するとき、多くの場合では、食事や食事にかかわる家事について困りごとが発生していると考えられます。食事の準備が難しくなったり、食事の量が減少していると感じたときには、生活環境の変化や身体機能・認知機能の低下、体調の変化などさまざまなことが食に影響を及ぼしていると考えられます。

①配食サービスに何を求めるか

食事についての困りごとを解消するためには、何が必要かを明確にしておきましょう。栄養バランスや利便性、費用、おいしさなど、必要なサービス内容について優先順位を決めておきましょう。

②利用可能な配食サービスを調べる

配食サービスは、行政による費用の補助が受けられる場合があります。利用条件は各市区町村によって異なるため、あらかじめ担当ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してみましょう。また民間の配食サービス会社も、地域の配食サービスでも、配達エリアが決まっている場合があります。利用したい配食サービスをみつけたら、自宅が配達可能エリアかどうかを確認しておく必要があります。

③サービス内容の確認、試食

利用したい配食サービスについて、その内容をよく確認しておきましょう。1食あたりの費用はもちろんですが、配達の方法や支払いの方法、食事の内容、食事以外のサービス内容など、利用し始めてから困ることがないようにしたいものです。多くの配食サービスの会社では電話やメールでの問い合わせが可能ですので、わからないことは遠慮せずに直接問い合わせてみましょう。療養食や摂食嚥下機能への対応などについて、栄養士や管理栄養士に直接相談できる場合もあります。

無料または低価格での試食サービスを実施している場合にはぜひ利用して試食をしておきましょう。味や食べやすさなど、食べる人に適しているかどうかをみるためには、実際に食べてみることが一番です。

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健康支援型配食サービス

厚生労働省は2020年から「健康支援型配食サービス」という取り組みを新たにすすめています。これは2019年に発表された「健康寿命延伸プラン」の中に盛り込まれている政策のひとつで、管理栄養士や歯科衛生士といった専門職と食事サービスの事業者が連携して、高齢者の口腔機能と栄養状態の維持・改善を目指すものです。これまでの配食サービスでは、その後の喫食者の状況や体調変化については確認ができていませんでしたが、今後は配食事業者と専門職が連携して食事提供後のフォローアップを行い、情報を共有することで健康の維持・増進につなげることを目標としています。

次にあげる表は、2017年(平成29年)に厚生労働省より発表された「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」より、フォローアップの具体的な確認項目について引用したものです。

<配食注文時のアセスメント及び継続時のフォローアップにおける確認項目(例)>

 

確認項目

 

注文時

継続時  (初回注文後数週間以内)継続時※(年に1~2回程度注1)
基本情報居住形態
要介護(要支援)認定
日常生活動作(ADL)

手段的日常生活動作(IADL)

身体状況・

健康状態

身長・体重(過去6か月の体重変化を含む。)、BMI注2〇     過去6か月の体重変化のみでも可
主な既往疾患、原疾患、食事療法の要否・内容・程度※3、服薬状況
摂食嚥下機能(咀嚼、歯、義歯などの状態を含む。)
食に関する状況食欲の程度、食事回数、量(継続時は配食の摂取量も確認する。)〇     食形態の適合性 のみで可
食品摂取の多様性※4
食物アレルギー
買い物・調理の状況 〇

※事業者の配食をおおむね週当たり2食以上かつ6か月以上継続して利用しているものについて実施。
〇:全ての利用者について実施、△:利用者によっては2回に1回程度でも可。
注1:利用者の身体状況などに応じて設定する。
注2:身長および体重をもとに事業者でも算出できるようにしておく。
注3:行事食などを提供する場合の栄養価の管理にかかる留意点を含む。
注4:主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日何回しているか。 など

在宅訪問栄養食事指導

食事や栄養について困りごとがある場合は、介護保険や医療保険を利用して管理栄養士が自宅を訪問し、食事や栄養、健康状態などについて相談することができます。
ただし主治医からの指示が必要となりますので、かかりつけの医療機関にご相談ください。

まとめ

今後の高齢化に向けて、食事にかかわるサービスは種類も内容も多様化しています。自分に合った食事サービスをみつけて、健康の維持・増進に役立てましょう。

この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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