誤嚥性肺炎を食事で予防しよう!嚥下機能に合わせた調理法
作成日:2020年4月22日
年齢がすすむにつれて、嚥下機能(ものを飲み込む力)は低下してしまいます。歯の状態が悪ければうまく食べ物をかみ砕くことができませんし、かみ砕くことができたとしても、顔や首周りの筋力が低下していれば飲み込みにくくなります。また加齢とともに唾液の量も減るため飲み込みにくさを増大させます。
それらの嚥下機能が低下することが原因で、誤嚥性肺炎になってしまう方が非常に多く、抵抗力が落ちている高齢の方にとってはとても危険で大きな問題です。誤嚥性肺炎の予防法は様々ありますが、飲み込む力に合わせて食事の調理法や形態を変えることが重要です。
今回は、誤嚥性肺炎についてとその予防方法について詳しく説明していきます。
目次
誤嚥性肺炎について
通常、食べ物や唾液を飲み込むとき、口の奥には蓋があり(軟口蓋)その蓋が鼻腔を塞ぎます。それと同時に空気の通り道の蓋(咽頭蓋)がとじるので、口の中のものが鼻や気管へと流れ込むことがありません。誤嚥とは、本来であれば食道へ流れるべきである唾液や食べ物が誤って気管に入ってしまうことをいいます。いわゆる「むせる」という状態です。
若く健康な人であれば、誤嚥をしてしまったとしても、反射でしっかりと咳込むことができるので、気管に入ってしまった異物を外に出すことができます。
しかし、高齢者は加齢と共に少しずつ感覚が鈍くなってしまいますので、鼻や気管へ流れ込むことを防ぐ蓋が上手に機能しなかったり、飲み込む一連の筋力が低下してしまったりします。そのため誤嚥をしても咳が弱くなかなか異物を外に出すことができなかったり、そもそも反射が起こらずに異物がそのまま気管や肺に留まってしまいます。
そもそも気管や肺は、菌が全くいない状態が正常であるため、異物が混入してしまうと、すぐに炎症が起きてしまいます。この肺に炎症が起きてしまった状態を誤嚥性肺炎と言います。70歳以上の人がかかる肺炎の約80%が誤嚥性肺炎と言われています。
一度誤嚥性肺炎を起こすと、なかなか炎症が起きた気道や肺はよくなりませんので、さらに気道の粘膜の感覚が鈍くなってしまいます。そのことにより、異物が混入したことに対する反射の咳が出にくくなり、誤嚥を繰り返すという悪循環が起こってしまいます。
誤嚥性肺炎と普通の風邪の違いとは
誤嚥性肺炎の症状としては、以下のものが挙げられます。
・激しい咳込み
・高熱
・膿のような痰が増える
・息苦しさ
・同じ時間に熱が出る
・食事中にむせたり咳込んだりしている
これらの症状が長期間続く場合は、誤嚥性肺炎を疑います。普通の風邪と症状が非常に似ているため、症状を聞いただけではなかなか違いを見つけることはできません。
普通の風邪は、のどや鼻などの上気道に細菌やウイルスが付着することで発症しますが、誤嚥性肺炎は肺に炎症が起きます。肺は、酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出す役目をしているので、肺に炎症が起きることで通常の風邪と比べると息苦しさが強かったり呼吸が速くなったりする傾向にあります。
また、高齢になればなるほど、上記のような症状よりも、活気がないことや食欲がないこと、食事に時間がかかることなどの分かりにくい症状が現れることがあります。いつもと様子が違ったり、熱が長引いて治らない時、呼吸がいつもと違う時には、医療機関へ相談しましょう。
採血や胸部エックス線検査(レントゲン検査)で肺に炎症が起きていないかどうかを調べることで診断を受けることができます。
誤嚥性肺炎の治療とは
肺炎は、高齢者の死亡原因の上位に入っており、抵抗力が落ちている高齢者にとっては危険な病気と言えます。きっかけは食事の誤嚥でも、放置しておくと重症化してしまうことがあるので注意が必要です。
治療は、炎症を抑えるための抗生剤などの薬物療法が基本となります。息苦しさがひどいときや、肺の炎症が強くて体に上手に酸素を取り込むことができない場合は、入院して全身状態の管理を行います。さらに症状が悪化して、呼吸状態が悪い場合には人工呼吸器で呼吸を管理することもあります。
高齢者の入院は、筋力の低下を招いて寝たきりの状態になってしまったり、認知機能が低下してしまったりと、日常生活を送るための能力が低下するリスクが高いです。入院しなければならない状態になる前に、誤嚥を予防したり早期に病院を受診して治療を受けることが大切になります。
また、抗生剤などの薬物療法は、肺炎自体を治すことはできますが、嚥下機能を回復させたり誤嚥を予防することはできません。日常的に誤嚥を予防していくことが非常に重要です。
誤嚥性肺炎の予防方法
誤嚥性肺炎には、以下の5つが挙げられます。
口腔内を清潔に保つ
お口の中が清潔でないと口の中で細菌が増え、その細菌を含む唾液や食物が気管や肺に誤って混入してしまうことで誤嚥性肺炎を起こしてしまいます。高齢者で、飲み込む機能が低下している人は、食事の時だけでなく、寝ている間にも少しずつ唾液が気管へ垂れ込んでしまい、誤嚥してしまうことがあります。その時に口の中が汚いとすぐに誤嚥性肺炎になってしみます。
日常的に歯磨きを行い、それに加えて舌の上も舌ブラシを使ってきちんと磨いたり、入れ歯の手入れを毎回することなどで、口の中の細菌は減らすことができます。また、歯磨きを行った後は、できるだけぶくぶくうがいをするようにしましょう。ぶくぶくうがいをすることで、口の中の細菌を減らすだけでなく、口をしっかりと結ぶことで口の周りの筋肉を鍛えることができます。
口の中を清潔に保つことで誤嚥性肺炎は予防することができる上に、口の中を刺激することで唾液の分泌を促すこともできるので、日常生活でしっかりと口の中をケアしていきましょう。
食事をするときには姿勢を整える
食事をするときには、椅子に座れる人は椅子に座る(もしくは床にきちんと座る)ことが大切です。テーブルの高さは腕をのせて肘が90度に曲がるくらいに調整しましょう。椅子に座る際は、ひざが90度に曲がるくらいの椅子の高さに調整し、足の裏が床にきちんとつくのが理想的です。
要介護の状態でベッド上で食事をとるときには、背もたれにもたれて顔が上を向いた状態で飲み込むと誤嚥をしやすいと言われています。きちんとベッドを起こし、背筋を伸ばして顔を少し下に向けて飲み込むと誤嚥を予防することができます。
食事をとった後、すぐに横にならない
食事をとった後に、すぐに横になると食道から胃に入った食物が逆流してきて、それを誤嚥してしまうことがあります。特に、げっぷが出やすい方や胸やけをしている方は、その傾向が強いと言えます。
食事をとった後、最低30分は起き上がった状態でいることが大切です。起きていることが苦痛でない場合は、食後2時間は座った状態で過ごすと良いでしょう。
飲み込むために必要な筋肉を刺激する
年齢をともにどうしても筋力は低下します。しかし、食事の前に簡単な体操を行うことで、食事の時に必要な筋肉を刺激し、唾液の分泌を促したり飲み込みにくさを改善したりすることができます。簡単に楽しく実施することができるので、食事の前に行うことで、よりよい雰囲気で食事を楽しむこともできます。
顔や口の周り、首のマッサージをする。
気持ちいいと感じる程度の力でゆっくりとマッサージをしましょう。力を入れすぎると逆に筋肉が緊張してしまうので、柔らかい力で筋肉の緊張を和らげることを意識して行いましょう。
肩や首のストレッチ
腕を肩から大きく回したり、首を上下左右に傾けたり回したりしてストレッチをしましょう。このことによって、リラックスできる上、飲み込むときに必要な筋肉を刺激し鍛えることができます。
「ぱたから」を繰り返し言ってみましょう。
口を大きく動かしながら、「ぱたから、ぱたから、ぱたから」と繰り返していってみましょう。このことによって、噛んだり飲み込んだりするときに必要な口の周りの筋肉を動かすことができます。パ行(パピプペポ)、ラ行、タ行、カ行、マ行の音を発する時に、飲み込むときと同じ場所を使うと言われています。
口周りを大きく動かす
ほおを大きく膨らませたりへこませたりすることを繰り返します。また、「あーいーうーえーおー」と大きく口を動かすことも効果的です。さらに舌を思い切り前に出したり引っ込めたりするのも有効です。
意識的に強い咳をする
ゴホンと意識的に強い咳をするようにします。そのことで、食べ物や唾液などの異物が気管へ誤って侵入してしまったときに、反射で出る咳が強くなり、異物を外へ排出しやすくなります。
これらの簡単な体操を無理のない程度で毎日続けると、誤嚥を予防することができます。食事の時間以外にも、日常的に会話をしたり、たくさん笑ったり、歌を歌ったりすることも有効とされています。
食事の形態を工夫する
誤嚥を予防するためには、食事の形態を工夫することが必要です。しかし、食べ物をただ細かくすればよいというわけではありません。症状などから、嚥下(噛んで飲み込むこと)のどの部分に問題があるのかを知り、それに合わせた食事の形態変化をする必要があります。
飲み込むときに問題となるプロセスとしては以下の3つが挙げられます。
食べ物を細かくかみ砕くことができない
歯がそろっていなかったり、弱かったり、噛むための筋力が低下していたりとさまざまな理由が考えられます。食べ物をかみ砕く咀嚼の時点で問題がある場合には、食べ物を細かく刻んだり、柔らかく煮たり、マッシュポテトのように押しつぶした状態にすることで解決することができます。
「まごころ弁当」では、やわらか食を選択していただくと、かみ砕くことに不安がある方には安心して召し上がっていただくことができます。
噛んだものをまとめることができない
口の周りの筋力の低下や、舌を上手に動かすことができないことなどが原因で、噛んだものを上手にまとめることができなくなります。口の中で噛んだものがばらばらだと、飲み込むことができず誤嚥につながります。そのような方は、細かく刻んだり柔らかく煮た上で、とろみをつけることで上手に飲み込むことができます。
飲み込むことができない
食べ物をかみ砕いてまとめることができたとしても、筋力の低下などから上手に飲み込めないことがあります。固形のものでむせる場合には、食材を柔らかくしたりとろみをつけることで飲み込みやすくなります。水分でもむせることがあるので、その場合にはお茶やスープなどの水分にもとろみをつけましょう。
飲み込むことができていないことを判断するためには、むせる以外にも、飲み込んだ後も口の中に食べ物が残っていることや、飲み込んだ後にのどに違和感があること、飲み込んだ後にガラガラ声になるなどの症状で判断することができます。これらの症状があるときには、上手に飲み込むことができていないので、食事の形態を工夫する必要があります。
「まごころ弁当」のやわらか食でもむせてしまう場合には、ムース食を選択してみるのもおすすめです。
誤嚥性肺炎に関するまとめ
誤嚥性肺炎は、高齢者に起こりやすく繰り返しやすい上に、重症化しやすいとても怖い病気です。年齢がすすむにつれて、食べ物を上手に噛み砕いたり、口の中でひとまとまりにしたり、飲み込んだりすることが難しくなります。また、唾液の分泌量が減ったり、歯の状態が悪くなったりと様々な要因で誤嚥は起きやすくなります。
特に介護が必要な方は、筋力の低下が顕著であったり、食事をとるときの姿勢がよくなかったり、口腔内のケアが不十分であったりして、誤嚥のリスクが非常に高いと言えます。
しかし、逆に言えば原因が分かっているので予防がしやすいとも言えます。日常的に口腔内の保清に務めたり、食事のときの姿勢を適切にすることなどは意識をすればできることです。また、誤嚥予防のための体操は、食事に対する気持ちも前向きになります。
重要であるのは、食事の形態を工夫することですが、高齢者向け宅配サービス「まごころ弁当」を利用することで簡単に工夫することができます。
食事は、人生において非常に大切なもので、ただ栄養がとれればいいというものではありません。誤嚥をするからと流動食にしたり、経管栄養や点滴にすることは簡単ですが、それでは生きていることの楽しみを見出しにくくなります。
食事が楽しく、人生において幸せな時間の1つにするために、充実した食事内容にすることは重要です。「まごころ弁当」は、食べる楽しみと幸せな時間を提供することができる、非常に有効なツールと言えます。