バランスの良い食事が大切!?大腸がんの予防
作成日:2020年9月3日
近年、食習慣の欧米化や生活習慣の乱れ、ストレス社会などの影響により大腸がんにかかる方が増えています。大腸がんは初期で発見することができれば、治療や回復を見込むことができますが、発見が遅くなると命に関わる危険な病気と言えます。今回は、大腸がんについてとその予防について詳しく説明していきます。
目次
1. 大腸がんについて
大腸とは、食物を体に取り入れた後の最後の通り道で、小腸で多くの栄養が吸収された残りが大腸へとやってきます。大腸の役割は、小腸で栄養が取り込まれた後の残りから水分を吸収して、その残りかすを身体の外へと排出することです。大腸は、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸と直腸に分けられており、日本人は特にS状結腸と直腸にがんが発生しやすいと言われています。大腸がんは、そのできた部位によって治療法や予後も変化してきます。
大腸がんは、大腸の中に発生するがんで、早期の場合は自覚症状がほとんどないことが多く、進行するにつれてさまざまな症状が出現します。便に血が混ざったり、下痢と便秘を繰り返したり、便が細くなったり、体重が減少したりします。便に血が混ざる場合、黒い便と赤い便がありますが、黒い便は消化管の上部(食道や胃、十二指腸)からの出血で、赤い便は下部(小腸や大腸)からの出血と考えられます。
大腸がんは、大腸の中の最も内側の粘膜細胞に発生して、進行するとともに大腸の壁の中へと深く侵入していきます。進行すればするほど、がんの周囲のリンパ節から、少しずつ離れた場所にあるリンパ節まで遠隔に転移し、さらに肝臓や肺などの臓器にまでも転移していきます。
大腸の内部でがん細胞がおさまっていれば手術が可能ですが、遠隔へと転移している場合には手術することができず、化学療法などを行っていく必要があります。そうなってくるとなかなか完治は難しくなってしまいます。そのため、大腸がんはなるべく早期に発見して早期に治療をする必要があります。
早期に発見するためには、定期的に健康診断を受けて簡易的に、便潜血の検査を受けることが大切です(いわゆる検便)。便潜血の検査とは、便の中に血液が混ざっていないかどうかを調べる検査で、便を少量とって検査に出すだけなので、簡単に結果を知ることができます。便の中に血が混ざるのは、大腸がんだけでなく、痔や良性のポリープが原因であることもあります。
しかし、ただの痔だと思って放っておくと、気付いた時には進行してしまっていたということはよくありますので、気になる症状があるときには医療機関を受診するようにしましょう。
大腸がんの確定診断を受けるためには、大腸の内視鏡検査を受けて、直接気になる場所の細胞をとり、がん細胞の有無を確かめる必要があります。大腸の内視鏡検査は、個人差はありますが痛みを伴ったり事前に下剤を飲んで処置をする必要があり、ハードルが高いため、まずは便潜血の検査を受けて大腸内視鏡検査を受ける必要があるのかどうかを調べるのがよいでしょう。
大腸がんは、ごく早期に発見することができれば大腸を切り取らずに、がん細胞だけを内視鏡的に切除することも可能で、この場合、身体への負担も少ないので入院期間も1~2週間程度ですみます。
進行してしまって大腸を切除しなければならない場合には、がんができた場所によっては人工肛門(ストーマ)を造設しなければならなくなり、QOL(生活の質)は著しく低下してしまいます。人工肛門とは、手術をして腸の先をお腹から出して排便する方法で、直腸にがんができていて直腸を残すことができない場合や大腸全体を切除しなければならない場合に造設されます。
2. 大腸がんの原因
大腸がんの主な原因の1つは食生活の変化です。日本人は、昔は和食中心の食生活でしたが、近年は洋食中心の食生活へと変化してきています。特に牛肉や豚肉などの赤肉や、ハムやソーセージなどの加工肉の摂取が増えたこと、食物繊維の不足や脂肪分の過剰摂取などが大きな原因とされています。
主食も、昔は玄米などの食物繊維が多く消化に時間がかかるものでしたが、現在では精製された米や小麦粉を使ったパンなどが主流になってきています。食物繊維が不足することによって、腸内環境が乱れ大腸がんのリスクが増大してしまいます。
また、過度な飲酒や喫煙は発症のリスクを高めるとされています。特に飲酒はそのリスクが多くの文献でも指摘されているため、適量にとどめるのが望ましいと言えます。
他にも、遺伝との関連が高いとの指摘もあり、親族に大腸がんや胃がんなどのがんを患ったことがある人がいる場合には、がんになりやすい体質かもしれないので注意が必要です。
現状ではがんでない良性のポリープであっても将来的にがんになる可能性があるため、良性のポリープを指摘された場合には、注意して経過を見ていく必要あります。特に、家族性腺腫性ポリポーシスという、大腸に多数の良性ポリープができる病気があり、その疾患にかかると将来的にはがんになってしまうと言われているため注意が必要です。
さらに、肥満である人や運動不足である人は大腸がんの発症リスクが高いと言われています。他にも糖尿病を患っている人もリスクが高いとされています。これらは、乱れた生活習慣に起因するものであるため、大腸がんのリスクを減らすためには生活習慣の見直しをすることが重要であると言えます。
3. 大腸がんを予防するために
① 節度のある飲酒量にする
飲酒は大腸がんのリスクを高める大きな要因の1つと言われています。過度な飲酒は、大腸がんだけではなく、その他のがんやアルコール中毒などさまざまな病気の原因となり得ますので、飲酒は適量に抑えることが大切です。1日あたりのアルコール摂取量は、ビールだと大瓶1本、日本酒だと1合、ワインだとボトル1/3本、焼酎だと2/3合、ウイスキーやブランデーはダブル1杯分とされています。これ以上の飲酒は、過剰摂取になるので控えるようにしましょう。
② 禁煙をする
喫煙は大腸がんのリスクを高める要因の1つです。喫煙は大腸がんに限らず、肺がんや食道がんなどのその他のがんのリスク因子でもあります。喫煙に関しては百害あって一利なしということわざがあるように、よいことはほとんどありませんし、タバコを吸う人と吸わない人ではがんになるリスクは1.5倍程度高くなると言われていますので、なるべく禁煙をするようにしましょう。
また、タバコは吸っている本人だけではなく受動喫煙でもがんのリスクは高まるとされています。周囲の人をリスクにさらさないためにも禁煙が必要です。しかし、タバコには中毒性がありなかなか自力では辞めることができない人も多いと思います。そのような場合には、専門の禁煙外来を受診してみるようにしましょう。
③ 肥満を改善する
肥満も大腸がんのリスクを高める大きな要因の1つと言われています。肥満の判定は、BMI値でなされます。
BMI値=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
しかし、このBMI値は単純に、身長と体重から導き出される数値ですので、脂肪が多くて体重が重いのか、筋肉質で体重が重いのかまでは分かりません。体脂肪率が測定できる体重計で体重を測定して、自分が本当に肥満であるのかどうかを確認するようにしましょう。また、痩せすぎもよくないとされていますので、BMI値を男性は21~27、女性は21~25の範囲になるように体重管理をするとよいでしょう。
④ 適度な運動をする
運動をすることで大腸がんの発生リスクを低下させると言われています。また、運動は肥満の改善にも効果があります。その他にも心疾患など、さまざまな疾患のリスクを低下させることができると言われているため、適度な運動は積極的に行いましょう。
しかし、いきなり過度な運動をしても、身体を傷めたり継続することが難しくなってしまうため、はじめは軽いウォーキングから始めてみましょう。運動する時間が取りにくい方は、通勤方法を少しでも運動できる方法へと変更したり、上下階への移動をエレベーターから階段へ変更するなどの工夫をしてみるとよいでしょう。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準」では、18歳から64歳の人は、歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日行うことと、息がはずみ汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うことが推奨されています。65歳以上の高齢者は、強度を問わず身体活動を40分行うとよいとされていますので、意識的に運動を継続させましょう。
肥満の状態で、急な運動は足腰に負担がかかりすぎるという人には水泳もおすすめです。他にも健康に不安がある方は、ジムなどに通って専門のトレーナーの方に適切な運動強度の方法を教えてもらうのもよいでしょう。無理をして続かないよりも、無理のない範囲で毎日続けることの方が大切です。
⑤ バランスの良い食事を摂取する
大腸がんの発生原因の1つに食習慣の乱れがあります。洋風化の食事が一般化していて、それを急にすべて和食にするというのは難しいかもしれません。しかし、メニューを選ぶときに、お肉よりはお魚、パンよりはお米、献立の中に少しでも野菜を取り入れるなど、できる範囲の工夫をしていきましょう。特に、お肉や加工肉の食べすぎには注意が必要です。
野菜や魚を中心にした食生活をしている人は、野菜を全く食べない人よりも大腸がんのリスクが半分に抑えられているという意見もあります。他にもカルシウムやビタミンDも意識的に摂取すると良いとされています。カルシウムは、しらす干しやいわし、ししゃもなどの魚やチーズなどの乳製品などに多く含まれています。ビタミンDは、しらすやいわし、さけ、さんまなどの魚に多く含まれています。
また、腸内環境を整える食物繊維や乳酸菌入りの食材を積極的に摂取するようにしましょう。食物繊維は、腸内環境を整えて便通をよくしたり、コレステロールの吸収を抑えたりする役割があります。食物繊維は果物や野菜、豆類や海藻類、根菜類などに多く含まれています。近年では乳酸菌入りの飲料やヨーグルトなどが流通しているため、それらも積極的に摂取するようにしましょう。
ただし、これらを意識して逆に食事内容が偏るのはあまりよくありません。何か特定のものを食べたからと言って大腸がんにならないということではないですし、栄養素のほとんどはお互いに補助しあってその効果を発揮しています。そのため、バランスよくさまざまな食材を摂取するようにすることが望ましいです。
4. 大腸がんに関するまとめ
大腸がんとは、大腸の中にできる悪性の腫瘍のことで、そのできる部位によって治療方法や予後も変化してきます。大腸がんは、初期のころには自覚症状がなく、便に血が混ざったり、お通じの調子が悪くなったり、体重が減少したりとさまざまな身体症状が出現するころには、がんが進行してしまっていることもあります。
逆に早期で発見できた場合には治療法も身体に負担が少ない方法を選択することができ、完治も見込める疾患でもあります。そのため、早期で発見し早期に治療をすることが非常に大切になります。大腸がんは定期的に、便潜血の検査を受けるのがよいでしょう。
そして、大腸がんは発生のリスクを高める要因がいくつか明らかにされています。過度な飲酒や喫煙、肥満、運動不足、食生活の乱れなどがリスク要因とされています。大腸がんを予防するためにはこれらを改善していく必要があります。その中でも重要であるのが、バランスのよい食事を摂取することです。
近年は食生活の欧風化が進み、お肉が多く野菜が少ない食生活をしている人も多くいます。これらの食事は大腸がんの発生リスクを高めてしまいます。お肉よりはお魚を食べる、野菜を献立の中に取り入れる、食物繊維を多く含む食材を摂取する、乳酸菌を含む食事を食べて腸内環境を整えるなどの工夫をしましょう。
しかし、1人暮らしの方や高齢の方、忙しい仕事に追われている方などは、なかなか3食バランスの良い食事を摂取するのは難しいのではないでしょうか。そのような時には、宅配サービスのまごころ弁当を活用して、1食でもよいので栄養バランスが取れた食事を摂るようにしましょう。
まごころ弁当では、日替わりで栄養バランスの取れた献立のお弁当を召し上がっていただくことができますし、個人の飲み込む力に合わせた形態を変化させることもできます。バランスの取れた食事を摂取して、元気な大腸を手に入れて大腸がんを予防していきましょう。