血糖値のコントロールには適度な運動!夏に糖尿病が増悪する原因
作成日:2020年9月3日
糖尿病とは、血液中の血糖値が長期間にわたって高い状態が維持される病気のことです。この病気は、季節性のものではありませんが、夏になると糖尿病になったり、症状が増悪することがあります。今回は、糖尿病についてと、夏になると糖尿病が増悪する原因とその対処法について詳しく説明していきます。
目次
糖尿病とはどんな病気?
糖尿病とは、血糖値をコントロールする働きを持っているインスリンが十分に作用しないことによって、血液の中の糖が増えてしまう病気です。私たちは、食事を摂取し消化された先の腸で、栄養素の一部が糖になって血液の中へと吸収されます。糖は血液の流れにのって体中に運ばれて、臓器や組織のエネルギー源になります。
膵臓から出されるインスリンは、細胞まで運ばれてきた糖を細胞の中へと入れる役割をしています。そのため、インスリンが十分に働かないことによって、血糖を上手に細胞に取り込めなくなるため、血液中の血糖値が上昇してしまいます。
インスリンが十分に働かなくなる原因は、2種類あります。1つは、インスリンが分泌される大元の膵臓の機能が低下してインスリンを作れなくなってしまう状態です。もう1つは、インスリンは作られていても肥満などが原因によって十分な効果が得られなくなってしまう状態です。
また、糖尿病には、 1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。1型糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌がほとんどなくなってしまい血糖値が上昇した状態が続いてしまいます。1型糖尿病は、若年に多く生活習慣などは関係なく原因は不明とされています。2型糖尿病は、インスリンが分泌されにくくなったりインスリンの効果が少なくなったりすることで血糖値が高くなります。2型糖尿病は遺伝や生活習慣が原因でおこるとされています。
血糖が高い状態が続くと、喉が渇いて水をたくさん飲むようになり、その結果尿の回数が増えます。そして体重が減少することがあります。さらに血糖値が高い状態が続くと意識障害が出現したり、眼が見えなくなったり(網膜症)、腎臓の機能が低下したり(腎機能障害)、手足先のしびれ(神経障害)が出現したりします。
これらの網膜症、腎機能障害、神経障害といった糖尿病の合併症は、最悪の場合失明したり、透析が必要となったり、手足の切断が必要となってしまったりして、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまいます。合併症を発症しないためにも血糖のコントロールは重要となってきます。
夏になると糖尿病が増悪するのはなぜ?
1) 糖分を摂取しやすい
夏になると、たくさん汗をかくためその分水分補給をしなければなりません。熱中症予防のためには、単純に水分だけではなく塩分と糖分も同時に摂取する必要があります。その際、手軽に大量に飲んでしまうのがスポーツ飲料です。たしかに、スポーツ飲料には塩分と糖分とミネラルなどが含まれており、熱中症対策にはなります。
しかし、スポーツ飲料には大量の糖分が含まれているのです。汗をかいていないときに比べて、水分不足の時には一気に大量のスポーツ飲料を飲んでしまいがちで、それを常用してしまうと血糖値が上昇した状態が続いてしまいます。熱中症予防には、スポーツ飲料よりも経口補水液の方が適しています。それでも常用するのではなく、汗をかきすぎたと思ったときに摂取するようにしましょう。
2) 食生活が乱れやすい
夏バテの状態になると、食べやすい冷たいそうめんやうどんなどの炭水化物の主食ばかりを食べてしまいがちになります。炭水化物は、消化されると糖になるため、炭水化物ばかりを摂取すると糖が過剰に増えてしまいます。
また、飲酒の機会が増えることが多く、飲酒量も増えがちです。それに伴って、おつまみも多量に摂取してしまうことになります。アルコールを摂取すると血糖値のコントロールが悪くなると言われています。また、おつまみは塩分が多く含まれていたり入カロリーなものが多く、血糖値の上昇につながってしまいます。
3) 運動不足になりやすい
暑い夏になると、なかなか屋外で運動をする機会がなく、冷房の効いた部屋で運動をせずに過ごす方が多くなります。それによって筋力が低下したり、クーラー病などで体がだるくなり、よけいに運動をしなくなるという悪循環が生まれます。運動をすることによって身体の中の糖分がエネルギーに変換されて消費されます。運動をしない状態で糖を摂取し続けると高血糖の状態となってしまいます。
4) 逆に低血糖になってしまうことも
すでに糖尿病と診断されている方で、血糖降下剤やインスリン製剤を使用して薬物療法をしている方は、夏場に逆に低血糖となってしまうこともあります。例えば、夏バテで食欲がわかず普段と同じように食事がとれない場合に、普段通りに投薬してしまうと血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。
高血糖の状態が続くのもよくありませんが、低血糖の状態も意識障害が生じたり場合によっては命の危険が生じることもあります。夏場はこのように血糖値のコントロールが難しくなることが多くあります。
血糖値をコントロールするためには
1) 食習慣を整える
血糖値をコントロールするために重要なのは食事です。夏だからと言って、暴飲暴食をしたり、食事内容が偏ったりすると血糖値を一定に保つことは難しくなります。すでに糖尿病と診断されている方は、指導されている摂取カロリーをきちんと守ることが大切です。
また、現在は糖尿病と診断されていない方も、3食バランスのよい食事を摂取することが大切です。炭水化物に偏った食事を続けたり、食欲がないからと甘いものや塩辛い物を摂取し続けると高血糖となってしまいます。特に暑いからと、冷たいゼリーやアイスクリームなどをつい食べてしまいがちですが、これらには糖分が多量に含まれておりカロリーも高いです。
糖尿病の方は、絶対に間食をしてはいけないということはありませんが、どうしても甘いものを摂取したくなったときには、食事と同じタイミングで摂取するようにしたり、カロリーオフのものや糖質が少ないものを選択するようにしましょう。
また、夏になると夜が寝苦しくなってしまったり、休みの日が続いたりすることによって、生活リズムが狂ってしまうことがあります。これによって、食事の時間も定まらなくなると、血糖値を一定に保てなくなってしまいます。なるべく3食決まった時間に食事を摂取するようにしましょう。
他にも、夏場はついのどごしのよい麺類などの食事を摂取しがちです。しかし、あまりかまずに食べると食べすぎてしまったり、血糖値の急上昇を招いてしまいます。たくさん噛んでゆっくりと食べることによって、満腹感を感じやすく食べすぎを防ぎ、血糖値をなだらかに上昇させることができます。
2) 適度な運動をする
夏場に、過度な運動をすると熱中症になってしまう可能性があるため、特に日が出ている日中に積極的に運動をするのは避けましょう。日光が強くない早朝や、日が落ちてからの夕方などに軽くウォーキングをしたり、水泳を行ったりと、熱中症を予防しながらの適度な運動を工夫して行うようにしましょう。
また、室内でストレッチやヨガなどをするのもおすすめです。これらの運動をする際には、こまめに水分摂取をするようにしましょう。その際には、スポーツ飲料を過剰摂取しないように注意する必要があります。
3) 薬の扱いに注意する
夏は血糖値のコントロールが難しくなります。いつも通りに食事を摂取していないのに、いつも通りに薬剤を使用すると低血糖になってしまったり、逆に血糖を下げることができない状態が続いてしまったりします。夏になって、食欲が落ちてしまったり、逆に飲み会が増えて外食することが増えてしまったりしたときには、必ず医療機関へ相談するようにしましょう。
専門医の指示がないままに、自己判断でインスリンや血糖降下剤の量を増減するのは、良好な血糖コントロールを目指すうえでやってはいけないことです。
また、夏風邪やウイルス性腸炎など夏はさまざまな病気にかかりやすくなります。病気にかかったときに食事を摂取できないからとインスリンを中断することは非常に危険です。特に、1型糖尿病の方や2型糖尿病でインスリンの分泌自体が少ないとされている人は中断すると、高血糖状態になってしまい危険な状態に陥ってしまうことがあります。必ず、医療機関を受診して指示を仰ぐようにしましょう。
インスリン製剤は30度以上の高温下では、中身が変質してしまう可能性があるため、30度以下の環境で保管するようにしましょう。
4) 記録をつける
どのような食事を摂取したのかをおおまかでもよいので記録をつける習慣を身につけましょう。記録を付けると、客観的に食事内容を評価することができ、栄養素が偏りすぎていないかやカロリーを摂取しすぎていないかを判断することができます。
また、糖尿病と診断されていて血糖降下剤やインスリン注射を投与している方は血糖値も記録していくようにしましょう。血糖値は、食事量や内容が血糖コントロールのために正しいかどうかや、運動量が適切であるかを判断する材料になります。医療機関へ受診した際の、薬の投与量を検討する指標にもなるため重要です。
自己血糖測定を普段していない人も、毎日の体重測定はするようにしましょう。糖尿病と肥満には密接な関係があります。肥満になると、インスリンの効きにくさが増大してしまい、血糖値のコントロールが難しくなってしまいます。
また、糖尿病を改善するためには、バランスのよい食事と適度な運動は欠かすことができません。この食事と運動は、肥満改善にも効果的であるため、毎日体重測定をして肥満を解消していきましょう。逆に、それほど食事制限や運動をしていないのに体重減少がすすむ場合には、糖尿病が進行している可能性があるため注意が必要となります。
夏に血糖をコントロールすべきその他の理由
糖尿病の方や、高血糖の状態の方は、夏にさまざまな病気を併発しやすいと言われています。高血糖の状態では、血管や神経が損傷して汗をかきにくくなるとされています。汗をかけないということは、上がった体温を下げることができなくなるため、熱中症にかかりやすくなります。また、血糖が高いと腎臓が糖を多量の水分と一緒に外へ排出してしまうため、尿量が増えて脱水になりやすくなるため、熱中症のリスクが高まります。
他にも糖尿病の方は、高血糖に加えて高脂血症や動脈硬化の状態である方が多いです。そのような方が、汗をたくさんかいて脱水状態になると、血液がドロドロの状態となってしまい、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。特に、夏場は日中だけではなく、夜間寝ている間にも大量の汗をかいていることが多く、気付かないうちに脱水状態になっていることがあります。
汗をかいたと自覚していなくても、こまめに水分摂取をしたり、夜寝る前に水分を摂取して脱水を予防するようにしましょう。
夏の糖尿病に関するまとめ
夏は、糖分の過剰摂取や食習慣の乱れなどの理由により血糖値のコントロールが難しくなります。もともと糖尿病と診断されていた人だけではなく、糖尿病ではなかった人も高血糖状態となってしまうことがあります。高血糖の状態は、網膜症や腎機能障害、神経障害などの糖尿病特有の合併症以外にも、脳梗塞や心筋梗塞、熱中症などの危険な疾患の原因になり得ます。
そのため、夏は特に血糖を一定に保つように工夫が必要となります。血糖をコントロールするためには、バランスの良い食事をとること、適度な運動をすること、指示通りの薬剤を投与することが大切になってきます。特に、食事は夏になると乱れやすく、3食規則正しくバランスの良い食事を摂取するのは難しくなる人も多いです。
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