乳児は消化管アレルギーにも注意!食物アレルギーはなぜ起こるのか
作成日:2020年10月6日
赤ちゃんから成人まで、現在では3人に1人が何らかのアレルギーがあると言われています。その中でも、食物アレルギーは、食べるものが制限されたり時には命に関わるほど重篤な症状が現れたりすることがあり注意が必要です。今回は、食物アレルギーについて詳しく説明していきます。
1. 食物アレルギーについて
食物アレルギーとは、口から摂取した食べ物が原因で、免疫反応が働いてしまい、皮膚症状や下痢、咳や呼吸困難などの症状がおこることを言います。私たちの身体には、免疫機能が備わっており、何らかの異物が身体の中に侵入した際には、その異物を身体の外へと排出するためにさまざまな反応が現れます。
例えば、風邪のウイルスや細菌などが身体の中に入ってきたときには、攻撃して体の外へ排出し身体を守ろうとする働きがおこります。これを免疫反応と言います。この免疫反応が、ある特定の食物に対して過剰反応を示すのが食物アレルギーです。
免疫反応には4種類ありますが、食物アレルギーのほとんどは、即時型アレルギー反応という免疫反応です。ある特定の食べ物を異物と判断して、免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体を作ってしまい、その抗体が様々な器官の細胞に作用してアレルギー反応が現れます。即時型アレルギー反応は、食物を摂取した直後からおよそ2時間以内でアレルギー反応が現れます。
その他に、新生児の時に牛乳が原因で発症する、新生児・乳児消化管アレルギーという、嘔吐や下痢などの消化器症状が出現するアレルギーがあります。
また、乳児期の食物アレルギーに関連したアトピー性皮膚炎もあります。鶏卵や牛乳、小麦、大豆などが主な原因となって、アトピー性皮膚炎になりますが、成長とともに症状は改善されることがほとんどです。
さらに、特殊型アレルギーというものがあり、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと口腔アレルギー症候群に分けられます。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、特定の食べ物を食べた後に運動をすることによってアナフィラキシーが起こる病気で、運動をしなければ症状が出現しないので、アレルゲンを特定するのが難しいことがあります。
口腔アレルギー症候群は、ある特定の花粉と特定の野菜や果物とが反応することで症状が出現します。花粉症をもっている人が果物や野菜を食べると口の中に違和感が出現したり腫れたりする症状が出現するものです。特殊型アレルギーは頻度は低いといわれています。
2. アレルゲン食品について
食物アレルギーは小児期に多いと言われており、1番多いアレルゲンは卵とされています。その次に、牛乳、大豆、小麦米と続き、これらの5つは五大アレルゲンと呼ばれています。しかし、これは年齢と共に変化していき、中学生くらいになると、海老やカニなどの甲殻類や魚類がアレルゲンである人が増えていきます。
食物アレルギーは、大部分は乳児期に発症しますが、1歳頃にアレルギーと診断された人でも9割程度は小学校入学前にはアレルギー症状は出現しないようになっていると言われています。小児期に多い原因としては、子どもは消化機能が未熟であるため、アレルゲンを十分に消化することができないことと、免疫機能も未熟であることが考えられます。
そのため、身体が成長するとともにアレルギーは治ることが多いです。しかし、残りの1割の人は食物アレルギーは治ることがなく、一生そのアレルゲンを口にすることはできません。
成人になってから食物アレルギーになった人では、卵や牛乳など小児に特徴的であったアレルゲンではなく、魚介類やエビ・カニなどの甲殻類、果物がアレルゲンであることが多いです。これらのアレルゲンは、アレルゲンに対する耐性を得ることが難しいため治ることは難しいと言われています。
3. 食物アレルギーによる症状
食物アレルギーによって、さまざまな症状が出現します。摂取してしまったアレルゲンの量や年齢、その日の体調などによって症状の出現の仕方が異なります。
① 皮膚粘膜症状
皮膚症状:かゆみ、じんましん、発赤、浮腫
結膜症状:結膜充血、かゆみ、流涙、眼瞼浮腫
② 消化器症状
吐き気や嘔吐、腹痛、下痢など
③ 上気道症状
口腔粘膜や咽頭のかゆみ、違和感、腫れ、咽頭喉頭の浮腫、くしゃみ、鼻水、鼻づまり
④ 下気道症状
咳、喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)、呼吸困難
⑤全身症状
ショック症状(頻脈、血圧低下、意識障害など)
小児期には、皮膚粘膜症状が出現することが多いとされています。特に乳児は、身体が赤くなったり、湿疹が出現するといった軽度の皮膚症状であることが多いですが、幼児期には、じんましんなどの皮膚粘膜症状だけではなく、消化器症状や呼吸器症状も出現していきます。
4. アナフィラキシーショック
即時型アレルギーの最も重症な症状が、アナフィラキシーショックです。アナフィラキシーとは、アレルギー症状が複数の臓器に強く症状が現れることが特徴で、皮膚症状だけではなく、循環器や呼吸器、消化器など全身に症状が現れることを言います。さらに症状が進行して、血圧が低下したり、呼吸困難や意識障害などに進展していくとショック状態となり、それをアナフィラキシーショックと言います。
アナフィラキシーショックは、アレルゲンを摂取して短時間で激しい症状が出現するため、なるべく早期に適切な対応をする必要があります。対応が遅れると命に関わる危険な状態と言えます。
5. 食物アレルギーへの対策
① アレルゲンを知る
食物アレルギーを対策するときにまず大切なことは、アレルゲンが何かを知ることです。食物アレルギーの代表的な食材は卵や牛乳ですが、アレルギー症状を引き起こす原因となるアレルゲンは、個人によって異なります。また、アレルゲンが複数ある人もいます。
食事のあとに、アレルギー症状が出現したら病院へ相談するようにしましょう。食事の日記をつけて何を、いつ、どれくらいの量摂取したのか、どのような症状が出現したのかをメモしておくと、病院での診察や治療に役立ちます。
食物アレルギーが疑われる場合、血液検査をしてアレルゲンの特定をします。即時型アレルギーの場合、IgE抗体が様々な食物に対してどの程度あるのかを調べ、疑わしいアレルゲンを絞り込みます。他にも皮膚にアレルゲンの液を垂らして小さな傷をつけて時間をおき、皮膚の状態の変化をみてアレルゲンの判定する検査を行います。
また、アレルゲンとして疑わしい食材を完全除去してみて、アレルギー症状の有無を調べる食物除去試験や、アレルゲンとして疑わしい食材を食べてみて、症状が出現するかどうかを調べる食物経口負荷試験もあります。
② アレルゲンにそなえる
食物アレルギーは、じんましんなどの軽い症状から、命に関わるアナフィラキシーショックまで症状はさまざまです。普段じんましんが出るだけだからと言って、アナフィラキシーショックを起こさないとはかぎりません。
アレルゲンが特定されたら、原因となるアレルゲンの食材を摂取しない食物除去を行うようにしましょう。しかし、特に乳幼児に多いとされている卵や牛乳、また主食である米や小麦などは完全除去してしまうと栄養が不足してしまったり健康に影響が出てしまう場合があります。専門医と相談しながら、食物除去は必要最低限にするようにしましょう。
また、加工食品の中には、実はアレルゲンとなる食材が含まれていたということはよくあります。また、食品自体には含まれていなくても、同じ製造ラインで使用していただけでアレルギー症状が出現することもあります。
アナフィラキシーショックを引き起こしやすいとされている、卵、入、小麦、えび、かに、そば、落花生の7品目からなる特定原材料は、食品に表示するように食品衛生法で定められています。また、その7品目以外にも、アーモンドやあわび、いか、いくらなどの21品目が表示を推奨されています。そのため、加工食品を購入するときには、食品表示をしっかりと見て、摂取してもよいかを判断する必要があります。
③ アレルギーの治療をする
アレルギーを根本的に治療するためには、経口免疫療法という治療法があります。この経口免疫療法とは、ごく少量ずつアレルゲンを摂取して、どの量でアレルギー症状が出現するかを見極める方法です。そして、アレルギー症状が出現する量がわかったら、アレルギー症状が出ないぎりぎりの量まで少量ずつ食べる量を増やしていき、アレルゲンへの耐性を身につけさせることが目的です。
しかし、この経口免疫療法には、アレルギー症状の出現を誘発してしまう可能性や、アナフィラキシーショックを誘発する可能性があること、日々アレルゲンを摂取することで精神的ストレスがあることなどのデメリットがあります。しかし、アレルゲンが複数ある方などは、それらの食材を完全に除去して食事を摂取するとなると栄養面や精神面でも問題が起きやすくなります。
経口免疫療法を行うことで、アレルゲンをどの程度までなら食べることができるのかを把握することができ、食事制限を最小限に抑えることができるためメリットも大きいと言えます。
経口免疫療法を行う時には、必ず専門医の指示に従って行うようにしましょう。個人が自己判断でアレルゲンの耐性をつけようと、アレルゲンの食品を摂取するのは非常に危険ですので控えるようにしましょう。
他にも減感作療法と言って、アレルゲンを注射で徐々に身体の中に入れて慣らしていき、過剰なアレルギー反応を抑える治療法もあります。この治療法も、アレルギー反応が出現する可能性があり、危険を伴いますので必ず専門医の指示に従うようにしましょう。
④ アナフィラキシーショックの対応を知っておく
食物アレルギーで1番怖いのはアナフィラキシーショックの状態に陥ることです。血圧低下や意識消失などのショック症状や、のどが締め付けられる感じや声がでないなどの、のど付近の違和感、呼吸困難などのアナフィラキシー症状には注意が必要です。初めてアナフィラキシー症状が出現したときには、医療機関を必ず受診するようにしましょう。症状が進行し、呼吸ができなくなったり意識を消失してしまうと危険な状態となってしまいます。
これまでに強いアナフィラキシー症状の経験がある場合には、アドレナリンを自己注射することで、ひどいアナフィラキシーショックを防ぐことができます。過去にアナフィラキシーショックの経験がある方は、専門医を受診して常にアドレナリン自己注射薬を持ち歩くようにしましょう。緊急時に冷静に使用できるように普段から使用方法をしっかりと理解しておく必要があります。
また、急激に症状が増悪してしまったとき用に身近な人にも使用方法を説明しておくと良いでしょう。
6. 食物アレルギーに関するまとめ
食物アレルギーは近年増加傾向と言われており、そのほとんどが乳幼児期に発症します。乳幼児期は消化器や免疫機能が未熟なためといわれており、成長とともにアレルギーは改善されることが多いとされています。しかし、成長してもアレルギー症状が続いていたり、大人になってから初めて発症した場合には、アレルギーが改善する可能性は低いといわれています。
アレルギーとは、身体の免疫反応がある特定の食材に対して過剰に反応していることで、皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状など様々な症状が出現します。その中でも、最も重症であるのがアナフィラキシー症状で、素早い対応が求められます。
食物アレルギーの方は、アレルゲンを特定すること、アレルゲンの摂取を最小限にすること、アレルギー症状が出現したときの対応を知っておくことなどをする必要があります。アレルゲンを完全除去すると栄養面で問題となることがあるため、専門医に相談して経口免疫療法を行い、アレルゲンをどの程度摂取してもよいのかを知るのも一つの治療法です。
アレルゲンの摂取を控えるとなると、栄養を他で補う必要があります。レルゲンを除去して食事を毎日作るのはとても労力が必要となります。まごころ弁当では、日替わりで栄養バランスの取れた食事を宅配サービスでご利用いただくことができます。さらに、店舗によってアレルギー食の対応が可能な店舗もございますので、アレルギー対応食をご希望の方は、対応の可否について各店舗へのお問い合わせをぜひしてみてください。