高血圧が原因で起こる病気について
作成日:2021年2月17日
健康診断などに行くと、血圧を測定されることが多いと思います。漠然と高血圧はよくないと知っている人は多いかもしれませんが、なぜ高血圧はよくないのか理由までは詳しくは分からないという人もいるのではないでしょうか?今回は、高血圧が原因で起こる病気について詳しく説明していきます。
目次
高血圧とはどんな病気?
私たちの身体は、心臓がポンプのように収縮と拡張を繰り返して血管に圧力をかけることによって、動脈の中を通って全身に血液を届けています。血圧は、心臓から血液が送り出されるときに、動脈の血管を押す力のことです。
血圧を左右する要因としては、心臓が1回血液を押し出すときの血液量や血管の弾力性、血管の抵抗力や血液の粘度などが挙げられます。そのため、血管がボロボロであったり血液がドロドロであったりすると血圧が上がりやすくなります。
血圧には、上や下と呼ばれる数値がありますが、一般的に上と呼ばれているのが最高血圧で、心臓が血液を送り出すときに収縮して血管に最も強い圧がかかっているときの血圧のことで、収縮期血圧とも呼ばれます。下と呼ばれているのは最低血圧で、心臓が拡張して全身に送り出した血液を心臓に戻すときの血圧のことで拡張期血圧とも呼ばれます。高血圧は、最高血圧が140㎜Hg以上または、最低血圧が90㎜Hg以上、もしくはその両方である場合に疑われます。
血圧は、いつも同じ値ではなく、運動をした後や、緊張したとき、強いストレスを感じたときなどさまざまな環境によって大きく変動します。病院や白衣を着た人の前だと緊張して血圧が上がってしまう人もいます。一時的に血圧が上昇していても、日常的に血圧が高い状態でなければ特に問題はありません。そのため、高血圧が疑われる人は、毎日同じ時間に同じ条件で血圧を測定して、本来の血圧の変動を知る必要があります。
なぜ高血圧ではよくないのか
高血圧は、主に乱れた食生活や運動不足、不規則な生活リズムなどの生活習慣が原因でおこります。高血圧自体は特別に自覚症状があるわけではなく、何か怖い病気というわけではありません。
しかし、高血圧の状態が続くことや、高血圧の原因となっている生活習慣を続けることによって、さまざまな怖い病気にかかるリスクが上がってしまいます。中には命にかかわるものや、後々リハビリが必要になるものまであります。そのため、血圧はしっかりとコントロールして、生活習慣を改善していき、さまざまな病気を予防する必要があります。
動脈硬化
高血圧は、長期間続くことによって動脈硬化と呼ばれる状態になります。動脈硬化とは、動脈の内側の壁が厚く硬くなる状態で、弾力が失われて血管がボロボロになり、血液の通り道が狭くなったり、血栓が生じたりして詰まりやすくなったり破れやすくなったりします。このような状態になることによって、脳血管障害や虚血性心疾患などが引き起こされてしまいます。
脳血管障害
高血圧が原因でおこる病気の1つとして、脳血管障害があります。脳血管障害には、脳梗塞(脳の中の血管が詰まること)と脳出血、くも膜下出血があり、全て高血圧が最大の原因と言われています。
脳梗塞になると、詰まった血管の先の部分へは血液が届かなくなるため、脳の細胞が死んでしまいます。そのため、詰まった部位によっては体が動かなくなり麻痺がおこったり、言葉を話せなくなったり、意識を失ってしまったりすることもあります。
脳出血の場合は、脳の中で出血して血液の塊ができてしまい、それが脳を圧迫してさまざまな症状を引き起こします。特に脳の深い部分にある生きる上で重要な場所で出血してしまうと、麻痺や言語障害などの後遺症が残るだけでなく、命の危険な状態になることもあります。
くも膜下出血は、くも膜と呼ばれる脳を守るための膜と脳との間にある血管が切れて出血する病態です。多くの場合には、脳の血管にできたこぶ(動脈瘤:どうみゃくりゅう)が破裂することによって起こります。
この脳動脈瘤は原因不明のこともありますが、動脈硬化が原因でできることが多いと言われています。くも膜下出血は、激しい頭痛と意識障害が突然起こり、突然死の原因にもなる怖い病気です。約30%の人は治療によって社会復帰できますが、約20%の人には何らかの後遺症が残り、約50%の人は命を落としてしまうと言われています。
脳血管障害の症状は、頭痛やめまい、うまく話せない、手足のしびれや麻痺などが挙げられます。片方の手足が動かなくなったり、顔の半分が動かなくなったり、ものが上手に飲み込めなくなったりすることで気付くこともあります。
虚血性心疾患
虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)も高血圧が原因で起こる病気の1つです。心臓には、心臓自体に酸素や栄養を送っている冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれる血管が張り巡らされています。この冠動脈が高血圧や動脈硬化が原因で、狭くなってしまうことで起こります。
虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。狭心症は、動脈硬化や血栓(詰まること)によって一時的に心臓の筋肉が酸素不足になる状態で、胸や背中、腕などに痛みや圧迫感を感じます。安静にすることや、ニトログリセリンという血管を広げる薬を投与することによって、血液不足が解消されて痛みが取れます。
心筋梗塞は、狭心症のように一過性ではなく完全に冠動脈がつまってしまい、心臓の筋肉に酸素と栄養が届かなくなって心臓の筋肉が死んでしまい心臓の動きが悪くなってしまう病気です。非常に強い胸の痛みや呼吸困難感、吐き気などの症状が突然現れます。心筋梗塞は早期に対処をしないと、心不全や不整脈が引き起こされ最悪の場合には命を落としてしまうこともある怖い病気です。
慢性腎臓病
腎臓は、身体の中の不要な老廃物や余分な水分、塩分を体の外へ排出する役割があります。腎臓で血液をろ過して、身体に必要なものと不要なものを選別しているのですが、このろ過機能を円滑に行うために全身の血圧を一定に保つ役割も担っています。そのため、高血圧の状態が続くと腎臓に負担がかかってしまいます。また、高血圧の状態が続くことによって腎臓の血管にも動脈硬化が起こります。血管が狭くなることによって腎臓へと流れる血液が減ってしまい腎臓への負担が増大します。
逆に腎臓の機能が落ちると、余分な水分や塩分を体の外へと排出する力も弱まるため、高血圧の要因にもなります。高血圧は腎臓病の原因になり、同時に腎臓病は高血圧の原因にもなりうるので、高血圧と腎機能の低下はお互いに悪い影響を及ぼし合って悪循環となってしまいます。
慢性腎臓病は、腎臓の機能が正常の60%以下へ低下している状態か、蛋白尿などの腎障害が3か月以上続いている状態のことを言います。慢性腎臓病は、身体のむくみや血尿、たんぱく尿、倦怠感などさまざまな症状が出現します。腎臓の機能は1度低下するともとに戻ることはなく、徐々に低下して最終的に末期の腎不全状態になると透析治療や腎移植が必要な状態となってしまいます。
高血圧の改善方法
1) 食生活の改善
高血圧は、食生活が密接に関係しています。特に塩分の摂りすぎは高血圧の大きな要因になっています。高血圧と診断されている人は、1日の食塩を6g未満に制限することが推奨されています。日常的な食事で塩分を制限するためには、漬物や干物、練り製品、ハムやソーセージなどの肉加工品の摂取を控えることが大切です。また、調味料は減塩のものを選び、調理をするときには計量しながら調理をするようにしましょう。
他にも、汁物や麺類を食べるときには具だけを食べるようにして汁を飲み干さないようにしたり、カップラーメンなどのインスタント食品や外食だらけの食生活にならないように気を付ける必要があります。
また、カリウムにはナトリウムを尿の中に排出する働きがあるため、カリウムを多く含む新鮮な野菜や海藻類を積極的に摂取することもおすすめです。他にもカルシウムやマグネシウムには、適量摂取することで血圧を下げる効果があると言われているので、カルシウムやマグネシウムを豊富に含む乳製品や胚芽米などを積極的に摂取するのもよいでしょう。
過剰摂取が血圧に影響を及ぼすものとして、塩分だけでなくアルコールも挙げられます。アルコールはそのものにも血圧を上昇させる働きがありますが、アルコールを飲むときについ塩分が多いおつまみを食べてしまいがちになるので注意が必要です。アルコールの1日の適正摂取量は、男性で20ml~30ml以下、女性で10~20ml以下と言われています。これは日本酒だと1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ワイン2杯程度と言われています。
2) 適正な体重を保つ
食習慣の改善ともつながりますが、適正な体重を保つことが重要です。肥満は高血圧の原因となるだけでなく、糖尿病や脂質異常症、高尿酸血症などさまざまな病気の原因になります。
肥満の原因は、食べすぎと運動不足であるため、まずは摂取エネルギーを抑えることが大切です。ただし、やりすぎたダイエットはリバウンドの原因になるため、自分にとって適正なエネルギー摂取量を把握して長期的にみて、BMI(ボディマス指数:体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数)25.0未満の状態を維持できるようにしましょう。食事制限をすることで塩分摂取量も減らすことができます。
3) 運動習慣を身に着ける
高血圧などの生活習慣病の予防や治療のためには、ウォーキングや軽いランニングなどの持続的な有酸素運動が推奨されています。あまり激しい運動をしてしまうと、血圧が急上昇して合併症を引き起こす可能性があるため、運動の強さはややきついと感じる程度でとどめる必要があります。
全く運動習慣がない方は、まずは通勤方法を徒歩に変更したり、掃除や洗濯などを積極的に行って日常生活動作を増やすところから始めてみるとよいでしょう。運動の内容もストレッチ運動から徐々にウォーキングやジョギングなどへと変更していき、運動時間も1日15分程度から徐々に延ばして毎日30分程度の運動を行うようにしましょう。無理なく続けることが大切です。
4) 降圧薬を内服する
食習慣や運動習慣を改善しても、血圧が下がらない場合には降圧薬を内服して治療を行います。血圧を下げる薬にはたくさんの種類があり、薬によって飲み合わせも異なるので、必ず医師や薬剤師の指示通りに内服を継続する必要があります。飲み始めて、血圧が低下してきたため自己判断で内服を中断するのはよくありません。疑問がある場合や血圧が下がりすぎて心配があるときなどには必ず医師へと相談する必要があります。
降圧薬を内服しているからと生活習慣は変更しなくてもよいかというとそうではなく、降圧薬による薬物療法はあくまでも生活習慣を改善するという大前提の下での治療となります。まずは生活習慣の改善を試みて、それを継続することが大切になります。
『高血圧』のまとめ
高血圧という言葉はよく聞くけれど、なぜ高血圧の状態がよくないのかは知らないという人もいたのではないでしょうか。高血圧は、それ自体には大きな自覚症状はありませんが、脳血管障害や心疾患、腎臓病などのさまざまな病気の原因となると言われています。これらの病気は、後遺症が残ったり、生活の質を下げてしまったり、時には命の危機的状況に陥ることもあります。そのため、これらの病気を発症させないために、血圧の管理が非常に重要になります。
血圧の管理のためには、食生活の改善、運動習慣の改善、内服管理が大切です。特に食事は、塩分を制限したり摂取カロリーを制限したりとさまざまな制限が必要になります。忙しい毎日の中で、3食塩分摂取量を計算しながらバランスの良い食事を作るのはなかなか難しいことかもしれません。
まごころ弁当では、毎日日替わりで栄養バランスの取れたお弁当を届けてもらうことができます。塩分制限食やカロリー計算がされた食事、腎臓の機能が低下している人にはたんぱく質の制限食まで選択していただくことができます。また、ご高齢の方で食事を飲み込みにくくなっている方には、その方に合った食事の形態を選択していただき誤嚥(ごえん:誤って気管へと食物が入ってしまうこと)を防止することもできます。
さまざまな怖い合併症の原因となる高血圧を予防するために、まごころ弁当を活用して1日1食でもさまざまな食材を使ったバランスの良い食事を食べて、健康寿命を延ばす食習慣づくりをしてみてはいかがでしょうか?