3大栄養素の役割について
作成日:2021年2月17日
私たちは生きていく上で、食事を欠かすことはできません。食事から栄養を摂取して、生きていくために必要なエネルギーを作り出したり、身体の調子を整えたりしています。今回はさまざまな栄養素の中でも、3大栄養素と呼ばれる栄養素について詳しく説明していきます。
3大栄養素:たんぱく質
1)たんぱく質とは
人間の体の15~20%はたんぱく質でできています。約60%は水分と言われていますので、水分を除くと体の半分はたんぱく質で構成されていると言ってもよいでしょう。たんぱく質は、筋肉や肌、髪の毛、爪、身体のさまざまな臓器、身体の中で生成されるホルモンや酵素、免疫物質などを構成しており、私たちの体には欠かすことができません。
たんぱく質は体の中で合成と分解が繰り返されており、古くなった部分は分解されて体の外へ排出されて、食事から摂取したたんぱく質や身体の中にあるアミノ酸を合成して常に新しい状態の身体を作り上げています。
また、たんぱく質は体を構成していると同時にエネルギー源でもあります。たんぱく質1gあたり4kcalのエネルギーを作り出すことができます。エネルギーを作り出すとき、食事から摂取した炭水化物が優先的に使用されますが、炭水化物が不足してしまっている場合には、身体の中のたんぱく質が分解されて使用されてしまうこともあります。
たんぱく質は20種類のアミノ酸が複数結合した化合物で、20種類のアミノ酸のうち、11種類は体の中で作り出すことができますが、残りの9種類は体の中で作ることができません。この9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、食事から摂取する必要があります。身体の中には、約10万種類ものたんぱく質が存在していて、この20種類のアミノ酸がさまざまな形で結合して成り立っています。
2)たんぱく質の消化、吸収
たんぱく質が口から摂取された場合、胃で胃酸と消化酵素であるペプシンによって大まかに分解されます。その後、消化管を通過する中でさまざまな酵素によって最終的にアミノ酸に分解されて、小腸の粘膜に吸収されます。吸収されたアミノ酸は、必要としている体中の様々な部位へと運ばれ、再度多種多様なたんぱく質へと合成され、筋肉になったり、皮膚になったり、臓器になったりしています。
3)たんぱく質を多く含む食材
たんぱく質が多く含まれる食材として代表的なのは、肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品などが挙げられます。しかし、ただたんぱく質を食べればよいというわけではなく、質のよいたんぱく質を摂取することが重要であると考えられています。良質なたんぱく質と言われているのが、必須アミノ酸をバランスよく含んでいるものです。
9つある必須アミノ酸は、どれか1つでも不足していると残りの8つがどれだけ多く含まれていてもあまり意味をなさないと言われています。必須アミノ酸がどれくらいの割合でバランスよく含まれているかを示している数値がアミノ酸スコアと呼ばれるもので、アミノ酸スコアが高い食品ほど良質なたんぱく質と言えます。
以下の表に主な食材のアミノ酸スコアについてまとめてみました。(参考文献:「日本食品標準成分表2015年(七訂)アミノ酸成分表」)
このアミノ酸スコアの高い良質なたんぱく質を摂取することによって、健康的な身体を作ることができます。
スコア100 | 99~90 | 89~70 | 69~60 | 59以下 |
乳製品・卵 | ||||
・牛乳 ・ヨーグルト ・卵 ・生クリーム | ・チーズ:92 | |||
肉類 | ||||
・鶏肉 ・豚肉 ・馬肉 ・ロースハム | ・ベーコン:95 | |||
魚介類 | ||||
・あじ ・あなご ・いわし ・かつお ・かれい ・さけ ・たら ・ぶり ・かまぼこ | ・うに:82 ・はまぐり:81 ・ホタテ:71 | ・あわび:68 | ||
米・穀類 | ||||
・精白米:65 ・玄米:68 ・ビーフン:62 | ・小麦粉:44 ・食パン:44 ・素麺:41 ・うどん:41 ・コーンフレーク:16 | |||
ナッツ類 | ||||
・栗:64 ・落花生:62 | ・アーモンド:50 ・ごま:50 | |||
豆類 | ||||
・枝豆:92 ・おから:91 | ・豆乳:86 ・大豆:86 ・油揚げ:77 | ・醤油:22 | ||
野菜 | ||||
・ブロッコリー:80 ・にら:77 | ・かぼちゃ:68 ・アスパラ:68 | ・にんじん:55 |
3大栄養素:炭水化物
炭水化物とは、生きて身体を維持する上で重要なエネルギー源になる栄養素です。炭水化物は、消化・吸収できる「糖質」と消化できない「食物繊維」の総称です。糖質はさらに複数の糖類の種類へと分類されます。糖質は消化されてエネルギー源になりますが、食物繊維は消化されないためほとんどエネルギー源にならず血糖値を上げることもありません。
1)炭水化物の種類
炭水化物はブドウ糖や果糖などの単糖で構成されていて、この単糖の数によってさまざまな種類に分類されます。
糖の種類 | 主な糖 | 含まれる食品 |
単糖類(単糖が1つ) | ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど | 果物、お菓子、ジュースなど |
二糖類(単糖が2つで構成) | ショ糖(砂糖)、乳糖など | 砂糖、牛乳など |
少糖類 | オリゴ糖 | オリゴ糖 |
多糖類 | でんぷん、グリコーゲンなど | お米、パン、小麦粉など |
糖アルコール | キシリトールなど | 加工食品など |
食物繊維は、水に溶けない不要性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分けられます。食物繊維には、お腹の調子を整えたり、脂質や糖、ナトリウムを吸着し排出する手助けをする役割があります。特に水溶性食物繊維は、水を含んで消化管の中で膨らむ性質があるので空腹感を抑制して食べすぎを予防する効果があるとされています。そのため、炭水化物の中でも食物繊維は健康によく積極的に摂りたい栄養素です。
2)炭水化物の働き
これらの炭水化物のうち、ショ糖やでんぷんなどは、身体の中で分解されて1gあたり約4kcalのエネルギーを作り出します。簡単に消化吸収されやすいので、たんぱく質や脂質よりも優先的にエネルギー源として利用されます。通常は、ブドウ糖しかエネルギー源として利用できない脳や神経組織、赤血球、腎尿細管などさまざまな臓器にブドウ糖を供給する役割を果たしています。
生きていくうえで欠かすことができない栄養素ですが、過剰に摂取するとエネルギーとして消費されなかった糖質は中性脂肪として身体に蓄積されて、肥満や生活習慣病の原因となります。また、過剰摂取は血糖値の上昇へとつながって、糖尿病の原因にもなります。特に、でんぷんなどの多糖類は分解されるまでに時間がかかるので血糖値は緩やかに上昇しますが、単糖類や二糖類などはすぐにブドウ糖へと分解されてしまうので、血糖値が急上昇しやすいと言われています。
血糖値は急上昇すると、上がりすぎた血糖を下げようとインスリン(血糖値を一定に保つ働きがあるホルモン)が大量に分泌されてしまいます。インスリンには、エネルギーを体にため込む性質があるため、余ったブドウ糖が中性脂肪へと合成されてしまうことにつながります。
ただし、注意が必要なのは、健康のために単純に炭水化物を制限すればよいということではありません。
炭水化物は不足すると、疲れやすくなったり集中力が続かなかったりします。また、人にとっては重要なエネルギー源になるので、炭水化物が不足することによってエネルギー不足になってしまいます。エネルギーが不足すると、身体の中の肝臓や筋肉に蓄えられたたんぱく質を分解して補おうとしてしまい、健康を損ねてしまうことにつながります。
健康のためには、適量の炭水化物を摂取することが重要です。炭水化物は、食事摂取基準で目標値が定められていて、男女ともに総エネルギー摂取量に占めるエネルギー比率は50~60%とされています。(参考文献:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)
3)低GI食品とは
炭水化物は、主に主食に多く含まれています。しかし、どのような食品でも摂取してよいかというとそうではなく、できれば食品を食べたときに血糖値が上がりにくいものを選ぶとよりよいとされています。
GI(グリセミック・インデックス)とは、食品を食べた時に、血糖値の上がり具合を示す指標で、消化が良くて血糖値が上がりやすい食品ほどGI値が高く、血糖値の上昇が緩やかなものほどGI値が低いとされています。
GI値が高めの食品 | GI値が低めの食品 |
ごはん(精白米)、おかゆ、食パン、コーンフレーク、おもち、サツマイモ、ジャガイモ、里芋、長芋など | うどん、パスタ、そば、ライムギパン、みかん、りんご、バナナ、グレープフルーツなど |
血糖値の急上昇を防ぐために、低GI食品を食事に取り入れるとよいと言われています。
3大栄養素:脂質
脂質は、3大栄養素の中でも1gあたり約9kcalと最も高いエネルギーを生み出すことができる栄養素です。
1) 脂質の種類
脂質と言ってもさまざまな種類に分類されます。脂肪酸と中性脂肪は貯蔵脂質と呼ばれ、エネルギーを貯蓄したり利用したりする脂質のことを言います。中性脂肪は体を動かすエネルギー源で、脂質の90%を占めています。脂肪酸は、さらに飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸へと分類されます。飽和脂肪酸は、エネルギーとして使われやすく体の中でも合成することができる脂肪酸です。不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸へと分類されます。
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 | |||
一価不飽和脂肪酸 (オメガ9系脂肪酸) | 多価不飽和脂肪酸 (オメガ3系、6系脂肪酸) | トランス脂肪酸 | ||
役割 | ・エネルギーとして使われやすく体内でも合成される ・過剰摂取になりやすい | ・比較的エネルギーとして使われにくい。 ・常温で液体
| ・体内で合成できない必須脂肪酸を含んでいる ・DHAやEPAなど | ・食物油を高温にする過程などで生成される ・健康面でマイナスが多い |
多く含まれる食品 | ・肉 ・乳製品 ・卵黄 ・チョコレート ・パーム油 ・ココナッツ | ・オリーブオイル ・菜種油 ・アボカド ・イワシ油 | ・魚油 ・食物油(サラダ油、トウモロコシ油、大豆油など) ・クルミ ・えごまなど | ・マーガリン ・ショートニング |
2) 脂質の働き
脂質は、効率よくエネルギーに変換してくれるという一方で、摂りすぎは肥満や生活習慣病の原因となるという悪いイメージがあると思います。しかし、脂質にもさまざまな種類があり、過剰摂取によって健康を損ねる可能性があるのは、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸であるとされています。逆に、DHAやEPAなどは体の中で合成されない必須脂肪酸ですので、積極的に摂取したい脂質であると言えます。
3大栄養素の摂取バランス
3大栄養素は体の中に摂取されると、1gあたりたんぱく質が4kcal、炭水化物4kcal、脂質9kcalのエネルギーへと変換されます。そのため、生きていく上で必ず必要な栄養素ではありますが、過剰摂取は様々な健康被害を引き起こします。これらの3大栄養素の摂取バランスを適切なものにすることによって、生活習慣病の発症予防と重症合予防になると言われており、日本人の食事摂取基準としてエネルギー産生栄養素バランスの目標量が定められています。
年齢 | 男性 | 女性 | ||||
たんぱく質(%) | 脂質(%) | 炭水化物(%) | たんぱく質(%) | 脂質(%) | 炭水化物(%) | |
1~49 | 13~20 | 20~30 | 50~65 | 13~20 | 20~30 | 50~65 |
50~65 | 14~20 | 20~30 | 50~65 | 14~20 | 20~30 | 50~65 |
65~74 | 15~20 | 20~30 | 50~65 | 15~20 | 20~30 | 50~65 |
75以上 | 15~20 | 20~30 | 50~65 | 15~20 | 20~30 | 50~65 |
近年では、食生活の欧米化によって脂質を摂取する割合が特に若年層で増加傾向にあると言われています。脂質の過剰摂取は肥満や糖尿病などの生活習慣病に直結するので注意が必要です。
3大栄養素のまとめ
私たちが生きていく上で、3大栄養素は欠かすことができません。3大栄養素には、たんぱく質、炭水化物、脂質があり、それぞれさまざまな種類や役割があります。これらの栄養素は、摂取バランスの目標量が設定されており、過剰に摂取しすぎても、逆に少なすぎても健康にはよくありません。近年問題になっている生活習慣病の増加を抑制するためにも、この3大栄養素の摂取バランスを考えて食事を摂取する必要があります。
また、これらの栄養素が多く含まれる食品にも質がよいものとあまりよくないものがあります。良質の栄養を含む食材を知って、それらを積極的に摂取することも健康につながります。
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