加工肉は食べすぎると体にあまりよくない!?
作成日:2021年3月7日
ほどよい塩気があり、料理のアクセントにも使われやすいベーコンやウインナーなどの加工肉は、子どもも大人も好んで食べる方が多いのではないでしょうか?しかし、これらの加工肉は食べすぎると体にあまりよくないとも言われています。今回は、本当に体によくないのか、どのような影響があるのかについて詳しく説明していきます。
目次
1.加工肉とはどんな食材?
豚肉や牛肉、鶏肉などの肉を加工処理したものを加工肉と言います。ハムやベーコン、ソーセージなどが該当し、それぞれの調理工程が異なります。
1) ハム類
ハムは豚のもも肉を塩漬けや燻製にし、仕上げにスチームで蒸したり茹でたりして作られます。ヨーロッパでは非加熱のものが多く、これが生ハムです。日本では、もも肉以外でも肉の塊を加工したものをハムと呼び、骨付き豚もも肉を使用したものを骨付きハム、豚もも肉を使用したものをボンレスハム、豚ロース肉を使用したものをロースハム、豚肩肉を使用したものをショルダーハムなどと、使用する部位や製法の違いで様々な種類のハムがあります。
2) ベーコン
ベーコンは豚のばら肉を塩漬けしてスモークしたもので、ロース肉を使用した場合にはロースベーコン、豚肩肉を使用した場合にはショルダーベーコンと呼ばれます。ヨーロッパでよく使用されるパンチェッタは、豚ばら肉を塩漬けして乾燥し熟成させたもので燻製はされていません。
ハムとベーコンの違いは、ハムは燻製後にスチームやボイルをするのに対して、ベーコンは燻製で終わることが挙げられます。
3) ソーセージ
豚肉をひき肉にして、香辛料などを練り合わせて薄い膜状の袋に詰めた加工肉をソーセージと呼びます。食卓でよく食べられているウインナーは、このソーセージの一種で、豚肉と牛肉を塩漬けしたものに香辛料を加えて薄い膜状の袋に詰めた後、燻製してボイルしたものです。
2.加工肉に含まれる栄養
ハムやベーコンなどの加工肉は、基本的には肉製品であるため、たんぱく質を多く含んでいます。また、ビタミンB1やビタミンCなどの糖質をエネルギーに変換する作用や老化防止のための抗酸化作用のある栄養素も含まれています。しかし、加工する際に脂肪分が添加されていたり、脂分の多い部位を加工していることが多いため、脂質が普通の肉より多く含まれています。また、塩漬けされていたり、塩を加えて加工されていたりするため、塩分量にも注意が必要になります。
加工肉を他の加工前の豚肉や牛肉と同じように摂取すると脂質や塩分の摂りすぎになってしまうため、食べすぎには注意が必要です。
加工肉のカロリーは、一般的によく食卓に出されるロースハムは100g当たり196kcalで、ボンレスハムは118kcal、ショルダーハムは231kcal、生ハムは247kcalとされています。ベーコンは100g当たり405kcalと、豚バラ肉で製造されていることもありハムよりも約2倍ほど高いカロリーです。また、ウインナーは100g当たり321kcalとされています。加工されていない牛肉は100g当たり209kcal、豚肉は183kcal、鶏肉204kcalですので、加工肉は決して低カロリーではないことを理解しておく必要があります。
3.加工肉は体に悪いの?
1) 加工肉の添加物には発がん性がある?
加工肉には、発がん性があるという説が話題になることがあります。これは、肉を加工する際に使用される亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなどの食品添加物に発がん性があることから広まったそうです。しかし、日本では、食品添加物に関する厳格な規定があり、食品安全基本法や食品衛生法で定められています。
日本で使用されている食品添加物は、厚生労働大臣が指定した指定添加物と、長年使用されてきた天然の添加物である既存添加物、天然香料、一般食品物添加物があります。
食品添加物の使用基準は、1日の摂取許容量を超えないようにさまざまな制限の元に定められており、日本国内で市販されている食品はこの規定で加工されているため、安心して食べられると言われています。しかし、だからと言って、添加物を含む食品を好き放題食べてもよいということではありません。添加物を含む食品には、塩分や脂質を多く含んでいることが多いので、食べすぎには注意が必要です。
2) 加工肉を食べすぎるとがんになる?
WHO(世界保健機関)の泉温組織である国際がん研究機関(IARC)は、5段階で発がん性の評価を行っています。
発がん性評価 | 具体例 | |
1 | 発がん性がある | たばこの煙、アルコール、ベンゼン、太陽光線、アスベスト、ダイオキシン、塩漬けの魚、加工肉など |
2A | おそらく発がん性がある | 排気ガス、農薬、赤身肉、熱いお茶など |
2B | 発がん性の可能性がある | クロロホルム、わらびなど |
3 | 発がん性を分類できない | カフェイン、お茶、アクリル樹脂など |
4 | おそらく発がん性はない | ナイロンの原料など |
この評価の中で、ハムやソーセージなどの加工肉が発がん性がある物質であるというグループ1に分類されることになりました。また、牛や豚などの赤身肉もおそらく発がん性がある物資であるというグループ2に分類されることになりました。研究では、加工肉を1日50g摂取する毎に大腸がんのリスクが18%増加すると言われています。さらに、最新の研究では、1日25gの加工肉でもがんのリスクが高まるということが指摘されています。25gとはベーコン1枚程度です。
しかし、日本は世界的に見てもドイツなどの赤身肉や加工肉を多く食べる国に比較すると、1人が1日に摂取する肉の量は少ない国に入ります。日本人が標準的に赤身肉や加工肉を食べる分には、がんになる確率はとても低いと考えられています。それよりも、赤身肉には、たんぱく質やビタミンB、鉄などの体に重要な栄養素が含まれており、これらを制限することによって、健康が損なわれる可能性も考えられます。
赤身肉や加工肉を食べすぎるとがんになるリスクが高まることは、研究されて報告されている事実ですが、常識を逸脱しない範囲で食べる分には問題ないとされています。それでは、どの程度が食べすぎなのかというと、そこまでは研究では明らかにされていません。
発がん性があるグループ1の中でも、発がん性がかなり高い物質とそこまでではない物質があると言われており、加工肉の発がん性よりもたばこの煙などの発がん性の方が高いので、単純に加工肉を食べなかったらがんにならないのかというとそういうことではないのです。がんは、1つの要素でなるわけではなく、喫煙習慣や環境、加齢、食生活、遺伝などさまざまな要素が複雑に絡み合って発症します。発がん性があるからと言って絶対に口にしてはいけないというわけではないと考えられています。
3) 生活習慣病のリスクが上がる?
加工肉には、通常の加工されていないお肉よりも、加工する段階で脂と塩分が含まれています。そのため、通常のお肉と同量食べると、脂質や塩分を摂りすぎてしまうことになります。脂質の摂りすぎは、体脂肪として身体に蓄積されてしまったり、血液中の中性脂肪やコレステロール値が上昇して脂質異常症になってしまったりします。
また、塩分の摂りすぎは、高血圧の原因となります。これらは、動脈硬化を招いて、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めてしまいます。あくまでも、食べ過ぎないということが大切なので、加工肉には脂質と塩分が普通のお肉よりも多く含まれているということを意識しながら献立を立てることが重要になります。
4.健康を保つためには
加工肉や赤身肉は、発がんの可能性や生活習慣病のリスクがあるから全く食べない方がよいかというとそうではありません。特に赤身肉は、たんぱく質やビタミンB群などの栄養を多く含んでおり、不足することによって筋肉量が減少したり、エネルギー不足となってしまったりすることもあります。
また、加工肉は保存がきくため、例えば頻繁に買い物に出かけることができない高齢者の方などにとっては貴重なたんぱく源であったりします。また、手軽に調理できるため忙しい日本人には欠かすことができない食材であると言えます。
とはいえ、加工肉や赤身肉にはさまざまな疾患のリスクがあることは明らかにされているため、過剰に摂取するとがんや生活習慣病のリスクが高まるということを知っておかなければなりません。逆に不足すると健康を損ねる可能性もあるため、適切な量を摂取することが大切です。
赤身肉や加工肉の適切な摂取量は、国際的には1日平均90g程度以内と定められています。日本人の赤身肉や加工肉の平均摂取量は、1日当たり牛・豚肉が54g、ハム・ソーセージ類が13gで合計67gであるため、過剰に食べすぎているとは言えません。(2016年国民健康・栄養調査)しかし、これはあくまで平均ですので、若い人になればなるほど魚よりお肉が好きという人もいるでしょうし、食べ過ぎには注意が必要です。
毎日毎食お肉を摂取しているという人は、食べ過ぎている可能性があるため、お肉を食べた次の日は魚にしたり、植物性たんぱく質である大豆製品などを上手に使って脂質の少ないたんぱく質を摂取するように工夫しましょう。
また、塩分の過剰摂取を予防するために、調味料を減塩のものにしたり、過剰な塩分を身体の外に排出する作用があるカリウムを積極的に摂取するようにしましょう。カリウムは、野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれているため、加工肉を食べるときには、意識的に野菜などを増やす献立を考えるようにしましょう。
ただし、カリウムは過剰摂取をすると高カリウム血症になって、胃腸症状やしびれ、不整脈などの症状が出現するので、特に腎機能が低下していてカリウムが身体の外へ排出されにくい人は、過剰摂取には注意をしましょう。他にもカルシウムやマグネシウムには、血圧を調整する作用があるので、意識的に摂取するとよいでしょう。カルシウムやマグネシウムは、乳製品や海藻類に多く含まれています。
さらに重要であるのは、定期的に健康診断を受けることです。加工肉や赤身肉を食べることによって、リスクが上がるとされている結腸がんは、早期の段階では自覚症状が少なく、進行してから便に血液が混ざったり、下痢と便秘を繰り返したりするなどの腹部症状が出現します。さらに、結腸の周りには、リンパ節があり、進行してがんが大腸の壁を越えてリンパ節まで転移してしまうと、肝臓や肺など全身のさまざまな臓器に転移してしまう可能性があります。
そのため、結腸がんは早期に発見するのがとても大切です。早期であれば、大腸を切除せずに内視鏡的にがんの部分だけを取り去ることもできます。大腸がんの検査は便に血液が混ざってないかを調べるだけで簡単に行えます。その際に異常があった場合には、大腸カメラで実際に大腸の中を観察して病変がないかの確認が行われます。
また生活習慣病も自覚症状が乏しいため、健診で初めて指摘されることが多いです。高血圧や糖尿病、脂質異常症は、症状がないまま放置しておくと、動脈硬化を招いて心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる怖い病気を招いたり、腎不全や神経障害などの日常生活に支障をきたすさまざまな合併症を起こしたりするので、早期に発見して食事を改善するようにしましょう。
5.加工肉についてのまとめ
加工肉には、ハムやベーコン、ソーセージなどがあり、これらの食材は忙しい日本人には欠かすことができない食材です。しかし、加工肉には、発がん性や生活習慣病のリスクを高めることが指摘されています。全く食べてはいけないということではありませんが、食べすぎには注意が必要です。加工肉には、普通のお肉よりも高カロリー、高脂質であり塩分も含まれていることを意識して献立を立てることがとても大切です。
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