介護が必要になる原因
作成日:2021年4月19日
超高齢社会の現代、高齢人口が急速に増加している中で、医療や福祉の人手不足の問題が課題になっています。ただ寿命が延びるだけではなく、健康寿命を延ばすことが高齢者にとっても介護する側にとっても非常に大切なことになってきます。今回は、介護が必要になる原因について詳しく説明していきます。
1. 寝たきりの原因
1) 認知症
認知症は、寝たきりになる原因の中で1番多いと言われています。認知症とは、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊されて起こる症状のことをあらわします。
人は、年齢を重ねると老化によってもの忘れをするようになりますが、この老化によるもの忘れと認知症は異なります。老化によるもの忘れは、一過性に出来事を忘れることはありますが、ヒントがあれば思い出すことができ、日常生活に支障をきたすことはありません。また、自分がもの忘れをしていることを自覚しており、物事の判断力が低下したりすることはありません。
しかし、認知症は、体験した出来事を全て忘れてしまい、ヒントがあっても思い出すことはありません。また、判断力が低下したり、徐々に症状は進行していくため、日常生活に支障をきたしてしまいます。認知症の方は、自分が物事を忘れてしまっていることを自覚していないのも特徴の一つです。
認知症には、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、血管性認知症などがあり、全体の約85%を占めています。特にアルツハイマー型認知症は、全認知症の半数を占めています。アルツハイマー型認知症は、老人斑や神経原繊維変化が、海馬という記憶をつかさどる脳の部位を中心に出現し、脳の神経細胞を壊していくことによって起こります。もの忘れや見当識などの認知機能が低下したり、妄想や徘徊などの症状が出現します。
レビー小体型認知症は、レビー小体という物質によって神経細胞が壊されてしまうことによって起こります。小刻み歩行などのパーキンソン症状が出現するため、最初はパーキンソン病と診断されることも多いです。認知機能の低下や、幻視、妄想、抑うつ状態、パーキンソン症状、睡眠時の異常行動などが特徴的な症状です。調子のよいときと悪いときがあり、それを繰り返しながら徐々に進行していきます。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などが原因で脳の一部が壊死してしまうことによって起こります。認知機能が障害されたり、手足のしびれや麻痺、感情のコントロールができないなどの症状が現れます。
これらの認知症は、いずれも速度は違っても症状は進行していきます。最初は、もの忘れ程度だった症状が、だんだんと食事や排泄などの普段できていたことができなくなり、日常生活に介助が必要になってきます。さらに進行すると、座位や立位を保持することができなくなり、寝たきりの状態になってしまいます。
2)脳血管疾患
寝たきりの原因になる割合で2番目に多いのが、脳血管疾患です。脳血管疾患は、脳梗塞や脳出血などのことで、脳の血管が詰まってしまう病気を脳梗塞、脳の血管から出血することを脳出血、脳にある動脈瘤(どうみゃくりゅう:血管のこぶ)が破裂して出血するくも膜下出血などがあります。
脳血管疾患は、ひどい頭痛や手足のしびれ、片側の身体の麻痺やろれつが回りにくくなるなどのさまざまな症状が出現します。特にくも膜下出血は、突然の激しい頭痛から症状が出現し、一刻も早く処置をしなければ命に関わることも少なくありません。
脳血管疾患は、多くの場合高血圧や動脈硬化などの生活習慣病が原因となっています。高血圧や動脈硬化は、自覚症状がないため健康診断で指摘されるまで気付くことができなかったり、気付いたとしても放置してしまったりすることが多くあります。しかし、これらの生活習慣病を放置してしまうと、脳血管疾患を引き起こして後遺症を残してしまったり、最悪の場合命の危険な状態になることもあります。
脳血管疾患は、その脳細胞が壊されてしまった場所によって、症状が異なりますが、運動をつかさどる部位が障害されてしまうと、麻痺が残ってしまい介護が必要になってしまいます。また、重症の場合には、命が助かったとしても寝たきりの状態になってしまうこともあります。
3)転倒・骨折
高齢になると、筋肉が弱まったり、関節が動きにくくなったりして転倒しやすくなります。特に閉経後の女性の場合には、骨粗しょう症といって骨がすかすかになってしまった状態になることが多く、軽く転んでしまっただけでも骨折してしまうこともあります。
骨折の中でも、高齢者の寝たきりの大きな原因となる部位は、大腿骨(太ももの骨)です。特に大腿骨骨頭といって、大腿骨と骨盤が接続しあっている部位で骨折してしまうと、なかなかリハビリが進まずに寝たきりの状態になってしまうことがあります。
骨折をしてしまって、安静の状態になると筋力は落ち、関節は硬くなってしまいます。骨折をした部位は動かすことができないので、筋力低下などはどんどん進んでしまいます。1度落ちてしまった筋力をつけるのは、若い人では問題なくできますが、高齢者となると元の状態まで戻すのには根気と時間が必要になってきます。
4)関節疾患
高齢者の寝たきりの原因の1つに変形性膝関節症や変形性股関節症があります。膝や股関節などの関節にある骨と骨の間のクッションの役割をしている関節軟骨が、加齢とともにすり減って、関節が変形してしまうことによって起こります。変形や疼痛が起こり関節を動かす範囲が狭くなってしまったりすることによって、座位を保持したり歩行したりすることができなくなり、寝たきりになってしまうこともあります。変形性関節症は、1度変形してしまうともとに戻ることはありません。
5)衰弱
加齢に伴って、筋力が低下したり、活動量が減ったり、日常生活動作が自力で行えなくなってきます。食欲が低下し、食事摂取量が低下すると低栄養状態となると、さらに筋力が低下し活動量が低下、それが原因でさらに食欲が低下するという悪循環に陥ります。また、食事をあまり摂らなくなると、食べ物を口の中で噛んでまとめて飲み込むという嚥下(えんげ)の機能も低下してしまいます。
嚥下機能が低下した場合、誤嚥(ごえん:食道を通るはずの食べ物などが誤って気管や肺へと入ること)をしてしまうリスクも高まります。このようにして、高齢によって徐々に衰弱し寝たきりの状態になってしまいます。
6)廃用性症候群
寝ている時間が長く続いたり、関節をあまり動かさない時間が長く続くと、筋力が低下したり、関節が硬くなったり、噛んだり飲み込んだりする嚥下機能が低下するなどの身体的機能の低下がみられます。また、認知症やうつ病のような精神的な機能の低下もみられるようになります。これらを廃用性症候群と呼んでおり、廃用性症候群も寝たきりの原因になります。
7)その他
その他にも心疾患や糖尿病、パーキンソン病、がんなどさまざまな疾患が寝たきりには関連しています。
2.寝たきりを予防するために
1) バランスの取れた食事をする
寝たきりを予防するために最も重要なことは、バランスの取れた食事を摂取することです。栄養をしっかりと取らないと、生きる活力がうまれません。そして低栄養状態になると筋力が低下したり、免疫力が下がったりしてさまざまな病気の原因になります。
しかし、食べ過ぎや食事内容には注意が必要です。カロリーの過剰摂取や塩分の摂りすぎ、脂質、糖質の摂りすぎは高血圧や脂質異常症、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病につながります。生活習慣病は、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患の原因になるため注意が必要です。野菜を意識的に摂取したり、肉よりは魚や大豆製品でたんぱく質を摂取するようにしたりするなど、栄養バランスを考えて献立を立てるようにしましょう。
また、特に高齢女性は閉経後に骨粗しょう症になるリスクが高まるため、カルシウムやたんぱく質、ビタミンDやビタミンKなど骨を作ったり強くするさまざまな栄養素をバランスよく摂取するようにしましょう。カルシウムは小魚類や乳製品、海藻などに、ビタミンDはさんまや鮭などの魚やきのこに、ビタミンKは納豆や小松菜などに多く含まれています。
2) 適度な運動をする
寝たきりを予防するためには、筋力が必要です。無理な運動はかえって筋肉や関節を痛めることになりますが、散歩やストレッチ、専門家によるリハビリなどを行って、筋力低下や関節拘縮予防を心がけるようにしましょう。
また適度な運動は生活習慣予防にもつながりますし、気分転換にもなり、認知症予防やうつ状態の予防にもなります。さらに運動は骨を強くするともいわれています。
年齢を重ねると筋力や体力が落ちてきて、だんだんと動くことが億劫になってしまいますが、日中楽だからと横になっている時間を少しでも短くして座っているだけでも、筋肉の低下をかなり防ぐことができます。座っていることによって、覚醒レベルを上げることができ、生活リズムを整え、認知症の予防にもつながります。
3) 口腔ケアを行う
バランスの取れた食事をすることにもつながりますが、寝たきりを予防するためには食事が大切なのですが、食事を摂るためには口が大切です。口の中を清潔に保てていないと、虫歯や歯周病などの口腔内のトラブルが生じて歯を失ってしまったり、味覚が鈍ってしまうこともあります。また唾液の分泌が減ってしまい、なかなか食事を飲み込めなくなったりします。歯を失って入れ歯にすると、どうしてもかみ合わせが合わずに食欲が落ちてしまったり、噛む力が落ちてしまいます。
食べ物を噛むことは、脳を活性化させることにもつながるため、認知症予防のためにもしっかりと口腔ケアをして口の中の健康を保つようにしましょう。
4) 人との交流を持つ
脳に刺激を与えるためには、人との交流を持つことが重要です。誰かと楽しく会話をしたり、グループ活動に参加したりすると、脳に刺激がいき活性化されます。また、誰かとつながっているということは、精神的な安定感もうまれます。孤独を感じると意欲が低下したり、うつ状態になってしまうこともあります。前向きに寝たきり予防をして、健康な状態で生きていくためにも、人との交流を持つことは重要です。
5) 環境を整える
高齢者は、骨密度が低下していたり弱っていたりして、ちょっとした刺激でも骨折してしまいます。若い時には、問題なかった段差でもつまずいてしまったり、バランスを崩してもとっさに踏ん張れなかったりします。そのため、家庭内の環境を転倒予防に注意して整えていく必要があります。
家の中の段差を少なくしたり、必要時には手すりをつけたり、床に極力物を置かないようにするなど、細かい工夫をして転倒を予防するようにしましょう。
3.寝たきりの原因と予防まとめ
寝たきりの原因は、認知症や脳血管障害、転倒・骨折、関節疾患などがあります。1度寝たきりの状態になってしまうと、なかなか回復することは難しいです。そのため、寝たきりにならないように予防することが重要です。
寝たきりの予防のためには、適度な運動や人との交流、口腔ケアなどが大切です。その中でも最も重要であるのが、バランスの取れた食事をとることです。食事は健康の源であるため、食事を気を付けることによってさまざまな病気の予防になりますし、それが寝たきりの予防へとつながります。カロリーが高い食べ物や塩分が多い食べ物を控えたり、野菜や魚を多めに食べるように心がけたりと、小さな工夫から始めてみるとよいでしょう。
様々な事情により、毎日栄養バランスを考えた食事を作るのは難しいという方でも、まごころ弁当では、毎日バランスのとれたお弁当を宅配でお届けすることができます。毎日お届けすることによって、栄養バランスのとれた食事を食べられるうえに、お弁当を受け取り時に配達員との交流をすることによって、認知症の予防や社会からの隔絶を予防することができます。
寝たきりを予防するためには、その大きな原因である認知症や脳血管障害などを予防することが重要です。そのためにも、栄養バランスのとれたまごころ弁当をぜひ1度試してみてはいかがでしょうか。