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『老老介護』の問題点とは?原因や対策方法、認認介護との違いを解説

作成日:2022年9月26日

『老老介護』の問題点とは?原因や対策方法、認認介護との違いを解説

高齢化が進み介護が必要な高齢者が増える中で、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が社会問題となっています。

「令和3年版高齢社会白書」によると、主な介護者と要介護者の関係は「配偶者」が最多で、主な介護者の年齢は男女ともに70%以上が60歳以上となっています。

さらに70歳以上の高齢者が介護を担っているケースは全体の40%を超えており、今後も上昇することが予想されています。

このように深刻化している老老介護の問題と対策についてお伝えします。

老老介護について

老老介護とは、65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護している状態のことです。

介護者は配偶者や兄弟、子どもであることが多く、平均寿命が延びていることで介護が必要な期間も長くなっています。

少子化によってひとりの子どもが複数人の親を介護しなければならないケースや核家族化による同居家族数の減少、子ども世代の晩婚化によって介護と育児のタイミングが重なるなど、身近に頼れる若い世代の家族がいなかったり、施設入所ができないなど、老老介護となっている事情は家庭によってさまざまです。

老老介護の問題点

老老介護は介護者にも要介護者にもさまざまな問題を引き起こす恐れがあり、介護者の負担が大きくなることで、「共倒れ」になる危険もあります。

厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査」では、すでに在宅介護世帯の69%が老老介護であることがわかっており、介護にまつわる問題の中でも喫緊の課題といえます。

身体的負担が大きい

高齢の介護者は加齢に伴って体力が低下しているだけではなく、慢性疾患や関節痛など持病があるケースも多いため、介護は身体的に大きな負担となります。

特に排せつや入浴、移動・移乗の介助は日常的に頻度が高いため、介護者の体力を消耗します。

要介護者の状態によっては昼夜を問わず介助が必要なこともあり、介護者は休息や睡眠を十分にとることができない可能性もあります。

精神的負担が大きい

身体的な負担が継続することで、精神的にも悪影響が及ぶことは少なくありません。

介護に追われて外出や人と会話する機会が減少してストレスを発散する場がなくなったり、社会との接点が減少して介護者自身が認知症を発症するリスクも高まります。

いつまで続くかわからない介護に精神的負担が増大して追い詰められた結果、介護うつを発症したり、自殺や虐待を引き起こす可能性も秘めています。

介護に時間がかかる

一般的に、要介護者の介護度が高くなるほど、介護に時間がかかる傾向があります。

在宅で要介護5の方を介護する場合、主な介護者の60%以上の人が「ほとんど終日」介護に時間をかけているという調査結果もあります。

老老介護では介護者の体力や身体機能が低下していることで、ひとつひとつの介助にさらに時間がかかると考えられます。

無理な体勢や不安定な姿勢が長く続くことは介護者の体に負担がかかるだけではなく、介護される要介護者も安心して身を任せることができず、心身ともにストレスとなります。

事故につながる

介護者の体力が低下していると、移動や移乗、排せつ介助などの際に要介護者の体を支えきれず、転倒や落下などの事故につながるリスクが高くなります。

介護者に腰痛やひざ痛など体に痛みがある場合はさらに危険は高まり、介護者がケガをしてしまうことで介護ができなくなってしまう可能性もあります。

介護者の健康にも悪影響がある

老老介護では介護者自身に疾患や持病があることも多いのですが、体調が優れなくても自分の受診は先延ばしにしたり、介護に追われて薬を飲み忘れたり、通院を中断してしまうケースもあります。

また、介護以外の日常的な家事仕事のために十分な休息や睡眠時間が確保できなかったり、食事がおろそかになるなど、介護者の健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

老々介護の原因

老老介護が増加している原因は複数ありますが、平均寿命が延びていることや、社会構造の変化もそのひとつです。

また高齢化が進む日本で、高齢者を社会で支えるために2000年に創設された介護保険制度ですが、現行の制度には老老介護の現状に即していない面があることも事実です。

平均寿命の伸長

平均寿命とは「その年に生まれた0歳児がその後何年生きることができるかを表す平均余命」ですが、それに対して健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。

平均寿命と健康寿命には男性で8.84歳、女性で12.35歳(令和2年版厚生労働白書より)の開きがあり、この差は「健康上の理由で、日常生活に制限のある期間」を意味しており、何らかの介護が必要な期間ともいえます。

近年は平均寿命も健康寿命も毎年伸びていますが、親が高齢になるほど当然子どもも年をとっていくため、90歳の親を65歳の子どもが介護をするといった老老介護の状態が生じます。

生活スタイルの変化

戦後の日本は核家族化の進行によって同居する家族が減少し、女性の社会進出によって女性が日中家を守るという概念が薄れていったことで、子ども世代が親の介護をすることが難しくなっています。

親と子どもが距離的に離れて暮らしていることも多く、近年では少子化によってひとりの子どもが複数の親の介護が必要になったり、晩婚化によって育児と介護が同時期に重なるなど、子ども世代が親の介護をすることが難しい状況にあることが老老介護につながっています。

介護保険制度の疲弊

介護保険制度は基本的には家族が介護することを前提に、介護者は若い子ども世代を想定して策定されており、介護保険サービスの中に日常的な家事の援助は含まれていません。

高齢者にとっては日常の家事も体力的に負担であり、時間的にも余裕を失います。

老老介護の現状では要介護者に対する介護サービスだけではなく、介護者を含めた高齢者世帯の生活を支えるためのサービスも必要となっており、配食サービスなどによる食生活の支援や、介護者自身の通院や休息のための時間を確保する支援(レスパイトケア)などが必要なケースもあります。

しかし介護保険の利用者は介護保険制度の創設時から約3倍になっており、今後ますます利用者が増加していくと予想される介護保険の財源不足も大きな問題とされています。

高齢者の貧困問題

高齢者のみの世帯では子ども世代からの経済的援助を受けにくく、生計は年金だけに頼っている世帯も多くなっています。

所得が公的年金のみの高齢者世帯では経済的に余裕がなく、民間の介護サービスを利用したくても利用できなかったり、比較的お金のかからない特別養護老人ホームは入所待ちというケースもあります。

経済的な理由でやむを得ず老老介護を継続して限界を迎えたとき、子どもが介護のために仕事を辞めるような事態となれば、別居の家族にも経済的に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。

老老介護と認認介護の違い

老老介護は前述のとおり65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護している状態のことを指しますが、認認介護は認知症の方が認知症の方を介護している状態を指します。

しかし認認介護となっている世帯の多くは老老介護であるのが現状であり、老老介護の期間が長くなることで認認介護につながる可能性は高くなります。

認認介護とは

老老介護の増加に伴い認認介護についても問題視されるようになってきましたが、身近に認知症の方がいないと、認認介護の状態やその問題について理解することは難しいかもしれません。

認知症の有病率は加齢とともに高まり、平成29年度高齢者白書では2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になると予測されています。

認知症を引き起こす要因は加齢であるため、高齢化の進行は認知症高齢者の増加に直結し、もはや老老介護も認認介護も他人事ではなくなっているといえます。

認認介護の問題点

要介護者に認知症がある場合、認知症の症状による物忘れや被害妄想、易怒性、不潔行為などによって、介護はより困難となることがあります。

さらに介護者が認知症を発症することで要介護者の食事や服薬の管理が困難となったり、排せつや入浴などの介助が適切に行われないことで、要介護者の健康管理に問題が生じることがあります。

社会的には金銭管理が困難となって経済的な破綻を招いたり、隣人や周囲の人とのトラブル、車の運転や家電などの電気・ガス機器が適切に使用できなくなることで、ケガや事故、火事などのリスクも高くなります。

認知症を発症した本人は自らの症状に気づいていないことが多いため、不幸な事故などを未然に防ぐには家族や周囲の人とのかかわりを多く持ち、早い段階で認知症の発症に気づくことが必要です。

認知症は早期に発見することで症状を緩和したり進行を遅らせる治療ができ、認認介護の対策をとることができます。

老老介護の対策

国は団塊の世代と呼ばれる人たちが後期高齢者となる2025年を目処に、地域全体で高齢者を支えあう仕組みとして「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。

この地域包括ケアシステムとは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしく生涯を全うできるように、介護や医療、そのほかの生活支援や福祉サービスを地域で切れ目なく一体的に支援をする体制のことです。

この地域包括ケアシステムの実現のために、各自治体の設置する地域包括支援センターを拠点として、地域の特性に合った取り組みが行われています。

社会的サービスを活用する

老老介護の対策として、社会的な介護サービスを活用することは非常に有効ですが、実際にどこに行ってどのようにすれば利用できるのかわからないという人も少なくありません。

地域包括ケアシステムの中心的な役割を担う地域包括支援センターは、高齢者のための総合相談窓口として各市区町村に設置されていて、保健師やケアマネジャー、社会福祉士などの専門職が常駐しており、無料で相談することができます。

社会的な介護サービスにも公的サービスや民間のサービスなどいろいろな種類がありますが、地域包括支援センターの専門家に老老介護世帯であることを伝えて相談することで、各家庭の現状に合った介護サービスについてサポートを受けることができます。

介護施設へ入所する

老老介護の負担が増大しているケースでは、共倒れする前に介護施設へ入所することも有効な選択肢といえます。

介護施設にも公的施設や民間施設を含め多くの種類があるため、地域包括支援センターに相談することで、要介護度や料金など現状に適した施設について検討することができます。

すぐに施設入所に抵抗がある場合には、デイサービスやショートステイなど短期間の施設利用によって、介護者の負担を軽減できることもあります。

周囲に頼る

老老介護をしている介護者の中には、「介護は身内でするもの」「他人の世話になりたくない」など、他者のサポートを受けることに抵抗がある人が多い傾向があります。

また排せつや入浴などの介助は他人に頼りにくいと感じる方が多いのも事実です。

そういった高齢者の方々の気持ちは尊重しながら、可能な部分から少しずつ周囲の人に頼っていくことは、老老介護の負担を軽減するために欠かせないことです。

家族や身近な人に頼ることが難しい場合は、むしろ介護サービスを利用してプロの介護を受けてみることで、介護者も要介護者も安心して任せることができるようになるケースもあります。

要介護状態の予防に取り組む

高齢になっても健康を維持し、介護が必要な状態にならないことが、老老介護を招かない最も良い対策といえます。

国は2019年に「健康寿命延伸プラン」を策定し、2040年までに男女ともに健康寿命を2016年より3年以上伸ばすことを目標としています。

その内容は、「次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成等」「疾病予防・重症化予防」「介護予防・フレイル対策・認知症予防」を3本柱とし、介護予防については「リハビリ専門職スタッフなどを生かした介護予防の機能強化」「住民が運営する通いの場の充実」「高齢者の社会参加を通じた介護予防の推進」を掲げています。

これに基づき各地域では運動機能や口腔機能の向上を目的とした体操やレクリエーションの実施、栄養状態のチェックや勉強会などが実施されるようになっています。

老老介護は負担が大きくできれば避けたい

老老介護は介護者にとって身体的にも精神的にも、経済的にも大きな負担となることがあります。

平均寿命が延びたことや核家族化による生活スタイルの変化など、老老介護をせざるを得ない状況も存在しますが、同居の有無にかかわらず、家族はできるだけ高齢となった親とのかかわりを持つようにしておきましょう。

介護が必要になる前から、家族間で介護について話をしておくことも大切です。

介護をする側、される側双方の希望を話し合っておくことで、実際に介護が必要になったときも迷わずに対応することができ、やむを得ず老老介護の状況となった場合にも、周囲に頼ったり介護保険の制度を利用しやすくなります。

そして何よりも介護が必要とならないよう、要介護状態の予防対策に取り組み、健康寿命を延ばしましょう。

この記事の作成者:S.M(管理栄養士)
この記事の提供元:シルバーライフ

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