甲状腺の病気や、その治療法とは?
作成日:2021年8月18日
甲状腺は喉仏の下にある臓器です。甲状腺はホルモンを分泌しており、代謝の調節に関わります。甲状腺の病気になるとホルモンの分泌が多くなりすぎたり、少なくなりすぎたりして身体に様々な影響を及ぼします。ここでは、甲状腺の病気や治療法について解説します。
甲状腺とはどんな臓器?
甲状腺は首の真ん中、喉仏の下にある臓器です。大きさは4~5cmでハートのような形をしています。甲状腺は身体の代謝の調節に関わるホルモンを分泌しています。ホルモンとは、声明を維持するために身体の働きを調節する物質のことです。甲状腺から分泌されるホルモンは甲状腺ホルモンといい、脳にある下垂体という臓器から分泌される甲状腺刺激ホルモンによって調節されています。甲状腺ホルモンは、脳を活性化したり、脈拍や体温、自律神経の働きを調節し、身体のエネルギーの消費量を一定に保つ役割をしています。
甲状腺は外見からはどこにあるのかほとんど分かりませんが、甲状腺が腫れると首の下が太くなったように見えます。甲状腺が腫れる原因には、甲状腺機能亢進症や低下症、良性腫瘍、悪性腫瘍(がん)などがあります。甲状腺機能が亢進したり低下したりすると、甲状腺ホルモンの分泌が異常となるため、様々な症状があらわれます。
甲状腺の代表的な病気
・甲状腺機能亢進症
甲状腺の働きが活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺機能亢進症の代表的な疾患にバセドウ病という自己免疫疾患があります。バセドウ病では自分の甲状腺を異物とみなして自己抗体が産生され、常に甲状腺が刺激されることで甲状腺ホルモンが過剰に作られる状態となります。
また、自己免疫の影響やウイルス感染などが原因で甲状腺に炎症が起き、甲状腺機能亢進症となることがあります。甲状腺機能亢進症の原因にはほかにも、薬の副作用やヨウ素の過剰摂取などがあります。
・甲状腺機能低下症
甲状腺の働きが低下して甲状腺ホルモンが不足する病気です。特に高齢者に多く高齢女性の約10%に発生します。最も一般的な原因は、自己免疫疾患の橋本病です。橋本病の患者すべてが甲状腺機能低下症になるわけではなく、約40%の人に甲状腺機能の異常がみられると言われています。
ほかにも、甲状腺の炎症やヨウ素の不足、頭や首への放射線治療、遺伝性疾患などが原因となります。
・甲状腺がん
甲状腺の細胞ががん化したものです。甲状腺の組織は濾胞(ろほう)という小さな袋がたくさん結合して構成されています。甲状腺がんは、甲状腺の濾胞細胞と濾胞の周囲にある濾胞傍(ろほうぼう)細胞から発生し、組織の特徴によって分類されます。この組織の特徴によりがんの悪性度は異なります。甲状腺がんの症状は、甲状腺の腫れやしこり、違和感、声のかすれ、息苦しさなどです。甲状腺がんはアジア系の25~65歳の女性がなりやすいと言われています。また、自然界に多く存在するヨウ素とは異なる放射能を持ったヨウ素が甲状腺に取り込まれることでも発症しやすくなります。
甲状腺がんの種類
(1)乳頭がん
甲状腺がんの中で最も多く、約9割が乳頭がんと言われています。40~50歳第の女性に多く、進行はゆっくりで数年経っても大きさがほとんど変わらないことがあります。近くのリンパ節に転移しやすいという特徴がありますが、比較的治療後の経過がよいがんです。しかし、一部の乳頭がんでは悪性度の高いがんに種類が変わることもあります。また、高齢で発症するほど悪性度が高くなりやすいと考えられています。
(2)濾胞がん
甲状腺がんの約5%がこのタイプのがんで、乳頭がんよりも高齢者に多い傾向があります。治療後の経過は比較的良いと言われていますが、血液の流れに乗って他の臓器に転移しやすいという特徴があります。
(3)髄様(ずいよう)がん
髄様がんは濾胞傍細胞ががん化したもので、甲状腺がんの約1~2%にみられます。乳頭がんや濾胞がんよりも進行が早く、リンパ節や肺、肝臓への転移を起こしやすいという特徴があります。約2~3割は遺伝性です。
(4) 未分化がん
甲状腺がんの約1~2%がこのタイプで、60~70歳第の高齢者に多くみられます。進行が早く、悪性度が高いがんです。甲状腺周囲の臓器(気管や食道など)へ広がりやすく、また肺や骨などに転移を起こしやすいという特徴があります。
(5)悪性リンパ腫
血液・リンパの腫瘍である悪性リンパ種が甲状腺にできることもあります。橋本病が背景にある場合が多く、経過が長期的な高齢者に多いと言われています。
甲状腺ホルモン異常が疑われる症状
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になった場合と不足した場合とで相反する症状を呈します。甲状腺ホルモンの分泌が多くなると、脈が早くなる、暑がりになり汗を多くかく、体重が減る、軟便などの症状がみられます。甲状腺ホルモンの分泌が少なくなると反対に脈が遅くなる、寒がる、体重が増える、便秘などの症状がみられます。
また、両方に共通してだるさや疲れやすさ、足のむくみ、脱毛などの症状があらわれることがあります。これらの症状は他の病気と似ているため、別の病気と間違われて診断されることもあります。甲状腺の腫れや、このような症状が続く場合には、「内分泌内科」もしくは「耳鼻咽喉科」を受診しましょう。
甲状腺ホルモンが過剰になった状態 | 甲状腺ホルモンが不足した状態 |
頻脈、動悸、手足の震え、暑がる、多汗、 イライラ、皮膚の痒み、口喝、不眠、微熱が続く、息切れ、排便回数が増える(軟便や下痢)、無月経、月経の量が少ない、月経周期が長くなる、血中コレステロール値が著しく低下、高血糖、骨密度の低下など | 徐脈、寒がる、全身のむくみ、食欲低下、 体重増加、動作緩慢、皮膚の乾燥、声が枯れる、無気力、眠気、記憶力の低下、便秘、筋力低下、月経量が増える、血中コレステロール値の上昇、関節のこわばり、錯乱、顔の表情が乏しくなるなど |
甲状腺の病気の治療法とは?
甲状腺の病気の治療法は、種類や原因によって異なります。
甲状腺機能亢進症の代表疾患であるバセドウ病では甲状腺の働きを抑える薬を飲むことが第一選択となります。通常は2~3年かけて薬を徐々に減らしていきますが、薬をやめると症状が再燃することもあり、長期的に薬を飲む場合もあります。
また、バセドウ病に腫瘍を合併する場合には手術を行うこともあります。薬でコントロールが効かない時や手術後に再発し場合など、放射線同位元素を含む薬を注射もしくは内服するアイソトープ治療が適用されることもあります。アイソトープ治療とは、意図的に甲状腺に放射性ヨウ素を取り込ませることで甲状腺の細胞を破壊して甲状腺ホルモンの分泌を減少させる治療法です。この治療法は60年以上の歴史を有し、その有用性が国際的に認められている安全な治療法です。
甲状腺機能低下症を示す病気の中で頻度が高いものは橋本病です。甲状腺機能の低下が認められる場合には、足りない甲状腺ホルモンを補うために薬を飲んで治療します。病気自体は治ることはないため、症状を抑えるためには薬を飲み続ける必要があります。
甲状腺がんに対する治療は手術が基本となります。がんの病期や進行度、リンパ節への転移の有無などによって切除する範囲は異なります。がんのタイプや転移がある場合には手術後に化学療法が行われることもあります。また、高齢者では手術よりも全身への影響が少なく腫瘍の成長を遅らせたり縮小させることのできる放射線療法が適用となることもあります。
甲状腺の病気は食事制限が必要?
海藻やスポーツ飲料などに含まれるヨウ素が甲状腺ホルモンの原料となるため、甲状腺の検査や、病気の治療のためにヨウ素を含む食品の摂取を制限する必要があります。昆布そのものだけではなく、昆布エキスにもヨウ素は多く含まれているため麺類のスープや調味料にも注意しましょう。ヨウ素を制限する期間は疾患によって異なるため、医師の指示に従ってください。
甲状腺の病気に関するまとめ
甲状腺の病気は患者数が多いものの、実際に治療を受けている人が少ないのが現状です。症状が多様で不定愁訴して捉えられやすかったり、女性に多いことから更年期障害と間違えられてしまうなど、正しい治療を受けられていないこともあり、治療には専門医による診断が必要です。甲状腺が腫れていたり、気になる症状が続いている場合には専門医のいる医療機関を受診してみましょう。
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