日本料理とは切っても切れないカツオの秘密
作成日:2022年4月15日
かつお節にかつおだし、日本の食卓に欠かせない魚といえば、カツオですね。
乾燥してチリチリとした鰹節だけでなく、春や秋には生のカツオも食卓を賑わします。
今回は、もはや日本の食卓とは切っても切れないカツオの秘密に迫ってみましょう。
目次
初がつおは江戸の人々の心意気
目に青葉 山ほととぎす 初がつお これは、江戸中期の俳人 山口素堂の一句です。
初ガツオは新緑がまぶしくなる頃、食卓を賑わしてくれる代表的な魚ですね。
春になると太平洋沿岸で広く水揚げされていますが、中でも静岡県伊豆沖、千葉県鎌倉沖で取れるものは、初物をとりわけ大切にしていた江戸の人々に愛されていました。
初がつおは、見栄っ張りで知られた江戸の人々にも高価な魚で、「まな板に 小判一枚 初がつお」(小判一枚を支払ってでも、誰よりも早くカツオを食す)と、宝井 其角が詠んだ句も、有名です。
また、江戸時代(1812年)には、歌舞伎役者中村歌右衛門が1本の初ガツオを3両で購入したという記録が残っているということです。
3両というと、現代のサラリーマンの給料3か月分に相当するということで、現代で例えるなら初競りでマグロに1,000万円を超える高値がつくご祝儀相場なるものが、江戸時代にもあったのかもしれませんね。
価格のことはさておき、初物は縁起がよいともいわれています。
その年の旬の走りのものをいただくと運気が上がり、幸運を招いたり、その旬の最初に収穫されたものは、名残のものよりもパワーや生命力が一段と強いため、初物を頂くと寿命が75日伸びる、とも言い伝えられたりしているのです。
カツオとはどのような魚なの?
このように江戸の人々に愛されていたカツオは、スズキ目サバ科に属する回遊魚で、世界中の温帯から熱帯海域に生息しています。
寒い冬の間は南方の暖かい海で過ごしていますが、春になると日本近海に寄って来る黒潮の流れに乗って、北上してきます。
餌となるイワシなどの群れを追いながら日本近海に近づいてくるのですが、回遊魚らしく泳ぎは得意で時速60kmにも迫り、地上の動物に例えると競走馬と変わらないスピードとなります。
それだけの泳力を維持するためには大量の酸素を消費します。
そのため、酸素を運ぶヘモグロビンを多く含み、身は赤色を呈しています。
主な産地は静岡県、東京都、三重県、東京都、宮城県となっています。
初ガツオ、戻りガツオとは?
春に南方から昇ってくるカツオは、夏が終わるころになると宮城県三陸沖にまで到達します。
その頃にはちょうど秋口になり、また、その周辺を流れる親潮に突き当たります。
親潮は寒流でカツオが苦手とする冷たい潮であるため、カツオはまた南方へと下っていきます。
春に獲れるカツオを初ガツオ、登りガツオと呼ぶのに対し、秋口から南に下るカツオを戻りガツオと呼びます。
同じカツオですが、春に食卓を賑わしてくれる初ガツオは脂肪が少なく、さっぱりとしていて、サラダ仕立ての刺身やタタキにして食べるとおいしいです。
一方、三陸沖でしっかりと栄養をつけた、秋に獲れる戻りガツオは脂が乗り、濃厚な脂の旨みが楽しめます。
カツオ料理として有名なタタキだけでなく、刺身や漬けにしていただくのもおいしいですよ。
食卓に欠かせないかつお節の秘密
ところで、日本の食文化で最も大切なものと言えば、出汁ですね。
中でも、かつお節からとるかつおだしは、煮干し出汁、昆布だしと並んで私たちの日常には欠かせない味となっています。
ふわふわとしたかつおぶし、あの軟らかいかつおから、どのようにして作られているのかをご紹介します。
さきほどご紹介した通り、かつおは獲れる季節により脂質の量が変わります。
春のはじめから7月頃迄に獲れるカツオから作るかつお節を春節、夏節、暑い盛りを迎える8月から10月に獲れるかつおを使ったものを秋節と呼びます。
脂肪分が少なく、澄んだ出汁がとれるとして重宝されるのは春節です。
かつお節の産地により獲れる時期が変わるため、鹿児島県の薩摩節、高知県の土佐節、静岡県の焼津節、伊豆節にあたります。
水揚げされたカツオは頭とワタを除き、1時間ほどかけてしっかりと茹でてから、中骨や腹骨を取り除きます。
ちょうど3枚おろしの状態にし、さらに腹側、背側の4つに分け、形を整えてから燻製・乾燥させます。
この状態を荒節といい、2g程度にパックされている花かつおは、主にこれを削ったものになります。
製品のパッケージを見ると、「かつお・ふし」「かつおけずりぶし」と記載されています。
コクは控えめですが、スモーキーな香りと魚の旨みが残り、関西を中心に使用されています。
次の工程として、燻製にしたときについた煙成分・タールや、にじみ出てくる脂質を取り除き、形を整えてかつお節に適したカビをつけ、熟成、乾燥させます。
カビつけは2~5回、回数は生産者により変わりますが、カツオを捌くところから最長で合計5カ月にも及び、手間暇のかかる食品であることが分かります。
カビをつけずに仕上げる荒節に対し、カビを2~3回つけたものを枯節、4回以上つけたものを本枯節と言います。
パッケージを見ると、「かつおかれぶし削りぶし」「かつおのけずりぶし」「かつお・かれぶし」と記載されています。
手間がかかっている分高価にはなりますが、タールを削り取っているため燻製の香りは少なく、熟成によるコクがあり、旨みが凝縮されています。
かつお、かつお節の成分とは?
パッと見た感じ、まるで木をけずったカンナくずのようにも見えるかつお節。
塊の状態でも、彫刻かなにかに見えるほど、固く締まっていますね。
このかつお節で取る出汁のおいしさは日本料理には欠かせないものとなっています。
代表的な成分として、イノシン酸、また、20種類近くのアミノ酸が複雑にからみあい、あの旨みを生み出しています。
生のかつおやかつお節の持つ成分について、見ていきましょう。
たんぱく質
生のかつお、また、生のかつおを使って作るかつお節は、そのほとんどがたんぱく質です。
イノシン酸
イノシン酸は、細胞の代謝を活性化させ、代謝を上げて発汗を促し、肌や髪を健やかに保つ働きのほか、ダイエット効果も期待できると言われています。
エイコサペタンエン(EPA)
かつお節に含まれる良質の脂質、エイコサペタンエンは血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあり、血液サラサラ効果があるとされています。
かつお節由来ペプチド
かつお節由来ペプチドには、疲労で体内に溜まる乳酸を分解し、疲労回復を早める働きがあります。
また、毎日少しずつ食べ続けることで血圧を下げ、安定させる働きがあることが、2016年に開催された第26回国債高血圧学会で報告されています。
ビタミンB12
ビタミンB12は細胞や血液中の成分、赤血球を作るために働きます。
鉄分
広い外洋を泳ぎ続けるかつおは、絶えず大量の酸素を必要としています。
たくさんの酸素を体内にとどめておくために、しっかりと鉄分を含んでいるため、身が赤色を呈しているのです。
出汁を取った後のかつお節にも、たんぱく質をはじめ、多くの栄養成分が残っています。
フライパンで乾燥するまで煎り、醤油やみりんで味つけしてふりかけにしたり、青菜の和え物に加えたりして食べてくださいね。
初ガツオと春野菜の土佐酢和え
今回は春に旬を迎える初ガツオに細かく砕いたかつお節を和え、春らしくさっぱりといただける土佐酢和えをご紹介します。
春においしい野菜もたっぷり、和風のサラダ仕立てといった感じに召し上がっていただけます。
【材料】2人分程度
・初ガツオ…1/2サク
・かつおぶし…軽くひとつかみ
・春野菜(タケノコ、ラディッシュ、蕾菜、スナップエンドウなど…)…各適宜
・土佐酢…大さじ1~
≪土佐酢≫…作りやすい分量
・水…100cc
・酢…50cc
・かつお節…5g
・みりん…30cc
・昆布…5cm角1枚
・しょうゆ…30cc
(あれば薄口しょうゆ)
【作り方】
①かつお節は乾燥した鍋かフライパンに入れ、弱火で乾煎りします。
乾燥してパサパサしてきたらボールにあけ、手で揉み、細かくつぶしておきます。
②春野菜はそれぞれ下茹で、皮をむくなどの下処理をして、一口大に切っておきます。
③初ガツオは野菜のサイズに合わせて切っておきます。
④ボールにタケノコなど味が染みにくい野菜、初ガツオを入れ、①のかつお節、土佐酢を回しかけて和えます。
⑤さらに残りの野菜を加えて全体をざっと混ぜ、器に盛ります。
≪土佐酢・作り方≫
①鍋に水、酢、昆布を入れて弱火にかけ、沸騰直前で昆布を取り出します。
②①が沸騰したらしょうゆ、かつお節を加えて火を止め、10分ほど置いてかつお節がすべて沈んだらキッチンペーパーなどを敷いたザルで濾します。
健康を気にする方のための食事に
毎日たっぷりの野菜をはじめ、健康に良いとされる料理を作り、いただくことは、健康な毎日のための第一歩となりますね。
特に、今回ご紹介したような出汁や酢が効いたものは、塩分の取りすぎを抑えたり、ダイエット効果が高まったりと、体に良いことがたくさんあります。
ですが、毎日このような料理を作り続けることはなかなか大変ですね。
年齢を重ねられた方の多くは定期的な通院のほか、持病などによる食事制限など、若い世代にもまして食事作りに気を遣うことが多いもの。
時には休憩し、家事の手を休めて、家族そろって楽しめるおいしいお弁当を利用してみてはいかがでしょうか?
そんな時におススメしたいのがまごころ弁当のお弁当です。
まごころ弁当のお弁当は、管理栄養士が召し上がる方の健康を考え、こだわりを持って選んだ食材を使って作る、美味しいお弁当です。
普通食だけではなく、ダイエットや塩分の取りすぎを気にしておられる方のための小町やカロリー調整食、持病により食事ケアが必要な方向けのたんぱく調整食、また、咀嚼・嚥下に不安がある方向けの刻み食やムース食など、さまざまな種類のお弁当から、ご自身やご家族にピッタリの一品を選んでいただくことができます。
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まとめ
今回は、私たちの食卓、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている和食には欠かせない、かつお節やかつおについて、ご紹介しました。
旬でいただく生のかつおもおいしいものですが、季節を問わず、ご飯の共に、和え物に、また、出汁として欠かせないかつお節には、美味しさだけでなく体に良い成分もたっぷりと含まれています。
ぜひ日々の食卓の一皿に加えて楽しんでくださいね。