梅雨の水を飲んで旨くなる魚?ハモ
作成日:2022年6月16日
梅雨を迎える頃からおいしくなり、市場にも出回るようになるハモ。
7月に京都で執り行われる祇園祭、大阪で執り行われる天神祭りの頃に旬を迎え、「祇園さんとハモ」「天神さんとハモ」は、対のように語られることがあります。
今回は、フワフワと花開いたように料理されるハモの栄養価やおいしい食べ方について、ご紹介します。
ハモとはどのような魚なのでしょうか?
ハモは、ウナギやアナゴのように細長く、体調は約80cm程度に成長します。
梅雨時期に脂を貯め、梅雨が明ける7月頃に旬を迎えます。そのため、梅雨の水を飲んで旨くなると言われるようになりました。
生息域は主に中部地方以南から温帯域、アジアの熱帯海域で、日本で多く食べられているのは関西です。
中でも、海から遠い京都南部で祇園祭を迎える暑い7月に多く食べられているというのは不思議ですね。
冷蔵庫がなく、今のような輸送手段がない時代から食べ続けられてきたのはなぜなのでしょうか?
答えは、ハモの生命力の強さにあります。
特に夏の暑い時期、イワシやアジ、サバのような傷みやすい魚が多い中、瀬戸内海で水揚げされたハモは京都までの輸送に耐え、生きたまま届けることができたと言います。
ハモは小骨が多い!
また、ハモは魚類の中でも特に小骨が多い魚です。
1本の小骨は木の枝のように枝分かれして複雑に広がっており、1匹あたり、3,500本あるといわれています。
人間の成人の骨が約206本であることから考えても、とても多いことがわかりますね。
いろいろな魚を自由に選び食べられる沿岸部では、小骨が多く調理に手間がかかるハモはどちらかというと敬遠されてきたようです。
一方、海から遠い京都市内では、ハモは比較的長く鮮度が保てるという利点は大きかったようで、古くから夏になると多くのハモが届けられていました。
新鮮な海の魚が手に入りにくかったであろう当時の京都の料理人たちは、小骨が多いハモを何とかおいしく食べようと試行錯誤し、「骨切り」という技術を確立します。
「骨切り」は、鱧の身の方から1寸(約3cm)に24本の切り目を入れ、皮一枚でつながっている状態にする、高度な日本料理のテクニックの一つです。
こうして、ハモは食べても骨が口に当たらず、見た目にも花が咲いたような美しい姿に仕上げられるようになりました。
ハモをさっと湯にくぐらせた「湯引き」は、切り目に沿ってふわっと花が開いたように広がるため、「ボタンハモ」という美しい異名を持っています。
なお、骨切りはとても難しい技術です。
ごくまれに、スーパーマーケットの鮮魚コーナーで骨切りしていないハモが販売されていることがありますが、家庭で骨切りするのはとても難しいものです。
購入する時は骨切り後のものを選ぶことをおすすめします。
身からは想像できない、獰猛な魚 ハモ
このように美しく花開いたように調理されるハモですが、実はとても獰猛な肉食魚の一つです。
スーパーマーケットで見るハモは、開いて骨切りされた身だけがパックに入っているかと思いますが、その口は大きく開き、鋭い歯が並んでいます。
普段は砂に潜って休み、夜になると泳ぎ回って魚やイカ、タコ、また、エビやカニなど、近づくものは何にでもかみつき、長い体をくねらせて引きちぎって食べてしまいます。
鋭い歯で、近づいてきたものには何にでもかみつく性質があるため、「食む(はむ)」「咬む」からハモという名になったとされています。
7月頃に旬を迎えますが、8月頃には産卵し、一旦脂が落ちて痩せてしまいます。
その後、秋にかけて再び脂が乗ったハモは、黄金ハモと呼ばれ、再びおいしい時期を迎えます。
ハモの栄養価とは?
白くて、見た目にはとても淡白なハモ。どのような栄養素が含まれているのでしょうか?
たんぱく質
たんぱく質は、脂質、糖質とともに、3大栄養素の一つとして数えられ、私たちの筋肉や血液、免疫細胞の材料となるほか、1gあたり4kcalのエネルギーを作り出すことができます。
カリウム
カリウムは私たちが取り過ぎた塩分を体外へと排泄し、血圧の安定を図るほか、塩分を薄めようとして体に溜まった水分も排泄し、むくみを解消する働きがあります。
カルシウム
小骨ごと食べるハモには、多くのカルシウムが含まれています。
カルシウムは骨や歯のもととなるほか、脳の神経伝達の、メカニズムにかかわっていることが確認されています。
カルシウムはとても大切なミネラルであるにもかかわらず、吸収が悪いため、ビタミンCやビタミンDを多く含む食品を合わせてとることが大切です。
マグネシウム
マグネシウムは、別名「美のビタミン」とも呼ばれ、私たちの体内で働き多くの酵素の働きを活性化させ、代謝をあげてエネルギーを作り出す働きに深くかかわっているほか、骨にカルシウムが沈着するのを助ける働きがあります。
レチノール(ビタミンA)
ビタミンAは肌や粘膜を健やかに保ち、免疫力を維持・向上させる働きがあります。
また、不足すると暗いところで目が見えにくくなる、夜盲症になることが知られています。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を助け、骨を丈夫にする働きがあります。
また、血液中に含まれるカルシウムの濃度を一定に保ち、神経の伝達を滞りなく行い、筋肉の動きをスムーズにする作用があります。
DHA/EPA
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペタンエン)は、主に魚介類に含まれる不飽和脂肪酸で、ともに体内では合成できない、必須脂肪酸の一つです。
DHAは体内の免疫反応を正常に保ったり、脳の神経細胞の働きを正常に保ったりする働きがあります。
そのため、記憶力や認知機能を高めると言われています。
EPAもDHAと同じく魚介類に多く含まれる必須脂肪酸の一つです。
免疫力の調整のほか、血液をサラサラにして動脈硬化や高血圧、脂質異常症など、血管系の疾患を予防する働きがあります。
アスパラギン酸
とても生命力が強いハモは、アスパラギン酸を多く含んでいます。
私たちの体内には車のエンジンのような働きをする、TCA回路というエネルギー代謝のサイクルがあり、ます。
アスパラギン酸は、ピルビン酸、クエン酸とともにこのTCA回路を正常に働かせる作用があり、食べたものからすみやかにエネルギーを作り出して疲労を回復させ、スタミナを維持する働きがあります。
また、細胞内にカリウムやマグネシウムを呼び込み、体液のバランスを整えたり、肌の代謝を促し、角質の保湿を行ったりして肌を健やかに保つ働きがあります。
また、アスパラギン酸は体内に溜まった有毒なアンモニアを体外へと排泄し、脳の神経の働きを整えたり、肝臓の働きをサポートしたりする役割も担っています。
アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、味噌や醤油のような、発酵食品のうまみ成分でもあるとされています。
コンドロイチン
コンドロイチンは粘性物質の一種で、成長気には人間の体内でも作られている成分で、関節の動きを滑らかに保つ働きがあります。
しかし、加齢とともにその量が減少し、関節の動きが悪くなるなど、さまざまな老化現象の引き金ともなります。
コンドロイチンはハモの皮に特に多く含まれています。
関節痛を予防するほか、血中コレステロール値を正常に保ち、動脈硬化や高血圧を予防するほか、カルシウムの吸収率を高めるほか、保水力の高さから美肌効果やドライアイ予防に役立ちます。
ハモとナスの揚げびたし
夏においしいハモは、同じく夏に旬を迎えるナスともよく合います。
今回は素揚げしたナスとともに出汁につけ、揚げびたしに仕上げました。白く美しいハモの身を生かすため、かつお昆布だしを使用しましたが、ない場合は白だしを、色が茶色くなりますが、麺つゆ使っても、美味しく作ることができます。
【材料】
・ハモ(骨切りしたもの)…1/2尾分
・ナス…2個
・かつお昆布だし…300cc程度
・しょうゆ…小さじ1/2
・塩…小さじ1/2程度
・片栗粉…適宜
・大葉、しょうがなど…各適宜
【作り方】
①ハモは一口大に切り、片栗粉をはたいておきます。あれば刷毛を使い、骨切りした切り目も開いて片栗粉をはたいておきます。
②ナスは縦半分に切り、鹿の子に包丁をいれてから一口大に切り分けます。
③かつお昆布だしにしょうゆ、塩適宜を加え、味を調えておきます。(冷めているもので大丈夫です。)
④サラダオイルを180℃に熱し、①のハモ、②のナスを揚げ、すぐに出汁③の出汁に浸けます。
⑤大葉、しょうがは千切りにし、さっと水にさらしておきます。
⑥器に④のナスとハモを盛り付け、⑤の大葉、しょうがを天盛りにします。
毎日健康に過ごすために
中医薬膳学では、今回ご紹介したハモやナスには、体の熱を取って冷やしたり、むくみを解消したりする効果があることが知られています。
旬の食材を旬の季節に取ることで、季節に応じた対策を取ることができるのですね。
毎日旬の食材を選び、栄養バランスを考え、調理して食べることは今の季節を健康に過ごすとともに、次の季節を元気に迎える力となります。
とはいっても、毎日のこととなるとなかなか大変ですね。
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メニューは季節に応じて絶えずリニューアルされ、旬のメニューを楽しむことができます。
また、ご高齢者様にも食べやすい味付け、切り方や調理方法で作られているのもうれしいポイントです。
普通食のほか、摂取制限があり、塩分やカロリーの計算が必要な方向けのカロリー調整食、たんぱく質の摂取量に注意が必要な方向けのたんぱく調整食、咀嚼・嚥下の不安がある方向けの刻み食やムース食など、様々なメニューが用意されていて、その時の体調に合わせたぴったりの一品を選ぶことができます。
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