夏に取りたい食べ物や調理ポイント~夏の薬膳とは?
作成日:2022年6月16日
昨今の地球温暖化の影響で、夏の暑さは異常なものとなってきましたね。
室内にいても熱中症にかかる危険がある夏の日、エアコンを適切に使用することはもちろん大切ですが、食材を工夫することで体の内側から熱を取ることもできます。
今回は薬膳の考え方を中心に、暑い夏に適した食材の選びかたやおいしいレシピをご紹介します。
目次
夏は火の季節?
薬膳では、下の図のように一年を木・火・土・金・水と分けて考えています。
それぞれ、春(肝)・夏(心)・梅雨(脾)・秋(肺)・冬(腎)と、季節に合わせて養生すべき「5臓」があてはめられています。
(中医薬膳学では、「5臓」とは、単なる臓器だけのことではなく、その臓器が果たす役割や現れる症状も含めて表現しています。)
夏は「心・火」の季節。「心」は心臓そのものや心臓から送り出される血液の流れを指しています。
「心」に力が満ちていれば、新鮮で栄養分をしっかり含んだ血液が体中をくまなく巡り、内臓や脳、筋肉に栄養を与えることで、私たちの体は健康を保つことができると考えられています。
しかし、夏の暑さや湿度が「心」の働きを阻害し、弱らせてしまいます。
すると、「心」は酸素や栄養をたっぷりと含んだ血液を全身に送り届けることができなくなり、次第に体全体の臓器の働きがにぶくなってしまうとされています。
そのため、夏は体を冷やす食べ物や、体に溜まった湿気を取り除く力がある食材を食べて体の熱や湿度(むくみ)を取り除き、「心」の働きを正常に保つのです。
もちろん、明らかに熱中症・脱水症状などと言われる状態になってしまった場合は、残念ながら食べ物の力だけで治すことはできません。
すみやかに医師の診察を仰ぎ、適切な処置を受けることが大切ですが、このように食べ物や食べ方を選ぶことで、日々のちょっとした不調が解消できるとうれしいですね。
では、夏にはどのような食材が向いているのかを見ていきましょう。
タイプ別、夏に取りたい食材や調理ポイント
ギラギラと暑い太陽に照らされる夏は、体の熱を取り、冷やす作用がある食材(清熱・解暑)、ムシムシと湿度が高く、体が重だるい日にはむくみを取る働きがある食材(利水)を中心に、夏バテや冷たいものの取り過ぎなどで弱った脾(胃腸)の働きを補う(健脾)食材を加えます。
汗が多く出て体力を消耗している時には、汗を適度に抑える働きがある食材(固渋)を選びましょう。
熱中症になる前に!体を冷やす作用がある食材で体の内側から熱を発散する
清熱作用がある食材 |
きゅうり・ゴーヤ・冬瓜・なす・ごぼう・緑豆・きび・はとむぎ・ハイビスカスティー・プーアール茶・緑茶など |
きゅうりやゴーヤ、冬瓜、なす…どれも、夏に旬を迎える野菜ですね。
これら暑い季節においしくなる野菜は、体の熱を取る働きを持つものが多いのが特徴です。
また、水分、ビタミンCやカリウムなどを多く含み、脱水症の予防になるほか、日焼けで傷んだ肌の修復に効果があるものが多いですね。
暑いときには体を冷やす食材を冷たく調理して食べたいものですが、冷房が効いた室内で過ごす時間が長くなると、かえって体を冷やし過ぎてしまうこともあります。
にんにくや黒コショウ、カレー粉などを適宜利用し、冷えすぎには注意しましょう。
暑くてのどがカラカラ、脱水症状になる前に
あまりにも暑さが厳しく、空気が乾いている日には、水分を取ってものどの渇きが癒されない、つまり、体内に上手く水分が行き渡らないことがあります。
のどや鼻の乾燥、コロコロ便や便秘が、その症状として現れます。
また、うっかりと日焼けをしてしまった後の肌も、水分が不足しやすくなっています。
(日焼け後の肌にはトマトや白きくらげは特におすすめですよ。)
よく「梅干しやレモンを想像するだけでつばが出る」と言いますが、このように口の中や胃腸に水分を行き渡らせる食材も、上手に利用しましょう。
生津作用がある食材 |
さとうきび・水あめ・アスパラガス・おくら・きゅうり・白きくらげ・ズッキーニ・トマト・イチジク・梅・梨・マンゴー・牛乳・プーアール茶・甘酒・緑茶など |
フルーツ類はそのままデザートとしていただいたり、ハチミツ漬けにして薄めてジュースにしたり、ヨーグルトにトッピングしてもよいですね。
ムシムシ暑い日のむくみには利尿作用がある食材を
利水作用がある食材 |
はとむぎ・小豆・緑豆・アスパラガス・きゅうり・せり・すいか・ぶどう・あさり・昆布・海苔・ハモ・ハイビスカスティー・プーアール茶・緑茶など |
これらの食材はカリウムが含まれているものが多く、体の熱を取ると同時に取り過ぎた水分や塩分を体外へと排泄し、むくみを解消する働きがあります。
蒸し暑い日、天気予防で雨が降るとあらかじめわかっている時などは、湿度が高くなるより先にこのような食材を利用した料理を取っておくことで、むくみを軽減・予防することができますよ。
なお、むくみが気になるときは水分を控えたくなりますが、あまり控えすぎると便秘や脱水症状を引き起こすことがあります。
飲み物は利尿作用があるカフェインを適度に含むお茶や紅茶、コーヒーのほか、上でご紹介したハイビスカスティーのようなハーブティ(中医薬膳学では、赤い花のお茶は体の熱を取ると言われています。)を、食事の際はみそ汁やスープを添えて、水分を取りつつも余分な水は排泄できるよう、調整しましょう。
炒め物や揚げ物のような油脂が多い食べ物、味が濃いもの、甘いデザート類や冷たすぎる食べ物・飲み物は、取り過ぎるとむくみやすくなると言われています。
唐揚げや焼き肉などは食欲をそそり、いかにもスタミナが付きそうですが、むくみが気になる時は特に多めの野菜を添え、量はほどほどに召し上がってくださいね。
このような料理を取り過ぎたあと、胃もたれ、むくみなどの不調が出た場合には、このあとご紹介する、「健脾作用」がある食材を使って作るスープやお粥、今回ご紹介する緑豆のお汁粉などでデトックスするとともに、胃腸を休めてあげてくださいね。
冷たいもののとりすぎや 暑さで胃腸がもたれているときに
健脾作用がある食材 |
うるち米・オートミール・はとむぎ・かぼちゃ・さつまいも・じゃがいも・枝豆・オクラ・そら豆など |
これらは食物繊維を多く含み、胃腸の働きを穏やかに整えたり、腸内細菌のエサとなったりして腸内環境を整え、便秘や下痢を解消する働きがあります。
調理する際は、例えばじゃがいもならフライドポテトやポテトサラダではなくポタージュスープに、オートミールはクッキーやシリアルとして食べるのではなく温かい出汁でふやかして作る雑炊風にするなど、柔らかめに仕上げ、お粥やスープとして、多めの水分とともに取るのが効果的です。
汗をかきすぎて体力を消耗してしまう時
私たちの体は熱中症予防のために汗をかき、体温を下げる働きがあります。
しかし、汗をかく量も人によって様々。一般的に、汗をかくと体力を消耗し、さらに疲れやすくなると言われています。
中医薬膳学では、酸味や渋みがある食品は、汗を抑える働きがあるとされています。
発汗を抑える働きがある食材 |
≪酸味≫・レモン・いちご・ぶどう・梅干し・酢 ≪渋み≫・銀杏、落花生、栗などの渋皮・松茸など |
汗が多くでる方は、汗と共にミネラルも多く排泄してしまっています。
食事は海藻や魚介類など、比較的ミネラル分が多く含まれているものを一皿プラスして、積極的に取るようにするのもおすすめです。
また、むくみの項でご紹介したように、油脂の多い食べ物を多く取ると毛穴がつまったり、ベタベタとした汗をかきやすくなったりします。
ニキビなどの吹き出物、あせもの原因にもなりやすいので、あっさりめの食事を心がけましょう。
体の熱を冷ます 緑豆のさっぱりお汁粉
暑い夏の日、体が火照ったりむくみが出てしまったりしてどうにも動きにくく、食欲も落ちてしまうことがありますね。
そんな時には、緑豆のお汁粉がおススメです。緑豆には体の熱を取り、むくみを解消する働きがあります。
大豆や黒豆のようにあらかじめ吸水させる必要もなく、小豆よりも早く煮えて味もさっぱりとしています。
今回はレモンを添えて酸味をプラス。暑い夏にもより食べやすく仕上げました。
小豆や大豆に比べると少し手に入りにくい豆ですが、中華食材を多く扱っているお店では比較的入手しやすいです。ぜひお試しくださいね。
【材料】(作りやすい分量)
・緑豆…100g
・砂糖…大さじ1程度(お好みで)
・レモン…スライスしたものを2切れ程度
・水…400cc程度
【作り方】
①緑豆は米を研ぐように洗い、水を加えて茹でます。途中水が減ってくれば、適宜足していきます。
②写真のように豆がふくらみ、いくつか割れはじめたら砂糖を加え、全体を混ぜて煮溶かします。
③器に盛り、いちょう切りにしたレモンを飾ります。
緑豆のお汁粉は暖かくても冷たくても、美味しく召し上がっていただけます。
その日の天候や体調に合わせて温めたり冷やしたりして召し上がってくださいね。
なお、緑豆のお汁粉には水に戻してさっと茹でた白きくらげもよく合います。
肌に潤いが欲しいときには、ぜひ加えてみてくださいね。
暑い夏を元気に過ごすために
季節の変わり目、急な寒暖差、特に最近の猛暑は高齢者様だけでなく、若い世代の体にもとても負担がかかる、厳しいものですね。
適切な冷暖房の使用、体調に応じた運動、栄養バランスが整った食事で体力を維持し、無事、爽やかな秋を迎えたいものです。
しかし、食事の栄養管理は毎日のこととなるとなかなか大変です。
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