費用が払えない場合は?療養型病院の入院費について詳しく解説!
作成日:2022年11月15日
療養型病院とは、慢性期の患者が長期的な治療や看護が必要とされる場合に入院する医療機関であり、多くは数か月に渡って入院することとなります。
このページでは、療養型病院の入院にかかる費用や、費用が支払えない時に使える公的制度などについて解説します。
目次
療養型病院とはどんな病院?
療養型病院は「医療療養病床」の通称で、主な病床(ベッド)が療養病床である病院のことを指します。
病床は、精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床、一般病床の5つに分類され、そのうち精神病床、感染症病床、結核病床はそれぞれ特定の病気の方が入院します。
それ以外の病気の患者は療養病床か一般病床のどちらかに入院することとなり、これらは治療のステージの違いによって区別されています。
一般病床は、急性期と呼ばれる発病後の経過が短く、命の危機の状態や手術の前後であり、全身管理が必要な時期に入院するために用いられます。
それに対し、療養病床は早期に治癒することが困難な状態であり、長期間に渡って医師による管理や治療、看護が必要とされる時期に療養を目的として用いられる病床です。
また、一般病床と療養型病床ではスタッフの配置基準も異なります。
一般病床 | 療養型病床 | |
医師の配置 | 患者16人に1人以上 | 患者48人に1人以上 |
看護師の配置 | 患者3人に1人以上 | 患者4人に1人以上 |
看護補助者の配置 | 規定なし | 患者4人に1人以上 |
療養型病院は医療機関であるため、介護施設とは異なり、医療保険が適用されます。
また、介護施設の利用対象者が、基本的に年齢が65歳以上(特定疾患を有する場合はこの限りではない)で、介護度が1~5、医療区分は1が中心であることに対し、療養型病院の利用対象者には年齢制限がなく、医療区分が2~3の方が対象という点も異なっています。
医療区分について
医療区分とは、医療の必要性を評価するために、疾患や状態、医療処置等を厚生労働省が3 段階に分類したものです。区分が高い数字の方が、より医療ニーズが高くなります。
疾患や状態 | 医療ケア | |
医療区分3
| ・スモン ・医師・看護師が常に管理する必要な状態 | ・中心静脈 ・24時間点滴 ・人工呼吸器 ・感染隔離室での管理 ・酸素療法 など |
医療区分2 | ・筋ジストロフィー ・多発性硬化症 ・パーキンソン病関連疾患 ・肺気腫 ・神経難病以外の難病 ・多発性硬化症 ・褥瘡(じょくそう)など | ・透析 ・喀痰(かくたん)吸引 ・血糖チェック ・気管切開 ・発熱または嘔吐(おうと)を伴う場合の経管栄養 ・手術創のケア など
|
医療区分1 | 上記に該当しない人 |
療養型病院の入院にかかる費用の平均
入院にかかる費用は個人の年齢や治療内容、症状および日常生活自立度などによって異なりますが、一般的に10万円~20万円と言われています。
入院にかかる費用には、医療費のほか、入院基本料や食費、病衣代などがあります。費用の一部は医療保険で負担していますが食費や病衣代などは自己負担となります。
入院にかかる費用の内訳
治療費
治療費には検査料や手術料、リハビリ料などが含まれます。
治療費の自己負担額は、現役世代が3割、乳幼児と70歳以上75歳未満で現役世代並みの収入がない方は2割、75歳以上で現役世代並みの収入がない方は1割負担となっています。
入院基本料
長期の療養のための療養病棟は、医療区分やADL(日常生活自立度)区分などによって料金が設定されています。入院基本料は医療保険の対象となります。
差額ベッド代
2人部屋や個室の使用を希望する場合は、差額のベッド代を支払う必要があります。差額ベッド代は病院や部屋のタイプによって異なり、全額自己負担となります。
入院時生活療養費
療養病床に入院する65歳以上の方は、食費と居住費(光熱水費)にかかる費用のうち標準負担額(生活療養標準負担額)は自己負担となります食費は全国共通で1日あたり460円です。
ただし、住民税非課税世帯は1日あたり210円、その他一定基準に満たない方は130円と、自治体が発行する減額認定証を病院に提出することで食費を減額させることができます。
居住費は1日あたり370円で、難病指定を受けている場合には無料となります。
先進医療の技術料
一般の医療水準を超えた最新の医療技術を用いた医療行為を行った場合には、技術料は全額自己負担となります。
その他
診断書などの文書料や、寝具や日用品をレンタル場合した場合にはその分の経費がかかります。
療養型病院の入院費が払えないとどうなる?
入院費の支払いが期日までに行われないと、病院から督促されます。
また、入院時には必ず緊急連絡先として身元保証人を用意する必要があり、入院した本人に支払う能力がないと判断された場合には保証人に督促がなされます。
督促をしても入院費用が払われない場合には、強制退院させられることもあります。
さらに、弁護士を通じて法的措置がとられ、最終的には民事裁判に発展し、財産の差し押さえまでに至ってしまう可能性があります。
期日までに入院費用を支払えない、という時には予め病院のソーシャルワーカーに相談しておくようにしましょう。
療養型病院の入院費が払えない時の制度
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療費が高額になった場合に1か月で支払う医療費の上限額を設けている制度です。
医療費の限度額は、年齢や収入によって区分されています。
高額療養費制度では、医療保険サービスのみ適用となるため、食費やおむつ代などの自己負担分は適用外となります。
1か所の病院で上限額を超えなかった場合でも、数か所で同月に支払った医療費を合算して申請することが可能です。
ただし、高額療養費制度は後日払い戻しされるまでに数か月を有するため、一旦は上限額以上の金額を支払わなくてはならず、経済的に大きな負担となります。
そういった事態を防ぐためには、事前に「限度額適用認定証」を申請しておきましょう。
限度額適用認定証が交付されるとひと月の支払い額は、自己負担限度額までとなります。
適用区分 | 外来(個人ごと) | ひと月の上限額 (世帯ごと) | |
現 役 並 み | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% | |
年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | ||
年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | ||
一 般 | 年収156万~約370万円 | 18,000円 (年14万4千円) | 57,600円 |
住 民 税 非 課 税 等 | Ⅱ 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
Ⅰ 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) | 15,000円 |
参考:「厚生労働省保険局 高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
高額療養貸付制度
限度額適用認定証の申請が間に合わなかった場合、高額療養費制度を利用しても一時的に多額の費用を立て替えることになります。
そういった場合は高額療養貸付制度を利用すると、後日払い戻しされる高額療養費の8割相当を無利子で借りることができます。対象は健康保険に加入している人のみとなります。
高額療養費受領委任払制度
高額療養貸付制度と異なり、高額療養費受領委任払制度は国民健康保険に加入している人が対象となります。
ただし、国民健康保険に加入している人ならだれでも利用できる訳ではなく、支払いが高額のため生活の維持が困難となる人など自治体によって条件が設けられています。
高額療養費受領委任払制度を利用したい場合は、お住いの自治体にお問い合わせください。
傷病手当金制度
各種健康保険に加入している場合に、病気や怪我により3日連続で仕事を休み、4日目以降も働けずに休業することとなった場合に支給される手当です。
一日あたり、支給開始日以前の12か月の標準報酬月額を平均した額÷30日+2/3が最大で1年6か月支給されます。
分割払い
病院によっては、支払い期日に猶予を設けてくれたり、分割払いに対応してくれたりするところもあります。
判断は病院によって異なるため、入院費用が意図せず高額になってしまった場合の対応について事前に相談してみましょう。
無料低額診療事業
生活保護受給者をはじめ、経済的な理由で医療費の支払いができない方を対象に、一部または全額を免除にする「無料低額診療事業」を行っている病院が全国各地にあります。
病院によって対象者や審査基準が異なるため、入院費が支払えない可能性がある場合は事前に問い合わせておくと良いでしょう。
『療養型病院の入院費用』まとめ
療養型病院への入院は長期的になることが多く、入院費用が高額となる場合があります。
思いがけず入院にかかる費用が高額となってしまったら、自己負担額が軽減できる公的制度を利用する他に、病院によっては分割払いに対応してくれるところもあります。
ほとんどの病院には、入院にかかる費用や医療費について相談できる窓口があるため、経済的に不安がある方は、支払いの期日を過ぎてしまう前に必ず相談するようにしましょう。
高齢者の場合は特に、急な入院を要することも少なくありません。そのため、普段からある程度貯蓄をして、万が一に備えておくことが大切です。