肝臓から分泌される胆汁の働きとは?不足するとどうなるの?
作成日:2023年9月8日
胆汁は肝臓から分泌される液体で、脂肪の消化吸収や老廃物の排泄に関わっています。
胆汁は肝臓で作られるため、肝臓の機能が弱ってしまうと分泌量が減ってしまい、身体に様々な弊害があります。
このページでは、胆汁の働きや胆汁が不足するとあらわれる身体のサイン、胆汁不足を予防する生活習慣などを解説します。
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目次
胆汁について
胆汁は、脂肪を消化するために必要な液体で、肝臓でコレステロールから合成されます。
肝臓では1日に1リットルもの胆汁が作られており、生成された胆汁は胆のうで一時的に蓄えられています。
胆汁にはビリルビンやコレステロール、胆汁酸塩などが含まれていますが、およそ90%は水分です。胆のうでは貯蔵しているうちに胆汁の水分を吸い取り、5~10倍に濃縮しています。
胆汁は、食事を摂ったあとに胆のうから十二指腸へと送り出され、膵液と一緒に合わさると脂肪やたんぱく質を腸から吸収しやすいかたちに分解します。
腸から吸収された胆汁のうち95%は肝臓に戻り、再び胆汁として分泌されます。
また、胆汁は脂肪やたんぱく質の消化・吸収に関わるだけでなく、それ以外にも体の中の老廃物を排出する役割もあります。
胆汁の働き
①脂肪の消化・吸収
胆汁に含まれる胆汁酸は、脂肪を乳化させる働きをします。乳化とは水に溶けにくい成分を変化させ、水に溶けやすくする作用のことです。
膵液に含まれるリパーゼなど体内に存在する脂肪分解酵素が脂肪を分解するためには、この乳化が必要不可欠となります。
また、胆汁は脂肪を分解してできた脂肪酸や、ビタミンAやビタミンDなどの脂溶性ビタミンを吸収しやすくする働きもあります。
②老廃物の排泄
胆汁には、体内の老廃物を体の外へ排泄する働きがあります。
血液に含まれる赤血球の中にはヘモグロビンという物質が含まれていますが、古くなると肝臓で分解され、ビリルビンへと変化します。
ヘモグロビンから分解されたビリルビンは胆汁の中に含まれ、胆汁が分泌される過程で十二指腸に送られて便とともに排泄されます。
また、胆汁に含まれる胆汁酸はコレステロールから合成されているため、肝臓で余剰となったコレステロールを排泄する役割も果たしています。
胆汁が不足する原因
胆汁を生成・分泌する肝臓の機能が弱ると、肝臓と腸を循環する胆汁の量も減っていきます。
肝臓機能の低下の原因には加齢や飲酒、肝臓疾患などがあります。肝臓が炎症を起こしている状態や肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まる脂肪肝の状態を放置していると、肝細胞が死んでいき、肝臓が硬くなる繊維化を起こします。
線維化が進むと肝硬変という状態になり肝臓機能は著しく落ちてしまいます。肝硬変になると、肝がんを合併する可能性が高くなり、最終的には肝不全という肝臓が全く働かない状態となり死に至る場合があります。
肝機能が低下して胆汁が不足する原因
・加齢
・肥満
・過度な飲酒
・ウイルス性肝炎
・薬物性肝機能障害
・自己免疫性肝炎
など
胆汁が不足した時のサイン
・便の色が白っぽく変化する
胆汁に含まれるビリルビンは消化管から便として排泄されるまでの間に、最終的に茶色い色素を持つ物質へ変化します。
胆汁の分泌が減ると消化管内に流れるビリルビンの量も減るため、便の色は白っぽくなります。
・皮膚や白目が黄色っぽくなり、尿は茶色へ変化する
胆汁の分泌が減ると、肝臓でビリルビンを胆汁に溶け込む量も減ってしまうため、血液内にビリルビンが逆流してしまい、皮膚や白目が黄色っぽく変化(黄疸)します。
血液中のビリルビンの濃度が高くなると尿中に排泄されることがあるため、尿の色は濃くなり茶色っぽくなります。
・全身のかゆみ
胆汁の分泌が滞ることにより、胆汁酸が胆汁に合成できなくなると胆汁酸は血液中に取り込まれます。
すると、皮膚表面に胆汁酸が蓄積してヒスタミンというかゆみの原因である物質が増加するため、かゆみが発生すると考えられています。
・食欲不振や胃のむかつき
胆汁が不足すると、脂肪の吸収ができず、胃もたれや下痢などの原因になります。
また、脂肪を消化している間は胃の蠕動運動は抑制されているため、食欲が減退することにもつながります。
・脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の不足による諸症状
胆汁の不足により、脂肪の吸収も減少してしまうため、脂に溶けるビタミンの吸収も少なくなってしまいます。
ビタミンAが不足すると夜盲症や皮膚・粘膜が乾燥しやすくなり、ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収量が低下してしまうため、骨が脆くなります。
また、ビタミンEが不足すると貧血や脱毛を生じやすくなり、ビタミンKの不足は血液が止まりにくくなることがあります。
胆汁不足を予防する生活習慣
・栄養バランスの良い食事を心がける
肝臓機能の回復には魚や脂肪の少ない肉、大豆製品や卵などの良質なたんぱく質を含んだ食品がおすすめです。
これらの他に、ミネラルや食物繊維が豊富な緑黄色野菜を中心に、栄養バランスの良い食事を摂りましょう。
スナック菓子やインスタント食品、脂肪を多く含む食品は肝臓に負担がかかるため、摂り過ぎないようにしましょう。
・肝臓の働きを助けるタウリンを含む食品やサプリメントを摂る
タウリンは肝機能を高めるだけでなく、胆汁に含まれる胆汁酸と結びつくと、コレステロールを減少させる効果もあります。
人間の体内でも作り出すことはできますが、必要量を補うには、食品から摂取する必要があります。
タウリンは、タコやイカ、カキ、エビなどの魚介類に多く含まれています。
<100g中にタウリンの量が多い食品>
食品 | 含有量(㎎) |
カキ | 1,130 |
ホタテ | 769 |
アサリ | 664 |
タコ | 520 |
タラ | 450 |
イカ | 350 |
ヒラメ | 171 |
クルマエビ | 150 |
・飲酒は適量を守る
アルコールは肝臓にとって毒のようなもの。男性ではビール500㎖、女性では350㎖が適切な量です。
飲酒をする時は適量を守り、週2日は連続して休肝日を設けるなど、肝臓を労わるようにしましょう。
厚生労働省は「健康日本21」の中で適切な飲酒量を「1日平均純アルコールで20g程度」としています。
一般的に女性や高齢者はアルコール分解速度が遅いため、成人男性の1/2~1/3が適当であると考えられます。
<純アルコール20gに換算した1日の飲酒量の目安>
ビール | 日本酒 | ウイスキー | 焼酎 | ワイン | |
アルコール度数 | 5% | 15% | 40% | 25% | 12% |
男性 | 500㎖ | 180㎖(1合) | 60㎖ | 120㎖ | 240㎖ |
女性 | 350㎖ | 90㎖ | 30㎖ | 60㎖ | 120㎖ |
・禁煙をする
タバコに含まれるニコチンやタールの分解も肝臓で行われています。タバコは百害あって一利なし。健康のためにも禁煙をおすすめします。
胆汁についてのまとめ
胆汁は脂肪の消化吸収や、体の老廃物に排泄をする働きがあります。
胆汁は肝臓で生成されているため、肝臓の機能が低下すると、胆汁が不足して消化不良や胃もたれなどを起こしやすくなります。
いつまでも若々しく、美味しい食事を楽しむためにも肝臓を労わった生活を送りましょう。
健康な身体を作るには栄養バランスの良い食事が大切です。
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参考:厚生労働省 健康日本21(三次)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html