尿路結石の予防 エナジードリンクを飲むとできる?
作成日:2023年9月11日
エナジードリンクは、近年若者を中心に売り上げを伸ばしている飲み物です。
疲れを感じたときや、もうひと頑張りしたいときに、気分転換などを目的に利用されることが多いようですが、エナジードリンクにはどのような成分が含まれているのでしょうか?
また、エナジードリンクが尿路結石に悪影響があるというのは事実でしょうか?エナジードリンクの成分と尿路結石の関係を調べてみます。
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目次
エナジードリンクとは
現在、エナジードリンクに明確な定義や成分などの基準はなく、カフェインやアミノ酸、ビタミンなどが入った炭酸飲料を指すことが多いようです。
医薬品や医薬部外品の栄養ドリンクとは異なり清涼飲料水に分類されているので、有効成分や効能・効果の記載はできず、成分の配合量などについて表示義務はありません。
エナジードリンクは2006年に日本で発売されて以降、2015年から2019年に比較的若い年代で市場を拡大していきましたが、現在はスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどでも気軽に購入でき、多様なフレーバーができたことで、幅広い年齢層に利用されるようになってきています。
尿路結石について
尿路結石は、尿に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの成分が結晶化して尿の通り道を塞ぎ、激痛を生じる病気です。
「3大激痛」のひとつにも挙げられるほどの痛みが、腰部や腹部などに発生します。
男性の7人に1人が一生に1回は罹患するといわれており、近年は増加の傾向にあります。女性も閉経後はリスクが高まると考えられています。
結石ができる仕組み
尿中でカルシウム、マグネシウム、シュウ酸、リン酸、尿酸などの物質が増えて飽和状態となり、腎臓で結晶化して結石となります。
結石がある部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などと呼び方が変わりますが、これらをまとめて尿路結石といいます。
結石の種類
シュウ酸とカルシウムが結びついたシュウ酸カルシウム結石、リン酸とカルシウムが結びついたリン酸カルシウム結石、痛風や高尿酸血症の人にできやすい尿酸結石など、他にもいくつかの種類がありますが、最も多いのがシュウ酸カルシウム結石です。
尿路結石に影響を及ぼす成分
食品などから摂取する成分の中には、尿路結石に影響を及ぼすものがあります。
尿路結石は一度罹患すると再発率の高い病気のひとつであり、5年で約50%の再発率ともいわれています。
遺伝的素因の可能性も示唆されているため、既往歴のある人や近親者に尿路結石に罹患した人がいる場合は、注意が必要です。
シュウ酸
シュウ酸は野菜などに含まれるアクの成分のひとつです。
食品から摂取するシュウ酸の量が多いことは、結石を形成するリスクとなることがあります。
ほうれん草やキャベツ、ブロッコリー、さつまいもやたけのこなどに多く含まれていますが、シュウ酸は水溶性のため、ゆでこぼしたり水にさらすことで減らすことができます。
ココアや紅茶、緑茶などにも含まれているので飲み過ぎには注意が必要ですが、お茶類の中では、麦茶やほうじ茶はシュウ酸の含有量が少ない飲み物です。
カルシウム
シュウ酸とカルシウムが結合してシュウ酸カルシウム結石となることから、以前は尿路結石の再発予防にはカルシウムを制限することが勧められていました。
しかし近年は、カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便中にシュウ酸を排泄する働きがあるため、適切にカルシウムを摂取することが尿路結石の予防に効果的であるといわれています。
古くから日本には、ほうれん草のお浸しにかつお節をかけたり、たけのこを煮てかつお節をまぶすなど、食材を下ゆでをしてシュウ酸を減らし、かつお節をかけることでカルシウムと一緒に食べるという理にかなった料理があります。
動物性脂肪・動物性たんぱく質
尿路結石に罹患した人の食事は、肉類に偏っている傾向があるといわれています。
動物性脂肪の過剰摂取によって腸管内でカルシウムが脂肪酸と結合してしまい、遊離のシュウ酸が増加して尿中にシュウ酸が増加する可能性があります。
また動物性たんぱく質は尿中のカルシウムやシュウ酸などの排泄を増加させ、尿中のクエン酸排泄量を減少させることで、尿路結石のリスクとなる可能性があるといわれています。
ビタミンC
ビタミンCは体内で合成することができないため、食事から摂取しなければならない栄養素です。
コラーゲンの形成には不可欠であり、皮膚や粘膜、関節など全身の健康維持に必要です。しかし過剰に摂取されたビタミンCは、その一部は肝臓で代謝されてシュウ酸として尿中に排泄されます。
そのためサプリメントなどから多量に摂取する場合には、尿中のシュウ酸排泄量が増加する可能性もあるため注意が必要です。
水分
体が脱水の状態にあると、尿が濃縮されることで結石ができやすくなると考えられています。
尿路結石の再発予防として、1日の尿量が2リットル以上となるように水分を摂取することが勧められていますが、尿路結石に罹患した人では、清涼飲料水の摂取過多の傾向があるといわれています。
尿路結石の罹患や再発の予防には、糖分やカフェインなどを含まない飲料での水分補給が望ましく、脱水予防として水を飲むことが勧められています。
クエン酸
クエン酸は尿中でカルシウムイオンとキレート結合することで尿中のイオン化カルシウム濃度を低下させるので、結石の形成を抑制させると考えられます。
さらに尿のアルカリ化を促進して酸性尿を改善する効果が期待できるため、尿酸結石などを予防する効果もあると考えられています。
エナジードリンクの成分と尿路結石
エナジードリンクの飲み過ぎが原因で結石ができるというはっきりとした根拠はないようですが、エナジードリンクに含まれる成分の中には、尿路結石に影響を及ぼす可能性が示唆されるものもあるようです。
カフェイン
カフェインは多くのエナジードリンクに含まれています。
カフェインの利尿作用によって尿中の結晶濃度が高くなり、結石のリスクを高める可能性があるとする報告もあるため、エナジードリンクが結石を作りやすいと考えられるようになった可能性がありますが、はっきりとした因果関係は認められていません。
しかし尿路結石にかかわらず、カフェインの過剰摂取は健康に悪影響を及ぼすことがあるため、エナジードリンクのようにカフェインを多く含む飲料の飲み過ぎには注意が必要といえます。
諸外国では、特に子どもや妊産婦に対しては、いくつかの健康上の理由によってカフェインの摂取について制限や表示義務、注意喚起をしています。
日本でも2015年にカフェインの過剰摂取が原因で死亡事故が起きており、カフェインの過剰摂取の危険性については周知が必要です。
糖分
ショ糖や果糖は尿酸値の上昇に影響し、尿中のカルシウム排泄を増加させて尿路結石の形成を促進する可能性があるといわれるため、糖分を多く含む飲料などの摂り過ぎは注意が必要といえます。
ビタミンC
エナジードリンクの中には、ビタミンCを多く含むものもあるようです。
ビタミンCとクエン酸は、どちらもレモンなどの果物に多く含まれる酸味のある物質であるためか、同じものであると勘違いされることがありますが、全く別の物質です。
前述のように、クエン酸は結石を抑制する効果が期待できますが、ビタミンCは過剰摂取によって尿中のシュウ酸排泄量が増加して、結石の形成を促進する可能性もあります
エナジードリンクを飲むと結石ができる?
エナジードリンクが直接結石の原因となることは少ないと考えられますが、結石の形成に影響を与える成分が含まれている可能性もあるため、尿路結石の既往歴がある場合には注意が必要かもしれません。
また多くのエナジードリンクにはカフェインが含まれており、カフェインの過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
カフェインも適量の摂取であれば心身に良い効果も期待できるため、エナジードリンクはその特徴を理解して、上手に利用するようにしましょう。