50代女性の摂取カロリーの目安とは?その他の年代と比較しながら解説
作成日:2023年10月23日
50歳前後から女性の体は変化し始め、心身のトラブルを感じる人が増えてきます。
個人差はありますが、一般的に50歳前後の10年間は「更年期」と呼ばれ、女性ホルモンの分泌が変化することから心身にもさまざまな影響が生じます。
「痩せにくくなった」「体脂肪が増えてきた」などと感じるのも、更年期の女性の特徴のひとつです。今回は50代の女性に必要な摂取カロリーについて考えてみましょう。
目次
1日に必要な摂取カロリーとは?
1日に必要な摂取カロリーは、安静にしていても消費している基礎代謝量と、体を動かすこと(運動)で消費されるカロリーに分けることができます。
基本的に基礎代謝量は毎日大きく変動するものではなく、1日のカロリー消費は主に身体活動量によって変動します。
カロリーとはエネルギーの単位のことで、1ℓの水の温度を1℃上げるために必要なエネルギーを1kcal(キロカロリー)といいます。
基礎代謝量
基礎代謝量は仰向けに寝て覚醒した状態で、安静時に消費されるエネルギーのことです。
1日に消費するエネルギーの約60%を占めていると考えられており、基礎代謝量が高い人は、何もしていなくても多くのエネルギーを消費しているといえます。
基礎代謝量はさまざまな要素の影響を受けて変化します。
一般的には女性よりも男性の方が基礎代謝量は多く、若い人ほど成長のための代謝が盛んであるため、基礎代謝量は高くなっています。
同一個人でも、筋肉量や体温によって基礎代謝量は増減し、女性の場合は月経の周期によっても基礎代謝量は変化します。
身体活動によるエネルギー消費
身体活動によるエネルギー消費量を正確に測るのは困難ですが、おおよそを計算で算出することができます。
もっとも簡単な方法は身体活動レベルの指標を用いる方法で、身体活動レベルは、日常生活の平均的な活動の強度を表したものです。
身体活動レベルは生活や仕事の内容によって次のように3段階に分けられており、年齢によって異なります。
・身体活動レベルⅠ(低い1.40-1.60):生活の大部分を座って過ごし、静的な活動が中心の場合。
・身体活動レベルⅡ(ふつう1.60-1.90):主に座って行う仕事だが、職場内での移動や立って行う作業・接客等、通勤・買い物・家事・軽いスポーツ等のいずれかを含む場合。
・身体活動レベルⅢ(高い1.90-2.20):移動や立って行うことが多い仕事の従事者。あるいは余暇にスポーツをする等、活発な運動習慣を持っている場合。
推定エネルギー必要量
1日に必要なエネルギーの必要量を推計する方法はいくつかありますが、もっとも簡単な方法のひとつが、基礎代謝量と身体活動レベルを用いた計算で、「1日に必要な推定エネルギー必要量=基礎代謝量×身体活動レベルの係数」に当てはめて計算できます。
年齢別基礎代謝量の変化について解説
以下の表は、日本人の食事摂取基準2020年版に掲載されている、身体活動レベルⅡ(ふつう)の場合の基礎代謝量です。
日本人の食事摂取基準は健康な個人や集団を対象として、国民の健康の維持・増進やさまざまな健康障害の予防を目的として、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示したものです。
18歳以上の基礎代謝量については、平成28年国民健康・栄養調査における当該の性・年齢区分における身長・体重の中央値を用いて算出されています。
日本人の食事摂取基準2020版 基礎代謝量(身体活動レベルふつう)
| 男性 | 女性 | ||
参照体重(㎏) | 基礎代謝量(kcal/日) | 参照体重(㎏) | 基礎代謝量 (kcal/日) | |
18~29(歳) | 64.5 | 1,530 | 50.3 | 1,110 |
30~49(歳) | 68.1 | 1,530 | 53.0 | 1,160 |
50~64(歳) | 68.0 | 1,480 | 53.8 | 1,110 |
65~74(歳) | 65.0 | 1,400 | 52.1 | 1,080 |
75以上(歳) | 59.6 | 1,280 | 48.8 | 1,010 |
基礎代謝量は0歳から掲載されていますが、ここでは18歳以上について挙げています。個人差はありますが、女性では、50歳以降は基礎代謝量が減少していくことがわかります。
40代女性の推定エネルギー必要量と体の特徴
40代女性の1日に必要な推定エネルギー必要量は、基礎代謝量1,160×身体活動レベルⅡ(ふつう)1.75=2,030(kcal)となります。
40代は仕事や子育てに日々忙しく、1日の活動量は比較的確保されていることが多いと考えられます。
40代の前半は「プレ更年期」と呼ばれることがあり、個人差はありますが、緩やかに卵巣機能の低下が始まる時期でもあります。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量も維持され月経も定期的にあることがほとんどですが、人によっては月経周期や経血量に変化が生じることもあります。
子宮筋腫や子宮腺筋症などの疾患の好発年齢にもあたるので、生理痛や出血過多など月経に異常を感じた場合には、早期に婦人科を受診しましょう。
50代の推定エネルギー必要量と体の特徴
50代女性の1日に必要な推定エネルギー必要量は、基礎代謝量1,110×身体活動レベルⅡ(ふつう)1.75=1,942.5(kcal)となります。
日本人は平均的に50~51歳で閉経を迎えるため、50代では多くの女性が更年期にあたるといえます。
更年期の症状は個人差が大きく、通院が必要な場合もあれば、ほとんど自覚症状が無いまま過ぎてしまう人もいます。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには脂肪燃焼を促進する働きがあることから、エストロゲンの分泌量が低下することで、体重が増えやすいと感じたり、体脂肪率が上昇したりすることがあります。
60代の推定エネルギー必要量と体の特徴
60代女性の1日に必要な推定エネルギー必要量は、基礎代謝量1,080 ×身体活動レベルⅡ(ふつう)1.75=1,890(kcal)となりますが、65歳以上は同じ身体活動レベルⅡ(ふつう)であっても指数が1.70に下がるため、1,836(kcal)となります。
60代になると、仕事を退職したり子供が独立するなどライフステージが大きく変化することもあり、生活環境の変化に伴って運動量が減少することがあります。
また閉経によって骨粗しょう症のリスクが増大し、筋肉量も減少がみられることがあるため、意識的に運動と食事に配慮が必要となります。
70代の推定エネルギー必要量と体の特徴
70代女性の1日に必要な推定エネルギー必要量は、基礎代謝量1,010 ×身体活動レベルⅡ(ふつう)1.70=1,717(kcal)となります。
75歳以上は同じ身体活動レベルⅡ(ふつう)であっても指数が1.65に下がるため、1,666.5(kcal)となります。
さらに日常の運動量が減少している場合には、基礎代謝量1,010 ×身体活動レベルⅠ(低い)1.4=1,414(kcal)となります。
70代になると、基礎体力や予備能力の低下によって疾患にかかりやすくなることがあります。
慢性疾患のある人も多く、大きなケガや病気によってADL(日常生活動作)の低下につながる可能性もあります。
50代女性に必要な栄養素の種類について
50代女性の多くは更年期といわれる時期にあります。更年期は卵巣機能が変化し、女性ホルモンの産生が低下し、消失していく時期です。
それに伴い臓器にも変化が起こり、泌尿器生殖器の萎縮や骨量の減少、脂質異常症や動脈硬化などの症状が出現します。
大切なのは栄養のバランス
女性ホルモンの減少によって、以前より太りやすく痩せにくいと感じることがあるかもしれませんが、食事で最も大切なのは栄養のバランスです。
カロリーばかりに注目すると、主食を摂らなかったり、極端に野菜類だけを摂るような食事となることがありますが、主食・副菜・主菜をバランスよく食べることを心がけましょう。
厚生労働省の食事バランスガイドでは、主食:副菜:主菜=3:2:1が理想的としています。
栄養のバランスが崩れることで更年期症状に悪影響があるだけではなく、閉経後の健康も左右する可能性があります。
体をつくるタンパク質
タンパク質は体を構成する重要な栄養素です。
臓器や筋肉を作るのはもちろん、ホルモンや免疫機能を維持するためにも必要です。タンパク質摂取は、体重1㎏あたり1.0~1.5gのタンパク質量を1日3食でバランスよく摂ることが理想的です。
カロリーが気になる場合は、脂の多い肉類には注意し、魚類や卵、豆・豆製品を積極的にとり入れましょう。食事で摂るのが難しい場合には、プロテインドリンクなどの利用が効果的なこともあります。
健康な骨のためのビタミン・ミネラル
ビタミンやミネラルの中でも意識的に摂りたいのが、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKです。
これらは骨の健康に必要な栄養素であり、一緒に摂ることで効率的に働くと考えられています。
カルシウムは骨の材料となりますが、ビタミンDと一緒に摂ることでカルシウムの吸収が高まると考えられています。
またビタミンKはカルシウムの骨への沈着を促進する働きがあります。カルシウムは乳製品や大豆製品、丸ごと食べられる魚等から効率よく摂取でき、ビタミンDはきのこ類や魚、ビタミンKは納豆や小松菜、モロヘイヤなどに多く含まれています。
50代女性の摂取カロリーの目安とは?
摂取カロリーの目安は基礎代謝量と身体活動量から推計することができます。50代の女性の多くは更年期にあたり、心身の状態が変化している時期でもあります。
摂取カロリーは適正に抑え、必要な栄養素はバランスよく摂ることで更年期の対策に効果が期待でき、閉経後の健康維持にも役立ちます。